Oneside Flat Web

◆不定期日記ログ◆

■2009-05-21
ワヰウヱヲのこと
 「ディズニー」を発音できないお年寄りを見ると、
 ここ半世紀で日本語の発音はバリエーションが増えたのだなあと思う。

 かつて「Angel」は「エンゼル」であった。
 いまや「エンジェル」という発音・表記が一般的であるといって良いだろう。「エンゼル」という表記・発音は、おもちゃの缶詰に関する文脈か、あるいはロサンゼルスなどの固有名詞に使用されるにとどまる。
 いつの間にか我々は「ジェ」の発音を手に入れたのだ。
 もしこの成長がなかったら、JEROは「ゼロ」と呼ばれるハメになり、それは演歌というよりはB'zであっただろう。

 しかし、表記が根付いていても、発音が根付いていない例も見受けられる。
 「ウィ」「ウェ」「ウォ」の3つを例に、少し考えてみた。

 ゆっくり思い返してみると、我々は「ウィ」と書いて「うい」と発音することが多々ある。
 「ウィーク(Week)」は「ういいく」だし、「ウィンドウ(Window)」は「ういんどう」だ。
 さすがに「ウィン(Win)」まで短くなってくると「ウィ」に近くなってくる。
 「ウィル・スミス」を「ういる・すみす」と発音する人は少数派だろう。

 「ウェ」はどうだろうか。
 「ウェディング(Wedding)」「ウェハース(Wafer)」「ウェスト(West)」……脳内で発音してみると、どれも「うえ」になることが多い。
 「ウェザー・リポート」は「うえ」だが、本名の「ウェス・ブルーマリン」は「ウェ」に近くなる。
 いちばん「ウェ」の発音が意識されるのは「ウェブ(Web)」かもしれない。

 「ウォ」について考えると、前2つとは大変な違いがある。
 「ウォール(Wall)街」「ウォーキング(Walking)」「ウォーター(Water)」など、驚くほど「ウォ」の発音が根付いている例が多い。
 若者層でこれらに「うお」の発音を使う人は、もはやいないのではないか?
 この定着率、「ヰ」「ヱ」が死亡した今もなお残る「ヲ」の執念のなせるワザだろうか。
 全然関係ない話になるが、Waterを「ウォーター」と読んだのはいったい誰なんだろう。
 ジョン万次郎は「わら」と教えたはずだが。


 こうなると、なぜ「ワ」は「ウァ」にならないのか?という疑問も出てくる。
 VとWに密接な関係があるのは字形からも推測できる。
 VAを「ヴァ」としたのにWAを「ウァ」にしないのは不公平ではないのか?

 今までの人生で「ウァ」の表記をいちばん目にしたのは、10年前の1999年。
 『ファイナルファンタジーVIII』のプレイ中である。
 アステカ神話のケツァルコアトルをもじった召喚獣「ケツァクウァトル」や、主人公の一人「ラグナ・レウァール」の名前に「ウァ」の表記が登場した。
 これほどの「ウァ」を見たのは後にも先にもこのときだけである。

 思いかえすに、小学生だった僕に初めて「ヴァ」の発音を要求したのも、
 やはりファイナルファンタジーの「シヴァ」だった。

 ファイナルファンタジーならきっとやってくれる。