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◆不定期日記ログ◆

CATEGORY 謎知識

■2016-10-17
なぜ鏡は左右反対にうつるのか
 今や俺も二歳児の父。いずれ娘は成長し「ナンデ?」「ナンデ?」と言い出してご両親を困らせるだろう。そのときに備えてきちんと説明の手順をシミュレートしておく必要がある。


 たとえば「鏡はどうして左右反対にうつるのか?」だ。

 まず俺は以前述べたとおり、左右という概念をまったく信用していない。この3次元宇宙において極めて主観的なこの概念を、他者とのコミュニケーションに常用している惑星があるときいて首を傾げつつ生活している。娘氏にはこのような疎外感を味わって欲しくはないが、左右という概念に大きな欠陥があることは自覚していてほしい。


 そのような立場としては「別に左右反対にうつってなどいない」と答えるのが第一であろう。鏡は手前と奥を反転しているのであり左右反転したと思っているのはたまたま左右対称につくられた人類の浅薄なる発想にすぎない。もし人類がシオマネキのごとく巨大な右腕を持つ生物であれば、巨大な右腕のほうを「右」と定義したはずであり、それは鏡を見ても揺るぎない定義であろう。

 また、左右反転したと思っているのは地球の重力に引かれ、地上を這うばかりの古い地球人の浅薄なる発想にすぎない。天井に張り付けられた鏡を見上げて、こう、右腕を上に突き出したとき、あれこっち右腕か?えーたぶんそうだな、右腕だ。その場合、天井の鏡の中のお前は左腕を上げているのか?
 鏡張りの床の上にミニスカのお嬢さんが立ち、侮蔑的な嘲笑を浮かべてお前を見ながらゆっくりと左足を上げたとき、お前が凝視している床の鏡の中のお嬢さんは右足を上げているのか?そんなわけはない。おい全然娘に説明するシチュエーションじゃねえぞ。


 たとえ話はともかく、「鏡が左右を反転したと思っているのは人類の錯覚。左右はその程度の概念」ということがうっすらとでも伝わることを願うばかりだ。
 ところで、こういう風にまず「本当に左右が反転しているのか?」と根幹を問い返すパターンはけっこう汎用性があるのではないだろうか。定義を確認しているうちにクレバーな解答を探す時間を稼ぐのだ。「質問を質問で返すなあーっ!!」と言われそうだが、その場合俺のジョジョ教育が成功している世界線なのでそれはそれでいい。
 
■2016-07-05
変な木のアイコンの件
 なんかWindowsに変な木のアイコンあるじゃないですか。
 変な木っていうのは、えーと、デスクトップに置いたショートカットのアイコンを変更しようとすると表示されるあれです。
windwos tree icon
shell32.dllの木
 このshell32.dllに含まれているアイコンの、まわりのXP~7めいたデザインの中に堂々と屹立する「ザ・Windows95」みたいな色数の木!
 いったいこいつは何なんですか、いつまでこのデザインでここにいるつもりなんですか。それを調べるため、取材班はGoogle検索窓を開いた!

 ……とはいえ検索方法がさっぱりわからない。「Windows 木のアイコン」とかで検索しても木目デザインのアイコンセットがひっかかったりするだけで、まったく手がかりがない。最終的にこのアイコンを切り出してGoogle画像検索にブチこみ、それに「shell32」の検索ワードを追加することで、このアイコンに言及しているページをいくつか見つけることができた。

 そのうち海外の大型掲示板redditに「tree.ico apparently added in win95, but what is it for?」というそのものズバリなスレッドを見つけることができた。嬉々としてたどたどしく訳していくと、「Novell社のNetWareというソフトのログイン画面に使われていた」という情報に行き当たった。
 さっそく「netware login」などで手当たりしだい画像検索してみると、確かにある。
netware login
Novell社のサイトより
 NetWareとは……?調べてみるとどうやら、サーバー用OSの一種らしい。WindowsNTとかより前に使われていたようだ。しかしなぜそれがWindowsの標準アイコンに入り込んでいるのかまでは、調べがつかなかった。

 調べがつかなかったので……ボトルメールをTwitterという海に放流した!

