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◆不定期日記ログ◆

LOG 2021-10

■2021-10-01
いろんな娘氏と、鉄棒
 夏休み前後の記録。

  • お絵かきのとき「せんしんとういつして色を選ぶ……せんしんとういつ!」と言ってマーカー入れからサーモンピンクのペンを取り出し「ショッピングピンク……」と言う娘氏。
  • ダイソーの復刻スウィーティガムを手に入れて食べてるんだけど、板ガムというものを知らない娘氏が「平べったいwww」「平べったいwww」ってウケてる。
  • 娘氏「パパは立ち止まるとき足はどうしてる?」
    ぼく「きっちり揃えてる」
    娘氏「あーやっぱサラリーマンはそうか」
    ぼく「職業関係なくない!?」
    娘氏「仕事してない女の子はつま先を内側に入れる。仕事してない男の子はつま先を外に向ける。」
    ぼく「職業関係なくない!?」
  • 咀嚼中にパパのおもしろ話を聞いた娘氏「あやうく放物線でブッて出るとこだった」
  • 柱におでこをぶつけた娘氏「大丈夫、ダンベルで鍛えてるから」
    ぼく「ダンベルでおでこは鍛えられないよ」
    娘氏「せいしんを鍛えてるから」
    ワイフ「精神を鍛えてるのにけいさんカードの宿題で泣いちゃうの??」
    娘氏「算数のせいしんは鍛えてないから」
  • 一本目の乳歯が抜けた娘氏「ぬけとるーって感じひゅる」
  • 永久歯、なんか前歯の内側のとんでもない位置から生えてきていたので心配していたけど、乳歯がなくなったらなんかうまいことあるべき場所に収まっていって驚いた。すごいぜ人体!
  • ワイフ「アイチャンかっぱ巻きにおしょうゆつける?」
    娘氏「いい。おやさいとおしょうゆ、合わない気がするから」
    ぼく「ウサギか?」
  • 娘氏が怪談ごっこを始めたけど、タイトルが「きのこのかぞく」の段階で語彙がかわいかった。
  • 娘氏「今まででいちばんつらかった登下校ナンバーワン」
    ぼく「はい」
    娘氏「夏休みの連休のまえ」
    ぼく「あの重かった日か……」
    娘氏「歩道橋の下でちょっとないた」
    ぼく「そんなに」
  • ぼく「アイチャンもうお風呂入る時間だぞ」
    娘氏「エーヤダヤダ」
    ぼく「このやりとり毎日やらないとだめか? ドラクエでまず『いいえ』を選ぶタイプか?」
  • ワイフ「アイチャンけいさんカードして」
    娘氏「エーヤダヤダ」
    ぼく「このやりとり毎日やらないとだめか? そろそろBボタン長押しで演出カットしたいんだが」
  • 英会話教室のあと突然「昔の外国人は何語を話してたんだ?」と不思議がる娘氏。イギリスができる前に英語が何て呼ばれてたかって話……?
  • スイミング教室のあと突然「スイミングのとき、手に強大な力を秘めているような気がしたんだよ」と告白する娘氏。
  • ワイフ「アイチャンもっと丁寧に字を書いて」
    ぼく「書道教室に通ってたでしょ頑張って」
    娘氏「アイチャンまだ字を書くことにあいさつしてるだけだから……」
    ぼく「あいさつ」
  • 慣用句やコトワザの本にハマり、プリキュアのセリフに出てきた「飛んで火に入る夏の虫」をすぐ調べる模範的な娘氏。
  • 娘氏「一寸の虫にも五分のたましい、ってしってる?」
    ぼく「小さい虫でも命は大切にってことかな?」
    娘氏「小さなそんざいでも強い力とか強い言葉とかを持ってるってこと。」
    ぼく「あんまり強い言葉を使うなよ」
  • 娘氏「アイチャンの真似して。鵜の真似をするからすのように。」
    ぼく「失礼では?」
  • ついに娘氏が俺のミニタワー型パソコンの本体を指して「パパのパソコンの隣にあるこれはなに?」と聞いてきた。

 娘氏は1年生なので、なんとスポーツテストと呼ばれるものが迫っている。
 そしてワイフが面談で担任の先生から「ボール投げと鉄棒がヤバだった」という話を聞いてきた。

 投擲は仕方ない。すまないが投擲は諦めてくれ。パパはボール投げのせいでスポーツテストは常に級外だったんだ。人類が二足歩行を始めて獲得した肩の可動範囲というものが全然理解できないんだ。
 だが……鉄棒(懸垂)は常に1級だった。荷重が人よりはるかに低いため、懸垂だけは誰にも負けなかった。鉄棒はなんとかなるはずだ。

