Oneside Flat Web

◆ワンサイドフラットウェブ◆

~  睡眠勇者ニドネリオン  ~

■2025-04-19
竜洋記
 キャンプという趣味は、現実的には春と秋のわずかな期間しかできず、しかも春はアホみたいに花粉の飛散している時期と、大型連休でアホみたいに人出が増える時期を除くことになる。なので行けると思ったらチャンスを逃す手はない。

 今回はワイフが偶然、竜洋海洋公園オートキャンプ場のコテージにキャンセルが出たことを発見したため、急きょ決行することになった。
 このキャンプ場は、以前、併設された公園に来たときから目をつけていた。わりと人気で予約がとりにくいらしい。なので今回はテントでなくコテージとなるが、どのみち海が近くて常に遠州のからっ風が吹き荒れるので、テントは厳しかっただろう。

■見付天神 矢奈比賣神社

 ちょっと寄り道すれば届く範囲にあるので寄った。
見付天神 矢奈比賣神社
 ここは天下の奇祭「見付天神はだか祭」でゆうめいなところだが、今はむしろ「しっぺい太郎」のほうが通りが良いだろう。
 2022年に長野にいったとき、光前寺の早太郎伝説に触れてきたので、こっちにもちゃんと行っておくべきと判断した。なので別に『ゆるキャン△』の聖地巡礼をしているわけではないが、それを否定する材料もない。

 いまや磐田市のキャラクターとなっている「しっぺい」であるが、こいつの赤いふんどしは裸祭に由来するものであることに今更気付いた。お前……裸祭に参加していたのか……。娘氏はおみくじでみごと大吉を引き当てた。そういえばこれが初詣のような気がする。

■磐田市香りの博物館

 弊サイトには記録されていないが、ここは以前に来訪したことがある。ここでは香水の調香体験ができる。土曜の午後ではあったが、幸い混んでいなかったので整理券等ナシで入ることができた。
 PCを操作し簡単な質問に答えると、プリンターから「ボディ」「アジャスト」「アクセント」の3種類の香りの名前とその配分を示した紙が出力される。あとはそのレシピにしたがって香水をまぜまぜすれば良い。香水はすでに単体で香水として成立しているので、娘氏が原液を嗅いでも「エンッ!!!」となることはない。余談だが娘氏は「エンッ!!!」が「刺激臭を直接嗅いで倒れる人の断末魔」であることをなぜか理解している。

■竜洋海洋公園オートキャンプ場

竜洋海洋公園オートキャンプ場
 ここは疑いようもなく『ゆるキャン△』の聖地巡礼に該当する。実写版だと一瞬しか出なかったが、大晦日の夜にここにテントを張るしまりんは只者ではない。
 しまりんは「整備されていて枝などが落ちていないから」といって特殊な火起こしをしていたが、敷地外にはクソデカまつぼっくりさんがいくつか落ちており、これを利用したら着火剤がいらんのではないかというくらい見事に燃えた。まつぼっくりさんってこんなに燃えるんだあ。来たるべき核の冬に備えてみんな松を植えるべき。

 ここのコテージにはなんと二段ベッドがある。つまりマットレスも寝袋も要らない。あとキッチンとほりごたつもある。もうそれはホテルと変わらないのではないだろうか。キャンプを宿泊訓練と捉えている俺には物足りないが、ほりごたつの上にカルカソンヌを広げて戦うのはとても面白かった。

 翌朝は暴風雨になったが、窯焼きピザのキッチンカーが来たのでためらわずに向かった。しまりんが欲望に耐えられなかったピザ、まだ元気に営業してたんだ! キッチンカーの中に窯があり火が入っているのは素直に壮観だと思った。

■磐田市竜洋昆虫自然観察公園

 あいにくの雨で公園部分は散策できないが、昆虫館があるので寄った。そして我々はここで世にもおぞましきものを見た。
ゴキブリ展 8
「ゴキブリ展 8」
 ……ちょっとまってくれ、なんでナンバリングが8まで行ってんだ。なんでもカブト・クワガタに次ぐ定番展示とのこと。しかも3月で終わってるはずが、会期が延長されている。狂気を感じる。
 虫が苦手な人に配慮してできるだけロングで撮った写真としたが、これでも十分狂気が伝わってくるのではないだろうか。