Windowsのshell32.dllに昔からずーっとあるダッサい木のアイコンなんなの?調べまくったらNetWareとかいうソフトに使われてたっていう情報があったけど……Windows黎明期に自信ニキがいたら教えてくれ……

@onesideflat 2016年6月21日
 たかだか100人のフォロワーで情報が集まるとは思えなかったが、もしかしたら後の世に疑問を持って検索してくる人がいるかもしれない。そう考えればたとえ俺の道がここで潰えても無駄ではあるまい……。

 と思ったら、10日くらいしたところで突如6件くらいリツイートされ、わずか10RTで重要な情報が寄せられたのであった。すげえなTwitter集合知。
 詳しい内容は当該のツイートを見ていただくとして、調べたことと合わせてまとめると以下のようになる。
  • WindowsNT以前から、社内LANでプリンタを共有したり、共有フォルダを使ったりするのにNetWareというサーバー用OSが使われていた
  • NetWareはプリンタやPCやその下の共有フォルダなどをツリー形式で管理していたので、その象徴として木のアイコンがあった
  • Windowsは当初NetWareをサポートしていたためこの木のアイコンがシェルに含まれることになったが、今はもうサポートしておらず、古いデザインのアイコンがそのまま残っている

 ありがとうございました@rei_softwareさん……そしてそこまで拡散してくれた人々……もしさらに正確な情報をお持ちの方がいたら追記しますので教えて下さい……。
 
■2016-06-09
国名を冠する元素
 珍しくニュースより。

日本の理化学研究所のグループが発見し、日本に初めて命名権が与えられた「113番元素」について、化学に関する国際機関は名前の案を日本の提案どおり、日本ということばを取り入れた「ニホニウム」に決め、日本時間の8日午後10時半、ホームページで発表しました。また、元素記号の案を「Nh」に決めたと併せて発表しました。

(NHK NEWSWEB 6月9日 4時48分)
 新元素名「ニホニウム」が国際的に正式決定されるにはまだ半年近い時間がかかるようだが、この「国名を冠する」ことに対して気恥ずかしさを感じる諸兄もおられよう。
 元素表を見れば「フランシウム」「アメリシウム」など地名を冠した元素はたくさん見つかるので、ちょっと地名由来の元素名を調べてみることにした。以降、Wikipediaに毛が生えた程度の情報しか調べていないことをご了承いただきたい。


 新しい元素のほうから当たっていくと、「ダルムスタチウム」「ドブニウム」など研究所のある都市からとられた名前が多いことがわかる。やはり元素を発見しまくって国名などとうの昔につけてしまった欧米は余裕が違う……と思いかけたが、研究チームが国際化している現代においては当然の措置といえよう。
 理化学研究所は埼玉県和光市にあるので、これに従うと「サイタミウム」とかになる。急にニンジャスレイヤー感が増してきた。サイタマの語感が持つ存在感はすごい。

 先ほど出た「アメリシウム」だが、これは単純に「我が合衆国が見つけたぜ!USA!USA!」という意味ではなく、元素周期表で「ユウロピウム」との位置関係で、アメリカ大陸から名付けられたものらしい。アメリシウムを発見したカリフォルニア大学バークレー校は、このあと立て続けに「カリホルニウム」「バークリウム」を命名しており余裕がすごい。理研におかれましては引き続き「サイタミウム」と「ワコニウム」を探していただくほかない。
 ところでアメリシウムって地名由来でいいんだよね……?さすがにアメリゴ・ヴェスプッチの威光はここまで届いてこないよな?