 ワイフ「なので鉄棒を注文しました」
 ぼく「鉄棒を……注文……?」

 「鉄棒」と「注文」って一つの文脈に入ってくるものだったんだ……。
 確かにコロナ禍で公園に行くことが減り、かつ最寄りの公園の鉄棒がサビッサビなので、家で鉄棒の訓練をしようと思ったら鉄棒を買うしかない。理屈は合っているし判断が早い。

 こうして我が家のトランポリンが撤去され、鉄棒が設置されたのであった。
鉄棒
……でかい!
 娘氏「ねえこれバッキバキに崩れ落ちたりしないよね?」
 ぼく「耐荷重80kgあるから平気ら」

 高めに調整したらパパでも懸垂逆上がりができたので実際安定はしている。
 周囲の安全(主に落下事故)についてはやや不安があり、そのうち勢いのある技をやるようになったらマットなどを敷かないとよくないかもしれない。
 技のことはよく知らないが、まずは斜め懸垂から毎日ビシビシやって、腕力と握力のパラメータを伸ばすほかないだろう。小学一年生は文字通り伸びしろしかないので期待したい。


 あっやべ……ワクチン接種の日なのに無駄に懸垂逆上がりしちゃったぞ!
 
■2021-10-05
耳穴を解放せよ
 耳クソのゆるい生涯を送って来ました。
 自分には、普通の人間の耳かきというものが、見当つかないのです。
 風呂上がりに綿棒を突っ込んで綿を黄色くする、それが耳掃除だとばかり思っていました。

 そんな俺が目の敵にしているのがイヤホンで、なんと最近は家電量販店に売ってるイヤホンのほぼ全てがカナル型なのです。インナーイヤー型はもうほとんどありません。

 ではみなさんは、カナル型とインナーイヤー型のどちらが耳栓型のイヤホンだと思いますか? 正解はカナル型です。ふざけるんじゃあないよ。どう考えてもインナーイヤーのほうが奥に突っ込みそうな語感でしょ。Apple社はどっちもインナーイヤーって言ってるし別の名前を与えてやるべきだった。
 そもそも「ear canal(外耳道)」の出口を塞ぐ形のイヤホンを「カナル型」って名付けるのもおかしいが、その結果かつてのイヤホンが「inner-ear(内耳)」になるのはどうかしてる。お前のインナーイヤー型イヤホンを鼓膜の奥まで押し込んでやろうか?


 話がずれました。耳クソの話をしていたんでした。
 俺のような耳クソのゆるい人種がカナル型イヤホンを使うと、まず装着した瞬間にニチャァ…という最悪の5.1chサラウンドとともにイヤーピースが耳穴内に密着します。耳クソによって完全に密閉された外耳道は音漏れには強いかもしれませんが、何か食えば咀嚼音が脳内に反響し、歩けばコードの振動が直接脳を揺らして音楽どころではありません。イヤーピースの汚れも不快感を煽ります。
 これはおそらく耳クソの乾湿に関係なく、カナル型を使っていれば避けられない問題でありましょう。しかし自分には乾いた耳穴というものが、見当つかないのです。それゆえ耳クソがゆるいことで問題がどの程度深刻になっているのかは判断できません。


 そこに彗星のように現れたのがambieのイヤーカフ型イヤホンというプロダクトです。
AM-TW01
ambie soundearcuffs AM-TW01
 これは耳たぶを挟み込むようにして装着するので、耳穴に一切の干渉をしません。実は他にも耳穴に干渉しないものとして骨伝導型ってやつがあるのですが、多くがヘッドホン型であることと、名前が怖すぎることからそちらは試したことがありません。
 なのでイヤーカフ型イヤホンの存在を知った時に「これは耳クソゆるい勢への福音だ」と直感しました。このたび完全ワイヤレスになるというニュースをワイフが発見し、誕生日プレゼントとして即注文、いろいろあって工場出荷が遅れ、ようやく手元に届いたという次第です。
 さらに言うと、左右を繋ぐケーブルのない完全ワイヤレスイヤホンも使ったことがないので、これが初めて味わった俺の完全ワイヤレス的イヤーカフ型イヤホン初体験ってわけよ!