 しかもそこにあるのは悪趣味なファッション狂気ではなく、膨大な情熱と知識に裏打ちされた確かな狂気であった。論文も書いている。沖縄の離島で採集を繰り返している。その結果が展示されている。信頼できる狂い方をしている人を見るのは楽しい。いちおう「ポスターは飲食店に貼られることもあるのでゴキブリの写真は使えず……」という正気を感じさせるエピソードもある。正気が勝ったけど使おうとはしたんだ。

ゴキブリ展 8
 狂気のフィルターを通して見るとこのゴキブリたちはアイドルなので、当然アクスタも出る。きれいめな種類のゴキブリはいいとして、実写のアシダカグモのアクリルスタンド、何に使えというのだ……というか天敵枠のアシダカグモがなんで得票率上位にいるんだよ! おばか!!

 いちばんスゴイと思ったのは「ゴキカブリ」が「ゴキブリ」に誤植された1884年の本『生物学語彙』の実物を入手して展示していたことである。それもう昆虫学と関係ないだろ!! ただの執念だろ!!

 ……一応、昆虫館なのでヘラクレスオオカブトとかも飼育されているし、二階には美しいチョウの標本がぎっしり並んでいて見ごたえがある。研究とは正気と狂気の狭間を反復横跳びすることなのかもしれない。

■御前崎海鮮なぶら市場

 帰りは東名高速を使わず、海沿いを走って帰った。お昼に海鮮なぶら市場に寄り、カツオ定食を食べて帰った。
 海鮮なぶら市場は東名高速からだいぶ離れているので、高速でなぶら市場に行くことはできない。俺は高速でなぶら市場に行きたかった。

 ここではダイレクトふるさと納税をやっていた。すごい。カウンターで御前崎市に納税するとその場で返礼品として商品券がもらえる仕組みだ。
 仲介業者に税金を吸われないのは良いが、もうそれは市場を市営にしたほうが早くないか? 都市部の住民税を奪い取るほうが重要なのか? 納税とは何か……俺はよくわからなくなってしまった。
 
■2025-04-03
風になる
 春……それは多くの生き物が、冬眠明けや繁殖などで活動が活発になる季節。
 そしてその大きなうねりは我が家にも影響を及ぼした。

ギター
 おや、我が家のギターが……?

ウクレレ
 繁殖しているーッ!!
 ギターってやつはハムスターと同様、単為生殖する生き物だったのかァーッ!!
 いやー可愛いですね、ギターの幼体はまだ弦が4本しか生えてないんですねえ……。


 というわけで、ウクレレがやってきた。
 俺は常々、「ギターの5・6弦って外しちゃダメかな?」と思ってきた。バレーコードができない事実から逃げ続けているからだ。以前、代表的バレーコードであるFとBmをいかに誤魔化しているかという戦いの記録を書いたが、そもそも指4本に対して弦6本は多すぎる。初代ギターフリークスは3ボタンだぞ。
 なので、4弦しかないウクレレは俺にとっての福音となるだろうと予感していた。しかし懸念事項があった。

スペースギター&ウクレレ by BingAI
スペースギター&ウクレレ by BingAI
 ギターとウクレレ、コードの押さえ方がぜんぜんちがう。

 せっかくギターの主要コードを身につけたのに、さらにこれを覚えていったら混乱の元だ。どっちがどっちかわかんなくなる可能性が高い。なので、娘氏の入門用に買ってはみるものの、真面目に取り組むことはしないでおこう……と思っていた。
 しかし、説明書に「既にギターをお弾きになる方は、ギター用のコードの5・6弦を省くことで対応できます」と書いてある。その場合CをFに移調し……? えっとつまりどういうコトだ?

もすかう
Guiter(key-1)
 これのキーをさらに-7すればいいわけだ?
 