 「フランシウム」については国名由来であることは間違いなさそうだが、それより遙か前にフランスのラテン語名「ガリア」を冠したと思われる「ガリウム」があり、パリの古名ルテティアにちなんだ「ルテチウム」があるので今更感がある。この「旧国名・旧地名を冠する」というパターンは他にもドイツの「ゲルマニウム」をはじめとして数多くある。
 なぜ現在の国名でなく古い国名を使ったのかはわからなかったが、なかなか奥ゆかしい命名法ではなかろうか。これに従うと日本は「ヒノモティウム」とか、埼玉で武蔵国なら「ムサシウム」が使える。ムサシはかっこいいと思うがなんかむさ苦しそうだな。

 あと国名を冠していそうなのはポーランドの「ポロニウム」だが、これが発見されたころポーランドは絶賛分割中であり、国家としては存在しなかった。これはかなりデリケートな命名だったのではないだろうか。だって台湾のチームが発見して「中華みんこキウム」とか名付けたら中国共産党は激おこになるでしょ。よく通ったな。それだけキュリー夫妻の能力が高かったのか。


 こうして調べてみると、意外と「いきなり国名をストレートにつける」という例はあまりないことがわかる。が、当然理研の先生方はこういった命名の歴史を重々ふまえた上で「ニホニウム」を選んできているわけで、そこに意見をさしはさむ意図はまったくない。

 ただひとつ、語源の由来を調べていて特筆しておきたいことがある。

  • イッテルビウム……スウェーデンの小さな町イッテルビーから。
  • エルビウム……スウェーデンの小さな町イッテルビーから。
  • テルビウム……スウェーデンの小さな町イッテルビーから。
  • イットリウム……スウェーデンの小さな町イッテルビーから。

 スウェーデンの小さな町イッテルビー何者だよ……調べてみると採石場から珍しい鉱石が出たらしいがいくらなんでもちなみすぎだろ!上九一色村から「カミクイシキウム」と「カミクイシウム」と「クイシウム」と「シキウム」が発見されたらさすがにおかしいと思うだろ!特にイットリウムがあるのにイッテルビウムを命名した班!なんとかならなかったのか!?
 
■2016-01-26
金太郎は過大評価では?
 金太郎をご存じだろうか。
 愚問である。誰もが知っている。彼はよくわからんハレンチな赤い布をまとい、熊を使役し、マサカリを武器とした。みんな知っている。そのことは知っている。
 だが彼は何をした人なのか、そこまで来るとほとんどの人が口を閉ざす。昔の日記で「知名度のわりに実態が知られていない」と危惧したが、その思いは強まるばかりである。娘の絵本に彼の物語が載っていた。今なら青空文庫にもある。時間のある人は今一度目を通してみてほしい。

 金太郎 - 青空文庫

 終わり方がひどい。思っていたよりひどい。
 主人公の紹介を終え、熊とチュートリアルバトルをして、お侍さんにスカウトされ、いよいよ都で本格バトルだ、というところで無慈悲に終了する。なんなの?体験版なの?少年ジャンプの10週打ち切り漫画でももうちょっと話を転がすぞ。
 だってお前「マサカリかついだ金太郎~♪」っていうオープニングテーマも公開されてただろ。プレスリリースには仲間とともに大江山ステージで酒呑童子と戦う迫力の画面写真もあったじゃん。なんで体験版だけ出してアワレにも倒産しちまったんだよ。ダメじゃない?これ語り継いじゃダメじゃない?静岡県ゆかりの彼をあまり責めたくないけど、少なくとも桃太郎とか浦島太郎と肩を並べていい作品じゃなくないこれ?


