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生きもの地球奇行・イタリア
DNAシークエンス4 『眠れる奴隷』
再びローマ、テルミニ駅着。最初に滞在したホテルに荷物を運び込む。フロント係の人が別人かと思うくらい陽気に仕事をしていて、まだ午前中だというのに快くチェックインさせてくれた。ラスト2日間は、ローマの代表的な観光スポットを巡っていこうじゃないか。
地下鉄B線でコロッセオ方面へ向かう。そのままコロッセオに行ってもどうせチケット売り場が大行列なので、一駅過ぎてチルコ・マッシモ駅まで行くことにした。このまま「真実の口」で有名なサンタ・マリア・イン・コスメディン教会へ向かい、フォロ・ロマーノの遺跡群を見たあとコロッセオへ逆走しようという目論見だ。ところで
「コロッセオ」ってさあ、「殺(以下略)。
地下鉄を降りて地上に上がると、FAO本部のすぐ隣に出た。広い道路の脇に、川のない河川敷のような空き地が広がっている。草野球でもやるのかと思ったが、ここが駅名になっているチルコ・マッシモ、古代ローマの競技場跡らしい。草野球なんてもんじゃなく、命がけの戦車戦などが行われたんだろう。発想のスケールで負けた。
「真実の口」の前には、観光客が列を作っていた。『ジョジョ』2部では、こいつの口の中に隠し扉のスイッチがあり、その奥で「柱の男」たちが眠っていた。みんなそれを確かめるかのように、手を差し込んで記念写真を撮っている。『ローマの休日』?それいつの映画よ?
続いてフォロ・ロマーノの遺跡群を見に行く。場所としてはすぐ隣のはずだ。……だが、遺跡は見えるものの、高いフェンスがあるばかりで、いっこうに入り口が見つからない。そのうち道は登り階段になってきた。
ここまで登ってもまだ入り口がない。というか、こっちは出口方面らしい。どうやら僕らは、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂まで登ってきてしまったようだ。世界史で習ったとき
名前がカッコイイので絶対に忘れないと思ったが、いつの時代に何をした人かは完全に忘れていた。よくある話である。
『ジョジョ』5部では名前が出てこなかったので印象が薄いが、ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂はブチャラティ対セッコ戦の再開地点である。つまり、ここからフォロ・ロマーノの横を通ってコロッセオまでまっすぐ伸びる大きな道路が、ブチャラティが「泳いだ」ルートなのだ。偶然にもそのコースをなぞりながら、フォロ・ロマーノの入り口に到着することになった。
チケット売り場はガラガラに空いていた。スムースに入場できたものの、日陰の少ない遺跡群の中でこの直射日光はけっこうツライ。入り口前の屋台で凍ったミネラルウォーターのボトルを買って凌いだ。ペッシのように冷やすのだ。我を忘れるくらい大切な氷で……。
それを見ていたのかどうかは知らないが、後ろの子どもが暑さに参って母親に
「ギアッチョー!」と言っていた。たしかに超低温は「静止の世界」だ……爆走する熱中症だろうと止められるッ!荒巻く汗だろうと止められるッ!
三代の栄耀一睡の中にして、大門の跡は一里こなたに有り。国破れて山河あり。城春にして草青みたり。平泉を見た芭蕉の言葉だが、「山河あり」どころかこうしてしっかりいろんなものが残っている。しかも2000年近く前のものが。2000年前ってオマエ、卑弥呼よりずっと前じゃねーか。あまりに現実感がなさすぎて、
世界五分前仮説を信じそうになった。あちこちで大規模な修復が行われていたけれど、いったいどうやって修復するんだろう?