もすかう
Ukulele(key-8)
 アッなにこれ……同じだッ! コードは違うけど上4本の押さえ方が同じッ!!
 じゃあもう全ての曲のキーを-7(あるいは+5)すれば、ウクレレ用のコードを一切覚えずに、ギター用のコード譜を見ながら5・6弦を無視して弾いていいってコトじゃあないか! イージーモードか!?

 まあ実際はキーを-7もしたら原曲からぜんぜん音域が離れてしまって別の曲みたいになってしまうことは、カラオケで皆様ご経験済みだとは思う。しかしイージーモードの代償としては破格である。
 たとえば上記の譜面において、俺がギターでBを鳴らす場合、バレーコードができないため5・6弦を無視して弾く。その指運びはウクレレと完全に一致している。鳴らせない部分を鳴らさなくていいよと言ってくれる、無限の優しさを感じる。

 こうして俺は、ウクレレのコード表をいっさい見ないまま、わずか1日でウクレレをギター同様に弾けるようになってしまった。
 とはいえ、ギターコードでウクレレを弾くと、コードを構成する音が欠けてしまう、あるいはコード内での一番低い音が変わってしまう関係で、違和感が出る部分がある。多少の補正か妥協は必要といえるだろう。

【ギターと比べてウクレレのよいところ】
  • 指4本に対して弦4本なので、コードが押さえやすい。弾ける曲が一気に広がるのはイージーモードの魅力。
  • 左手でコードを正確に押さえているという実感があるので、右手で力強くストロークすることができる。
  • ナイロン弦で指にやさしい。これはすでにギターによって左手の指の皮が硬質化しているせいかもしれない。
  • 小型軽量のため極めて取り回しがよい。やはりすぐに手に取りすぐに弾けるようにしておくことが楽器習熟のカギ。

【ギターと比べてウクレレのいまいちなところ】
  • 弦が4本しかないので、押さえ損ねた弦があるとギターよりミスが目立つ。
  • 成人男性が押さえるにはフレットの幅が狭すぎる。指が太い人はそもそも押さえられない。俺は細い方だがそれでもギリギリ。
  • 本体が小さすぎて、どうやって構えるとかっこいいのかがいまいちわからない。
  • カポタストをつけてキーを変えようとするとカポが邪魔すぎる。ウクレレ専用のやつならいいのかな?
  • かっこいい曲も悲しい曲もなんかお気楽な感じになってしまう。シブい低音はギターの強み。
  • 無限に甘やかされてしまいギターに戻れなくなってしまう。そしてギターを触った時に「うおデッカ……」ってなってしまう。

 3日もすると、娘氏も簡単なコードならさらっと押さえられるようになってしまった。まあ娘氏がウクレレ弾いてんならパパは頑張ってギターに踏みとどまるべきだろう。
 俺はさしあたって、つじあやのの「COVER GIRL」を聴くなどしてウクレレアレンジのなんたるかを学習している。つじあやの……それは日本中のウクレレプレイヤーのメンターでありつづける偉大なアーティスト……。
 
■2025-04-01
俺たちと回転式機関砲
 1914年、バルカン半島における皇太子暗殺事件をきっかけに、第一次世界大戦が始まった。それは従来の単なる国家間の戦いではなく、産業革命が生んだ技術と殺戮が融合した、かつてない規模の戦争であった。
 この戦争では、毒ガス、飛行機、戦車といった新たな兵器が次々と投入され、戦いの形を大きく変えていった。

 中でも多くの死者を出したのが機関砲である。そのころまだ戦場といえば、兵士が密集して隊列を組み、一斉射撃や銃剣突撃で敵陣を突破することが一般的であった。その物量を一閃する兵器が登場したことで、莫大な数の死傷者が生じ、各軍は塹壕に潜り戦線は硬直した。

 しかし、『るろ剣』を読んでいる聡明なる諸兄はご存知であろう。第一次世界大戦よりも半世紀以上前、明治維新の頃にはすでに我が国にもガトリングガンが導入されていたことを。
 そんなガトリングガンが実装されてから60年もたってなお、機関砲に正面から伝統的密集攻撃をやるとか、あまりに無謀すぎないか? 指揮官は何を考えていたんだ?