 金太郎がここまでの地位を築けたのは、おかっぱ頭と斧とよくわからんハレンチな赤い布、というわかりやすい記号性が、五月人形などのフィギュア原型師に愛されたからであろうと推測する。公式からの供給が途中で消滅したのに、同人グッズだけはさかんに作られている希有なジャンルなのかもしれない。
 
■2015-10-17
クレーンの語源
「あーあの港にある、ダチョウみたいなでっかいクレーンね」

「ダチョウみたいというか、クレーンの語源はクレイン、つまり鶴なので、鶴みたいといったほうが正確ですね」

「なるほど」

「今のはテキトーに思いついたことなので真に受けないで下さい」

「なんだよ」


 ……と息をするように口から出任せを言っていたのだが、調べてみるとガチで鶴が語源のようだった。なんだよマジかよ鶴が吊るとかオヤジギャグになっちゃうじゃねーかやめろよ。
 
■2015-08-17
酒の部首名
 「酒」の部首がさんずいではなく「酉」だと聞いたときは中国人ふざけんなと思った。
 「聞」の部首がもんがまえではなく「耳」だと聞いたときもふざけんなと思ったが、これはまあよく考えれば「聞くときに大事なのは門じゃなくて耳だよなあ」と納得できたのでグッとこらえることができた。
 だがなんで酒がトリなんだよ!ふざけんなトリ並みの頭しやがって!

 悔しいので調べてみたが、やはりそれはまぎれもない事実であった。

この謎を解くためには、「酉」について考える必要があります。この部首は「とりへん」とか「ひよみのとり」とかいう名前で呼ぶので、なんとなく鳥と関係がありそうな気がしますが、それは「酉」がたまたま十二支で「とり」と読むからだけのことです。もともとは、この字はなんと、お酒をいれる容器を表す象形文字だったのです!

漢字文化資料館 漢字Q&A
 そういえばそうだった。かつて十二支のことを調べたとき、あの漢字群はただの順序を示すものであって、動物は後付けのイメージキャラクターにすぎない、ということを知ったのだった。「酉」は鶏とはまったく関係ない。確かに手元の漢和辞典の「酉」の項にも「象形。口の細い酒つぼを描いたもの」と書かれていた。「酌」とか「酔」とかを見ればわかるとおり、「酉」こそが「酒」の本体だったのだ。
 すまん中国人。だがやっぱふざけんなと言いたい。
 
■2015-05-15
エシャレットとエシャロット
 大変に紛らわしいことなのだが、「エシャレット」はラッキョウで、「エシャロット」はラッキョウでない。(参考:農水省消費者相談)
 「エシャロット」はなんか小さいタマネギみたいなフランスの野菜で、もこみち兄さんの使うようなオシャレ野菜の売っているお店でないとまず見かけないのでなんとかなっているが、紛らわしいことこの上ない。
 発祥の詳細が不明なので完全に想像になるが、若採りのラッキョウを売り出す際、キャッチーな愛称が欲しいということで、何か形が似ているフランスのオシャレな野菜の名前を貰ったのではなかろうか。写真を見る限り似ても似つかないが。


 実は「ゴーフル」もこれに似た状況なのではないか?と思った。
 フランスで「gaufre」と言えば、それは我々のよく知るワッフルのことらしい。
 日本のゴーフルの発祥は諸説あるようだが、発売当時にオシャレな名称が欲しいということで、何か形が似ているフランスの洋菓子から名前を取ったのではあるまいか。今となっては似ても似つかないが。


 ところで「ウエハース」も英語表記だと「wafer」なので、あれもワッフルの仲間なのだろう。
 改めてワッフルの幅広さを確認した形だ。
 
■2014-06-13
13周年
 この13日の金曜日に、どうやら当サイトは13周年を迎えたようです。

 映画『13日の金曜日』をはじめとして、欧米では13は忌み数として扱われている。理由を調べてみるとだいたいキリストさんとユダさんが出てくるが、これは後世のこじつけだと思う。実際は、12という数のスゴさを実感していた古代の人が、そこからはみ出す第一歩である13を恐れたのではないか。誰でもループから抜けて新しい一歩を踏み出すことには恐れがあるものだ。