 そういうわけなので、イヤーカフ型、完全ワイヤレス型の利点が入り混じった感想になりますがいろいろ書いていきます。


 耳穴がフリーということはさまざまなメリットをもたらします。要は耳穴の横に超小型スピーカーが置かれているというだけのことなので、部屋の中にBGMをかけているのと変わらない感覚で音楽等を聴くことができます。
 そしてその環境のまま外に移動できる。ここが新感覚なところです。外に……BGMがかかっている……? つまり出勤時に『皇帝出陣[Spotify]』を流せば「先帝の無念を晴らす!」という勢いで出社できるということです。俺の職場はルドン高原か?


 耳穴がふさがれていないため、当然、交通量の多い道路などに出れば音楽はほぼ聴こえなくなります。でもそれでいいんじゃないでしょうか。轢かれたら終わり。No Life, No Musicでしょ?
 周囲の騒がしさに合わせてそのつど音量を調整することになるのは煩雑ですが、周囲の騒がしさに対してまあまあ聴こえるくらいに音量を調節していれば、まず音漏れすることはありません。電車の走行音に負けずにベースラインまで聴きこもうとすればめちゃめちゃ音漏れすると思います。そういう状況で聴覚を音楽に集中させたい場合はノイズキャンセリングのカナル型を使ってください。
 周囲のSEを生かしたまま、自分にしか聴こえないBGMを作り出す装置だと思えば、その利用シーンもおのずと見えてくるでしょう。

 今さらっと申し上げましたが、「自分にしか聴こえないBGMが流れている」というのは異常な事態です。
 周囲の会話が聴こえているからといって、ランダム再生で出てきた曲に対して店内有線みたいな感覚で「これ何の曲だっけ!?」と周囲に意見を求めても狂人だと思われるだけです。また、BGMが「ウルトラソウッ!」って言ってきたから「ハァイ!」って返しただけなのに狂人扱いされる危険性もあります。
 あと、音量を大きめに調節するときに「本当に今大きくなったこの音は耳元から出ているか? 実はスマホンから出ていて周囲に丸聞こえなのでは?」という確証がまったく持てません。bluetoothオーディオのアイコンは出ているから大丈夫だと理屈ではわかっているのですが、毎回ビビります。
 自分の脳内だけで流れているBGMが他人に丸聞こえになっている!? そんな心配を毎日していたら統合が失調してしまうでしょう。自分しか聴こえないBGMを取り扱うというのはそれほど恐ろしいことなのです。

 装着感は意外としっかりしています。走っている最中にこいつが耳からブルンッって外れて排水溝へ吸い込まれていく想像をして背筋が凍ったりしていますが、実際は引っ張っても全然取れないくらいスッポリ収まるので心配は無用です。はめるのにもとるのにもコツがいる。
 その堅牢のわりに、耳穴フリーなため長時間装着しても耳が疲れません。嘘です。多少は痛くなります。ただカナル型よりはるかに装着感が軽いのは確かです。ときどき接触する部分をずらしたりすれば全然いけます。
 さらにこのサイズでマイクまで内蔵されているので、このままハンズフリー通話が可能です。ためしにワイフに電話してもらったらワイフの声が直接脳内に来てビビりました。もしもしミンフィリアよ。


 こういった性質上、このイヤホンにめちゃめちゃ向いている用途が浮かび上がってきます。あなたにもあるのではないでしょうか? 散歩しながらポケストップが回せる範囲に入ったことを示す「ミ゛ン!」という音を聞き逃したくない……。家事をしながら無人島に風船が流れ着いたときの風の音に反応したい……。電車内で本を読みつつソシャゲの周回が1周終わったBGMが流れたら「リトライ」ボタンを押したい……。そんな用途が! これならゲームに聴力を占有されることなく、対応できてしまうのです!
 完全ワイヤレスであるがゆえに姿勢が自由なのも素晴らしい。あらゆる「ながら作業」に強力なバフをかけるプロダクトと言えるでしょう。

 Bluetoothイヤホンにつきものの遅延問題も、注意深く観ればテレビの人の口の動きと音が微妙にずれている気がしなくもない……くらいのもので、ゲームしていても気にならないのでよかったです。Bluetoothの進化はスゴイ。
 とにかく耳クソゆるい勢はこの快適さを体感すべきだと思います。政府は耳クソゆるい勢への差別を撤廃すべくこのイヤホンの購入に補助金を出してください。現場からは以上です。