 この疑問に対する答えは2つある。
 ひとつは、戦場における情報伝達手段が発達しておらず、散開隊形に対する指揮系統が成立しにくかったということ。
 もうひとつは、『るろ剣』で式尉くんがその身を挺して抜刀斎の盾となったように、一斉に突撃すれば肉壁で突破できなくもなかったということだ。

 だが、機関砲だって60年もたてば改良・進化するものである。
 明治初期のガトリングガンは人力で銃身を回転させるため、発射レートはおよそ200発/分が精一杯であった。
 しかしこの第一次世界大戦中に投入されたものは、銃身の回転を完全に機械制御しており、発射レートは6000発/分にも及ぶ。これを肉壁で突破しようとすれば、速やかで確実な全滅が待っているであろう。

 バルカン半島で行われた最も重要な戦いであるサロンキ戦線においてドイツ軍が使用し、猛威を振るったこの機関砲は「バルカン砲」と呼ばれるようになり、その後小型軽量化を経て、今でも戦闘機やガンダムに搭載される機関砲として名をはせている……
 ということを脳内で考えついたんだが、そうだよな!? ChatGPT!!


GPT4o
「バルカン砲」という言葉から連想されるものには現代兵器であるガトリング方式の多銃身機関砲がありますが、これは1950年代にアメリカで開発された兵器であり、第一次世界大戦には存在していません。「バルカン砲」はバルカン半島とは直接の関係がなく、ローマ神話の火と鍛冶の神ウルカヌスに由来しています。
 バカ!! そんなワケあるか!!
 まったく生成AIは調べ物のとっかかりとしては便利だけどこういうウソが紛れ混むからな……。ちゃんと複数の情報源にあたって……いや……本当にバルカン半島はBalkan、バルカン砲はVulcanで一切関係がない~~ッ!!
 ウソだろバルカン半島! お前は「ヨーロッパの火薬庫」の異名をほしいままにしていたじゃないか! 逆になんでバルカン砲と関係がないんだよ!!

 「アンゴラウサギはアンゴラ共和国原産である」「アラビアータはアラビア半島からイタリアに伝わった」「シマンテックは四万十市で創業した」「ぐっすりの語源はGood Sleep」などなど、こういった豆知識は完璧な納得を俺たちに与えてくれる。「事実でない」こと以外は非の打ち所がない。「事実でない」ということがそんなにダメか。もう良いのではないか。ポストトゥルースの時代と警鐘を鳴らされて10年も経つ。何か変わったか? フィルターバブル内で培養されたようなおっさんは大統領に返り咲いた。俺たちはもう「事実」より「納得」を優先するのが当然の社会に生きているのではないか? 画像生成AIは真面目な顔でウソの大量生産工場を稼働させ、人の手による検証・訂正は追いつかない。事実を追い求めることはもう無駄なのではないか? みんな楽になれ。抵抗を諦めて都合のいい納得を与えてくれるエコーチェンバーの中で暮らそう。納得は何より優先するのだから……。
 
■2025-03-31
月記MARCH
娘氏「パパは何日からお休み?」
ぼく「さては……サラリーマンに春休みがあると思っているな?」

 逆になんでないんだろうね。切り替えの時期なのにこんなに忙しいのはおかしいよ。でもまあいい。じゃあ3月に観たもの、読んだもの、やったことの記録だよ。

■インセプション

 アマプラで『インセプション』を観た。時系列は異なるが、『インターステラー』『TENET』に続くクリストファー・ノーランチャレンジである。
 ノーラン作品はとにかく難解だと言われており、実際TENETなんかは全編ずっとジョジョのラストバトルを観ているような気持ちで楽しんだ。その理屈でそうなる?? なってるからいいかぁ……。
 こっちはそれよりもスタンド能力が「夢の中に入って記憶を読んだり無意識を植え付けたりする」とイメージしやすく、かついろんな役割分担があって設定の厚みもあり、わかりやすかった……と思ったが、途中で「ところで今なにを目指してるんだっけ?」ってなって置き去りにされた。あとからググッて解説見たらちゃんと説明されてたんだけど、夢の中で死んだときの挙動と目覚める条件が現場で急遽変わったせいでわかんなくなったんだよな。
 全編を通して渡辺謙が酷使されていてよかった。ここまで酷使される渡辺謙は見たことがなかった。