 しかしこれは12が偉大すぎるだけで、決して13がキリの悪い数字だということを意味しない。
 たとえばトランプは1スート13枚である。最初は地域によってバラバラだった枚数が、いつのまにか13枚という形で標準化されていったようだ。
 なぜ13枚になったかという点については、全52枚が「52週≒1年」を示している、という面白い俗説がある。そういえば1クールは13週だった。4クールやるドラマやアニメは全52話であることが多い。ぜひカブトボーグ各話名シーントランプとか作って欲しい。

 はたしてこのサイトに書かれることが、ループを抜けた新しいものに変わるだろうか?
 アカチャンが生まれたからといって急に育児日記サイトになるようなこともなさそうだし、たぶんもうしばらく変わらないだろう。今後もゆっくり更新していく。
 
■2014-05-01
ナースキャップ
 病院に行ってふと、いつのまにかナースキャップが完全消滅していたことに気づいた。

 廃止した理由を調べてみると、頭を下げたときいろんなところに引っかかって邪魔だったとか、あまり洗濯をしないので不潔だったとか、ズレるたびに髪を触って直さないといけないので不衛生だったとか、とにかくさんざんな言われようだ。
 あれ……じゃあ逆にナンデ今までそんなもんつけてたわけ?
 帽子をかぶる理由は、日差しをよけるとか、髪が落ちないようにするとか、いろいろある。だがナースキャップはそのどちらの用も成しそうにない。

 昔、傷病者の看護は聖職者や身分の低いメイドの仕事であった。それゆえ、シスターのベールやメイドのヘッドドレスがあのナースキャップの原型となったという説がある。このような起源から判断すると、何か機能性があってアレをつけているわけではない、ということになる。
 まずここでショックである。看護婦におけるナースキャップはバニーガールにおける耳程度の役割しかなかったのだ。フェティシズムにあふれる貴方は「つまりどっちも大切なものではないか!」と思うであろうが話がややこしくなるのでご遠慮願いたい。

 しかしバニーガールの耳はその名のとおりうさぎを模している。ではナースキャップは?
 これについては看護師の皆さんが最初にナースキャップを頂く「戴帽式」の情報に行き当たって理解できた。初めて現場に出る前にナースキャップをかぶり、ナイチンゲール誓詞を朗読するという。そう、ナイチンゲールだ。ナースキャップとは要するに、近代看護教育の母であるナイチンゲールを模していたのだ。

 全てのナースはナイチンゲールのコスプレをしていた……そう考えるとまあ、廃止されたのは当然の流れかなという気がしてくるが、それよりナイチンゲールのスゴさが際立つ事実であった。
 
■2013-06-13
12周年
 本サイトは12周年を迎えました。……え!?12周年!?
 12年……つまり俺がここにくだらないことを書き連ね始めたころに生まれた子どもは、いまや小学校を終えようとしているというのである。いったい何をやっていたんだという感が強い。


 それはそれとして、太古から12という数字はスゲエとされてきたものだ。
 以前、時間について書いたときに調べたが、これは天文的に導かれた数字であるのでスゴさはお墨付きである。
 12にまつわるものは、星占いの黄道十二宮とか、ゼウスをはじめとするオリュンポス十二神とか、金剛力士像の十二神将とか、世界中に存在する。
 中でもなじみ深いのが十二支だ。今年が何かもう忘れてしまったけど。

 しかし十二支のいわれを調べてみて驚いた。
 もともとあいつらは、ネズミとかウシとかとは関係なくて、十干(甲乙丙丁……)と同様、ただの順序を示す言葉だったらしい。

十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10種類からなり、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種類からなっており、これらを合わせて干支と呼ぶ。十干十二支の本義は、古代研究に便利な漢の釈名や、『史記』の歴書によっても、実は生命消長の循環過程を分説したものであって、実際の木・火・鼠・牛などと直接関係があるわけではない。