AM-TW01
オオグンタマ
 名前がつけられるので、ワンチャン繁殖しそうな名前にしました。
 
■2021-10-20
稲作、即ち愛(ラブ)!
 今私は『天穂のサクナヒメ』のサントラを聴いてマスクの中を鼻水でいっぱいにしているんですけど、今回はどうしてこんなことになってしまったのかをご説明していきたいと思います。


 先日始めた『天穂のサクナヒメ』は無事ゲームクリアまで行きまして、それはつまり「ここから先は戻れないからセーブデータを分けろ」という表示を見て「次の米の収穫まで待ってくれ」という斬新な姿勢で止まっていた最終クエストを、一気に終わらせたということです。
 そしてその最終クエストからエンディングに至る音楽が非常に滾るものだったため、私は後からサントラを聴いてこんな状態になってしまっているということです。ただ滾るだけではご理解いただけないと思いますので順を追って説明いたします。


 まずゲーム音楽に対する姿勢として、私個人の問題が3つございます。
  • 「断片的にしか出てこなかったメインテーマが最終局面でドバっと出てくる」演出に弱い
    ゲームに限らずこれを食らうと確定でクリティカルします。むしろこれに弱くない人いるの?
    これの亜種として「ここまでのプレイでお馴染みになったメロディたちが最終局面でメドレー化して襲い掛かる」があり、MOTHER2などで猛威を振るいました。
  • 「静かなメインテーマが牙を剥いてボス曲用のアレンジになる」演出に弱い
    この性癖を植え付けたのは間違いなくルドラの秘宝なんですが、その話は今はやめときます。アレンジ具合によってはひとつめの弱点と複合して襲ってくることがあり、そうなると4倍弱点で受けることになり苦しい戦いを強いられます。
  • 「おなじみの曲に歌詞があったことが明かされる」演出に弱い
    スマブラSPの発売前の情報をリアルタイムで追っていた人は、「命の灯火」のPVでいきなり歌が入ったことで涙腺に致命傷を負ったことでしょう。いや違う、今はファイアーエムブレムのCMの話はしていないんだ。「熱唱!!ストリートファイターII」の話もしてない!
 上記の弱点を持つ人は私以外にもいるのではないかと思いますが、そういう人でもしサクナヒメをプレイする予定があって、私のように「音楽もネタバレになる」と考える人は、この先は読まずにストアに向かった方がよいでしょう。
 ではサクナヒメの話に戻します。


 このゲームの根幹は農業であり、メインテーマが田植え歌となっています。序盤の田植えのときにアカペラで流れますがそれは一度きりで、あとは他の曲のメロディの一部にちょっと出てくるのが主になります。
 サントラでこの『ヤナト田植唄』が終盤にも複数収録されていることを確認していた私は、上記の弱点を突かれることを覚悟し、ネタバレ防止策としてサントラの終盤を封印しました。フェアな戦いをしようゼ……そのときはその程度のことだと思っていました。
 
 そしていよいよ最終クエストとなり『ヤナト田植唄・祭 ―まつり―』が披露されました。いや……でもこれアカペラ版に伴奏が付いた他は大きく変わんねえな……? このくらいなら余裕で耐えrサビがついとるーッ!! サビ!? Cメロ!? とにかくフル尺になっとる!
 しかも追加されたサビがまた……すごい聴いたことある……! これもあっちこっちのメロディに紛れ込んでいたやつで、特に序盤のボス戦の、あの津軽三味線がバッキバキに決まってる曲の、後半部分にいきなりトライエースかってくらい強いストリングスのメロディがぶち込まれていた、アレだ……! アレがメインテーマのサビだったんだ……!

 この瞬間に「断片的なメロディが結集」「歌詞があったことが判明」に加え「激しいボス曲のメロディがメインテーマに」という逆パターンの攻撃を合わせて、3つの弱点を全て同時に攻撃された形になり無事死亡しました。
 あまりに鮮やかな太刀筋で、なぜ自分が致命傷を食らったのかわからず狼狽えるばかりでしたので、こうして後からサントラで分析している次第でございます。
 作曲者である大嶋氏のサイトの楽曲解説を読んで答え合わせをしていたら、このメロディがメインテーマの田植え歌に合流することで「生活のすべてが田植えに直結している」ということをわからせる強力な仕掛けであったことを知り、もはやコメ農家に頭の上がらない状況にまで追い込まれています。