■るろうに剣心

 ものすごく丁寧なアニオリ追加パートを含む京都大火編が終わった。
 京都市街地に放火したうえで大阪湾から軍艦を発進なんていうド派手な計画が、原作ではサラッと未遂で終わってしまううえ、素人テロリストの作った炸裂弾で全財力の5分の3を費やした戦艦が撃沈されて悲しすぎる。このへんを厚くすることは、ジャンプの週刊連載という枠組みではやりたくてもできなかったことだったのだろう。
 まあその結果「京都には他に医者はいないのか……?」「東京行きの戦艦になぜ蒼紫が……?」など不可思議な点が出てきてしまったが、気にしないことにしよう。次のクールではいよいよ志々雄様が「1対5にしてもまあいいっしょ」ってなるので楽しみに待つ。

■叙述トリック

 最近ワイフが昔の推理小説を読んでいるので、オススメされたやつを読んだ。
 とはいえ、困ったことに叙述トリックの含まれる作品は、それが含まれるということ自体がネタバレとなる。なのでタイトルを出すことができない。もう20年近く前の作品なので今さらネタバレということもないだろうが、無駄にネタバレすることもあるまい。
 お話の筋としては、「レインマンが人を襲う」という都市伝説が実際の殺人事件となって、刑事のコンビが噂の発信源を追うっていう奴だ。既読者はこのくらいの情報でわかると思う。最近都市伝説を解体したいという気持ちが高まっていたのでとても面白く読めた。あとi-mode全盛期の渋谷ギャルたちの文化が懐かしすぎる。オンビキを矢印にするんじゃあない。

 この作品、「最後の1行のどんでん返し」という仕込みがあるんだけど、そっちはあまり脈絡を感じなくって、むしろ最後まで読んで犯人がわかったうえで、吉良吉影(概念)に吉良吉影(概念)された人はどの段階で吉良吉影(概念)された状態だったのか、というのが巧みにごまかされているのに気づいたのがいちばんスリリングだった。読み直したらもうこの段階で吉良吉影(概念)されてんじゃん……怖……。犯行のトリックとは関係ないから叙述トリックとは言わないかもしれないけど、こういう完全に騙されてた感を味わいたくてミステリ読んでるところがあるな。

■ドンキーコング(GB)

 Switch Onlineゲームボーイのラインナップに、待望の『ドンキーコング』が追加された。
 名前のせいで説明がややこしいんだが、これは先に配信された『スーパードンキーコングGB』『ドンキーコングランド』『ドンキーコングGB』とはぜんぜん別のゲームである。それらはスーパーファミコンの『スーパードンキーコング』をベースにしたアクションゲームであり、今回追加されたのはマリオを主役とした初代『ドンキーコング』の系譜なのだ。この系譜は『マリオvsドンキーコング』シリーズとして続いている。

 ゲームを始めるとアーケード版やファミコン版でおなじみの、鉄骨でつくられたステージが出迎えてくれる。
 しかしマリオさんは側転や三段跳びなどおなじみのアクションを身につけており、ハンマーを振るしか能がなかったあの頃とは完全に異なるタフガイとなっている。ゲームボーイなのにアクションがめちゃめちゃ滑らかなのはさすがのマリオさんである。
 そしておなじみのステージを越えると、そのアクションをフルに活用した面クリア型アクションパズルが開幕する。もう「面クリア型アクションパズル」というジャンルが懐かしすぎるが、令和に通用する遊び応えがあるので是非やってみてほしい。

 しかしこれ、スーパーゲームボーイのローンチタイトルだったんだなあ。懐かしい。それを差し引いても50インチのテレビでやるものではない気がするが。

■Vampire Survivors

 隠しキャラをサクサクと解禁していくうちにすっかりハマってしまったが、「終盤、進化した武器のエフェクトが眩しすぎて目に悪い」という理由でプレイに気合いと覚悟が求められる。それは無駄にでかいテレビでやってるからでは? それはそう。
vampire survivors
 インフレしきってもはや「何が起きてるのかわからない」から「直視できない」に進化したプレイの様子。このゲーム、個人開発ゆえの「ユルさ」がなんかクセになってしまう。画面、直視できなくてもいいんだ!