干支 - Wikipedia
 たとえば、「子」は新しい生命の始まり、「寅」は春に草木が生えた状態、「辰」は草木の形が整った状態……というように、これらの漢字は植物の一生をモチーフにした順序を示す言葉であり、動物は、これを文字の読めない民衆にも受け入れられやすくするために当てられた、いわばイメージキャラクターなのだとか。
 漢字とまったく関係のない動物をどういう基準で当てはめていったのか、そのへんは資料が不足していてわからないが、きっと語感が似ていたとか、漢字の意味に似たイメージがあったとか、漢字が動物にトランスフォームするおもちゃが流行っていたとか、そういう我々にはわからない理由があったのだろう。


 もし十二支がそのまま漢数字となっていたら、12進数の数体系ができていたわけだ。以前、時計を10進法の数字で表すことのめんどくささを書いたが、「子の刻」「卯の刻」という時間の表し方が12進数だと思えばとても合理的だ。十干十二支はあくまで「順番」どまりで、数字にはならなかったのが惜しまれる。
 
■2013-04-11
しまんとの宝
 ノートン・アンチウイルスで有名なシマンテック社の本社が四万十市に無いのはおかしい!
 そう訴え続けてきたが、どうもそう単純な話ではないようだ。


 地図を見ると、四万十市のすぐ隣に同じくらいの広さで「高岡郡四万十町」という地名がある。
 高知県には、「四万十市」と「四万十町」という、それぞれ独立した市町村が存在するのだ!

 我が静岡県にもかつて「清水市」と「清水町」がカブっていたが、位置は離れていた。
 そもそも四万十市は2005年に合併で生まれた市である。
 「四万十市」という市名はそのとき新たに作られたものだ。
 そして四万十町も2006年の合併で生まれている。
 なぜ対抗したのか!?だれも止めなかったのか!?
 すでに四万十市内に「中村四万十町」という地名があるというのにこの暴挙!
 四万十川もこんなに愛されて困惑しているだろう。

 こんな状況では、どちらがシマンテック社を誘致するかでモメるのは必定。
 しばらく俺の訴えは実現しそうにない。
 
■2012-12-31
1月1日の謎
 そもそも「なんで新年は1月1日から始まるのか?」などという疑問を抱いたのが間違いだった。


 旧暦の正月はわかる。農事的に重要な季節の手前の新月の日を暦のスタートの日と定めたのだ。
 旧正月には天文的裏付けがある。しかしいまの元日にはなにもない。
 いったいなぜこの日が暦のスタートなのか?

 調べてみるといろいろ複雑な経緯をたどっており、しかも諸説あるようだ。
 春分の日を暦のスタートとしたあと、3月(March)から1月(January)へと開始月をずらし、かつ暦のズレを修正したら今の1月1日の位置になった……などの説があるが、いまいちスッキリしない。
 それならいっそ、冬至などわかりやすい天文的な特徴のある日にするべきではなかったのか?

 そういえば、クリスマスはもともと冬至のお祭りだったと聞いたことがある。
 キリスト教圏で、異教徒の冬至の祭りをやめさせるために、キリストの降誕日をそこにぶつけたとか。日付が冬至とズレてるのは暦がズレたからだろう。
 これについて調べていたところ、恐ろしい記述に行き当たってしまった。

 キリスト教は異教の習慣を破棄しようとして、クリスマス期間(12月25日~1月6日)に新年を取り込み、これとは別に新年を祝うことを禁止した。しかし異教の慣習を無視することは難しく、ついに6世紀中葉、キリスト誕生後8日目のこの日を〈キリスト割礼の日〉として祝うことを認めた。

平凡社 世界大百科事典 【新年】より

 キリスト割礼の日!?
 割礼ってアレだろ、男性器の、アレを、アレする……
 当時のユダヤ教では当然なんだろうけど……
 俺たちはジーザスのコックの皮がカットオフされるのをカウントダウンしてたのか!?
 知りたくなかった!知りたくなかったー!!
 