 ラストダンジョンの『樹 ―いつき―』では、もはやこのメロディがサビであることを隠そうともせずドドーンとぶちこんできて、とうてい俺の涙腺が敵う相手ではなかった……ということを思い知らされるばかりです。
 この曲も名曲であることは疑いようがないわけですが、曲単体での良さの他に「ゲームプレイ中に特定のメロディや楽器を何度も刷り込まれているからこそ醸し出せるエモさ」というのがゲーム曲には確かにあって、それはゲーム曲でしかできねえことなんだよなあということを再確認いたしました。

 音楽のことばかり書きましたが、アクションもお話も最高で万人におすすめできるゲームです。年末に価格改定があるらしいので冬休みは稲作をするのも良いのではないでしょうか。私からは以上です。
 
■2021-10-27
参勤交代はなぜ交代か
 江戸時代の「参勤交代」という掟がある。
 三代将軍徳川家光が武家諸法度に定め、制度化したものだ。

一、大名・小名在江戸交替相定ムル所ナリ。毎歳夏四月中、参覲致スベシ。

参勤交代 - Wikipedia
 これを口語訳したものがだいたいどの歴史教科書にも掲載されているが、ちょっと待ってほしい。武家諸法度には「交替」と書かれている。画像検索するといろいろな写本があることがわかるが、どれも「交替」と読める。誰も「交代」とは言っていない。

 交替と交代は何が違うのか? こういうのは検索するとドカドカ出てくる。なかには「違いと正しい使い分け」などと銘打っているものもある。言葉の使い方について「正しい」と断言できるメンタリティが俺にあったら、こんな文章は書いていないだろう。
 そういった記事たちの説明を総合すると、概ね「チェンジが1回だけのものは『交代』、ローテーションするものは『交替』である」と認識されているようだ。
 この説明に照らしてみれば、参勤交代は「交替」である。いったい誰が「参勤交代」などと書いたのだ?


 ちなみに前述のWikipediaには「参勤交代の『勤』は『覲(まみえる)』が正しいが、役人が誤って記録してしまって以来、このように書くのが一般的になった」というドすげえ一文があり、このドすげえ部分の出典が明らかでないため、おそらくこの疑問は解決しないであろうことが予感される。
 「参勤」すら怪しいのに「交代」についてどうこう言ったって仕方ないだろ……ていうか誰だよその役人……ちゃんとセプクしたのか? 誤植でセプクはしたくないものだ。

 とっかかりとしてWikipediaの出典情報をたどって『道路の日本史』(武部健一 著)を読み、「参勤とは国元から江戸へ赴く旅、交代または蹴封とは国元に帰還する旅をいう」という一文を確認した。しかし、参勤交代の語源についてはそれ以上の情報はなかった。
 「蹴封」とは見慣れない言葉で、ググッてもよくわからないが、こうなるとそもそも参勤交代の「交代」が我々のイメージするChangeやTake turnsと同義かどうかすら怪しくなってくる。これ以上は俺には荷が重いか……?


 いやまて、今Changeって言いました?
 閃いた俺はすぐにWikipediaを英語版に切り替えた!
 そしてそこに「Sankin-kōtai (alternate attendance)」という記述を見つけた!

 適当に「alternate attendance」でググって翻訳かけたら「代替出席システム」とか出てきて俺の腹筋を攻撃した。授業サボってんじゃねえ! 真面目に英和辞典を引くと、alternateが「交互の」、attendanceが「出勤」なので、参勤交代は英語に訳す際に「交互出勤」と意味をとられたわけだ。
 つまり……参勤交代は「交代参勤」と書いたほうが実態をイメージしやすい……ということだろうか? こう書くと大名たちがシフト勤務してる様子が目に浮かぶ。まあ1年単位のシフト勤務であることには違いなかろう。

 そういえば我々はシフト勤務のことを「三交代制」と呼び習わしている。これも先ほどの「交代/交替」の使い分けメソッドからすると「交替」であるべきだが、検索すると「交代」が倍以上引っかかる。言葉の使い分けに「正しい」も何もあったものではないということがおわかりいただけたところで、参勤交代は現代の感覚で言うと「交代」で良いのではないか、という実感を得られたので調査をおしまいにしたい。

■今回調べきれなかったこと:
  • 「交替」が「交代」になった時期
  • 「参覲」を誤植したやつの末路
 これは古文書ガチ勢に聞かないとわからないやつかもしれない。