 恐ろしいのが、大抵のステージは30分で終了するので、主要アイテムのアンロックが済んでクリアが安定してくると、「ちょっとやるか」とコントローラーを握ったら最後、30分が確定で消費されることである。「今日は4回プレイしたぞ」となれば、ヴァンサバに2時間を費やしたことがハッキリとわかってしまう。恐ろしい。
 時間経過とレベルアップ速度を倍にする「お急ぎモード」はあるが、ゲームバランスが変わっちゃうから特定のトロフィー狙いのとき以外は使いにくいんだよね。

■ニチアサ百景

 我が国のヒーローたちが戦う理由は基本的に「何かを守るため」である。眩しくて戻らない瞬間をもう誰にも奪わせないために強くなろうとするのがヒーローとしての姿勢なのだ。
 特に、普通の女子中学生を戦場に送り込むプリキュアについては、初変身時に「何かを守りたい」という気持ちが強調される。人々の笑顔を、夢を、好きな事を、奪う行為は許せない、そういった動機で普通の女子が戦いに赴くのである。

 しかし……今期の妖精は……戦闘のことを知らずに「アイドルプリキュア」のライブに憧れて一緒に踊りたいだけの紫雨さんを「合格プリ~!」といって戦場に単騎で出撃させ、心を折るという、めちゃくちゃなことをやってしまった。
 確かにプリルンは「友達が踊っているところを無断で動画サイトにアップロードする、怒られてもまたやる」など歴代妖精のなかでも飛び抜けたあほとして描かれているが、アイドルと同じステージに立てることを餌に戦場に送り出すのはラインを越えていないか。プリルンがそういうタイプの邪悪であり報いを受けるのならいいが、結局謝罪もないまま、3人目の戦士加入の流れになってしまったのもヤバいのではないか。

 騙された紫雨さんも紫雨さんで、戦場の恐怖を目の当たりにして心が折れたのに「それでも推しと踊りたい」という熱意でプリキュア化するのですごい。
 一応「みんなの『好き』を守りたいから戦う」という流れにできたのにそっちじゃなくて、戦うことは聞いてなかったけどしょうがない! みたいな気持ちで変身するのはマズくないか。我々の世界にも実際にそうやって搾取されてきたアイドルの卵たちがいるのではないか。今期の脚本、何を考えているのかがわからなくて怖くなってきた。

 そして、そんな邪悪を目の当たりにしたニチアサおじさんたちを迎え撃ったのが、『仮面ライダーガヴ』の三大マッドサイエンティスト(なんで三人もいるんだ?)の一角、酸賀研造であった。
 そりゃあ仮面ライダーのマッドサイエンティストが人体実験を一人しかしてないわけないよな。作中に出てこない犠牲者がたくさんいるはずだよな。被験者が人体実験に向かうように関係者を殺害したりもするよな……するかぁ!?
 狂気に足を踏み入れた理由も関係者には明かさないまま、さらっと爆死するところまで含め完璧であった。仮面ライダー・マッドサイエンティストレースで一気に先頭グループに躍り出たな。こいつに比べたら死人が出てないぶんプリルンはマシ。なんで比較対象になってるんだよ。


 ところで戦隊にもプリキュアにも「活動休止中の伝説的男性アイドル」が登場したことで思ったんだけど、このアイドル飽和時代に我々は「グループ名(「元」も含む)の肩書きを持たない男性アイドル」をアイドルと認識しなくなっているのではないか。
 ノグチ・ゴウ・ヒデキの時代は違った。男が単体でピカピカのキザでいられた。今はアイドルといえばアイドルグループであり、ソロの男は俳優かミュージシャンか芸人に分類されてしまう。女もそうか? ……そうかも?
 よくわからなくなってきた。プリキュアと戦隊にはぜひ「アイドルとは何か」を再定義してほしい。期待している。