■2012-09-03
キラキラネームの実態
 縁あって小学校低学年の文集を見る機会があった。
 現場の先生から聞いてはいたが、やはり子どもの名前がスゴい。
 キラキラネームの話題では、ピカチュウ君とか極端なのばかりが挙がるが、そういうふざけたのじゃなくて、普通の名前がもう読めないレベル。わりと広域な文集なので、特に偏差値の低い地域とかそういうことはまったくない。

 試しに「こりゃ読めないだろ」と思ったのをメモしていったら3/4は読めなかった。
 おそらくコレに慣れている現場の先生はもうちょっと読めるのだろう。恐ろしいことだ。
 だが一つ一つ答え合わせをしていくうちに、8割方は読めるようになってきた。
 たとえば「夢渚(ゆな)」のように、「夢」の「ユ」だけを読ませたり、「渚」の「な」だけを読ませたりするのは常道。あまりにこの読み方がまかり通るので、俺はこれを「万葉仮名方式」と名付けて雅な風習だと思うことにした。

 だが肝心の読みが名前っぽくない感じだと、もうお手上げ。
 語感原理主義者にとっては、音の響きが名前っぽいかどうかは死活問題。
 あのん、じゅんき、はの、ゆれん、えれ、しゅな、かじゅ……こうなると運ゲーである。
 らいあちゃんはすくすく育っているだろうか?


 考えてみれば、日本人の名前が読めないのは別に今始まったことじゃあない。「和子(かずこ)」の「和」だって、「足し算の答え→数→かず」みたいな非常にキラキラした経緯を経ているわけで、いわゆる名乗り字についてはいまさら歯止めがきかないところまで来ている感がある。わざわざが書かずとも、日本最古のブログ「徒然草」の第百十六段ですでに「名前をつけるときに珍しさを追求して小細工するのは薄っぺらいやつのすること」と苦言を呈されているレベル。
 三国志の呉の三代皇帝・孫休は、息子に命名するために新しい漢字を作り出したというので、まだまだこの程度のキラキラ具合では漢字の元祖である中国にはかなわないな、と思った。


 こういうのをネタにすると「愛や思い入れの詰まった名前をネタにするのは失礼」というツッコミが必ず入るが、名前は社会的なもの。ネタでもなんでも問題提起していかないと、そのうち笑いは怒りへ、規制へと変わってしまう。一度規制されてしまったら、愛や思い入れではもうその自由を取り戻すことはできない。
 個人的には「好きなように命名しなさい。ただし読み方は俺が決める」という価値観が社会全体に根付けばよいなと思っている。


 最後に余談だが、「稀雪輝(きせき)」くんという名前を見て感動した。
 これが雪が降ったときの正しい静岡人のテンションである。
 静岡市街地に雪が輝くのはそれほど稀なこと、まさに奇跡なのである。
 万が一、将来本人がエゴサーチしてここにたどりついたら、親御さんにグッジョブと伝えてくれ、稀雪輝くん!
 
■2012-08-08
ECOLOGICAL DASH
 電気自動車の普及が始まっている。
 いつか乗用車が完全に電気自動車になる日が来るのだろうか。

 あたりまえのことだけど、電気自動車にはガソリンが使われていない。
 つまり、派手にクラッシュしたときに、爆発炎上することはない。
 (バッテリーが爆発することはあるかもしれない、らしい)
 もし全ての乗用車が電気自動車になったら、ハリウッドの人とか、刑事ドラマの人とか、東映さんとかが、ちょっと寂しい思いをするかもしれない。

 見た目の派手さを追求するあまり、「ロードローラーだッ!」を「タンクローリーだッ!」にしたアニメ版のDIO様のことを思い出した。
 
■2012-05-17
確率論
 カタン付属のダイスが、なんだか出目が偏るので、新たに通販でダイスを買った。
 各数字がキッチリ1/6の確率で出るダイスなんて数学の教科書にしか存在しないので、数を増やすことで対応するのだ。

 ……出目が偏るとは言ったものの、たぶん、実際はそれほど偏ってはいない。
 人間の「確率」に関する感覚は全面的にアテにならないからだ。
 たとえばこんな問題がある。

 たかし君とけんじ君が、6発の弾が入るリボルバー式拳銃で、ロシアンルーレットをします。拳銃の弾倉には、2発の弾丸が隣り合わせに込められています。最初にたかしくんが弾倉をよく回し、引き金をひいたところ、弾は入っていませんでした。次はけんじ君の番です。けんじ君は次の(1)(2)のうち、どちらのほうが生き残る確率が高いでしょうか。
(1)もう一度弾倉を回してから引き金をひく
(2)そのまま引き金をひく

(マイクロソフト入社試験問題)
 計算するとわかるが、(2)のほうが生存確率が高い。
 感覚的に考えると5発中2発アタリで(2)が不利な気がするがそんなことはない。
 確率の問題になるとすぐ計算をあきらめて樹形図を描き始めるタイプの学生だったので、図を描いて理屈は理解はしたものの、どうも感覚としては理解しがたい。

 人間の感覚と、実際の確率は、どうもズレている。
 おそらく、日常生活において、確率がどうであろうと実際に起こる事象はただ1つだから、というのが要因だろう。
 天気予報で降水確率が30%だったとしても、カサを3割だけ持って出るわけにはいかない。
 結果として「降るのか、降らないのか」だから、確率としての30%が感覚になじまないのだ。

 最近コンプガチャが新聞に載るレベルの騒動になった。
 え、そっちなの、リアルマネートレードを放置してるほうが根幹なんじゃねえの、と思ったけれど、叩きやすいところを叩くのが世間の常道なので仕方ない。
 これも人間の感覚と確率のズレを利用した儲け方である。
 確率の問題の中には、ギャンブル好きの貴族と数学者の書面のやりとりで産まれたものも多い。昔から、誰かを騙したい奴が確率を使い、騙されたくない奴が確率を学んできたのだ(偏見)。
 これに至って、中学生諸君は「数学なんて将来なんの役に立つんだよ!」という決まり文句から確率と統計を除かざるを得ないであろう。
 
■2012-04-01
四月馬鹿の謎
 なぜエイプリルフールは嘘をついてもよいのか、調べてみた。



 英語で、月の名前がズレていることに疑問を持ったことはないだろうか?
 たとえば10月は英語でoctober。オクトは8の意味だ。
 逆算すると、月は3月から始まっていることになる。
 これは、庶民が使っていた暦によるものらしい。

 古代のヨーロッパで一般的に使われていた暦は、農耕歴である。
 農作業は、3月、気候が暖かくなり始めたころに作物の種をまくことから始まる。
 農業をしていない1月2月の暦は必要なかったのだ。
 おそらく「8番目の月」のような言い方は、このカレンダーに端を発するものだろう。

 3月に王様が暦のスタートを宣言すると、まず領内の各地で「今年どれだけの種をまき、どの程度の収穫が見込めるか」の報告が行われる。
 領主はそれを元に、税金や徴兵の程度を決めるのである。
 今でいうところの予算審議、通常国会にあたる仕事だ。
 この予算がだいたい3月末までに承認され、4月1日に発表される。
 現在の会計の「年度」という区切りはこの慣習から来ているらしい。

 だが、地租改正も行われていない社会では、税金はすなわち作物。
 こればかりは予定通り収穫できないことも多く、予算の執行はままならない。
 4月1日に発表された政策は、実現できたものの方が少ない有様だった。
 このような政治の中で、皮肉屋の庶民は、これをネタに「4月1日の午前中は嘘をついてもいい」というジョークを編み出したのである。



 これがエイプリルフールの発祥。もちろん全部嘘。全部っていうのも嘘。