そしていよいよ、さっきからやたらと視界の端に入ってきたコロッセオに到着。ところで
「コロッセオ」ってさあ(以下略)。
チケット売り場は長蛇の列。だが実はここのチケットはフォロ・ロマーノと共通。つまり、苦労してフォロ・ロマーノから入った僕らはここに並ぶ必要はない。……その分、炎天下をけっこうな距離歩いた気がするけど。
かなり急勾配な階段を登って、順路通り2階に出る。ご存知のとおり、古代ローマの時代、ここではグラディエーターたちの決闘が見世物となっていた。観光気分で来てはいるけれど、多くの命が散っていった場所なのだ。とくに『ジョジョ』5部の
ナランチャは悲惨だ。不意打ちで殺害されたため最後の見せ場が何もなかった。ローマは一日にしてナランチャ。
地下の部分が露出しており、どうやらそこに入ることもできるらしいのだが、地下への階段がどこを見ても見当たらなかったので、地下への侵入は諦めた。ちょっと悔しいが、なぜか進入禁止区域の日陰で黒猫が熟睡してるのを目撃してちょっと幸せな気分で退場。
ちゃんとした昼食もとらずに夕方まで活動してしまったので、コロッセオ前のテラスで軽食。ところで
「コロッセオ」ってさあ(以下略)。ふつう観光地のこういう所で出てくる料理は期待できないもんだが、そんな安物のスパゲティですら美味いので困る。
■ Memory-2 プロント!通話中
いったんテルミニ駅に戻り、サンタ・マリア・マジョーレ教会をチラっと覗いてから、駅周辺で本格的におみやげを探しはじめることにした。
とりあえず必要なのはバラマキ用のお菓子だ。「ローマに行ってきました」みたいなのがあればいいんだが、そんなおみやげ用お菓子は全然見かけなかった。日本人なら
「真実の口クッキー」くらいはとっくに作っているハズだ。たぶん、お土産にお菓子を配るという風習なんてないんだろうな。
で、ホテルの近くの小さなお菓子屋さんでクッキーやチョコレートを購入することにしたんだけど、
店員のお姉さんがずーっとケータイでおしゃべりしてる。淀みなくおしゃべりしてる。先客がいて、レジに品物を持っていったけど、まだおしゃべりしてる。おしゃべりしながらレジ打ってる。大丈夫なのかお姉さん。僕が会計してもらってるときもまだおしゃべりしてる。結局ずっとおしゃべりしていた。
ホテルに戻って、ふと不安になって買い物袋の中を見ると、買ったはずのチョコレートが入っていない。そして
謎のハンドクリームが入っている。しかも使用済み。明らかにお姉さんの私物である。お姉さーんッ!やっぱり大丈夫じゃあねーじゃねーかーッ!ここまでテキトーだと逆に笑ってしまう。仕方ないのでハンドクリームを届けにお店に行くことにした。
お店まではそんなに距離はない。にこやかにハンドクリームを手に持って「Is it yours?」みたいなことを言いながらお店に入ると、さっきのお姉さんはすぐにわかったらしく、僕が買う予定だったチョコレートをさし出してくれた。笑顔で。……
電話しながら。うおおーい!!まだしゃべってるよこのお姉さんー!!
夜、再び地下鉄でコロッセオに行ってみる。ところで
「コロッセオ」(以下略)。治安の悪さが気になるものの、観光ルートから外れなければ結構人通りがあるし、その点に気をつければ大丈夫だろう。地下鉄の車両はラッピングバスみたいにスプレーでラクガキがされており恐怖感を煽るが、もはやデザインとしてわざとラクガキさせてるクオリティだったので気にしないことにした。まさか、クオリティの高いラクガキで全面を埋めることによって汚いラクガキを抑止しようという作戦なのだろうか。
ライトアップされた夜のコロッセオ。広場は記念写真を撮る者、座って飲み物を飲む者、音楽をかけてダンスの練習をする者で賑わっていた。
しかし、今でこそ観光地であり憩いの広場であるコロッセオだが、かつてはかなりの量の殺人・処刑がここで行われたはずだ。ヘタな心霊スポットとは比べ物にならない怨念が集まっていてもおかしくない。……でも
古代ローマ剣闘士の霊とかが立ってても、あまりビジュアル的に怖くないな。やはり心霊は心を映す鏡だな。
■ Memory-3 正義と邪悪
本日は事実上の最終日。僕らはちょっと早めにホテルを出て地下鉄に乗り、ボルゲーゼ公園の木漏れ日の中を歩いていた。目的地は
ボルゲーゼ美術館。完全予約制で時間が決まっていて、一度に決まった人数しか入れないうえ、入口で荷物を預けていかないといけないというプレミアムな美術館である。
ここには、『天使と悪魔』で勝手に秘密結社の一員という設定にされてしまったベルニーニの作品が数多く展示されている。ベルニーニの彫刻は『天使と悪魔』でも出てくる通り、ローマ中のあっちこっちに存在するんだけど、ここにあるのは極めて精細な、とうてい野外には置けそうもない作品ばかりだ。
特に、ベルニーニ版の
ダビデ像はすごかった。おそらく現代の日本のフィギュア技術の粋を尽くして「ダビデVSゴリアテ」をフィギュア化したらこうなるんじゃないか、っていうくらい躍動感あふれるポーズ。投石ロープの張りを見ているだけでみなぎってくる。男の子ならミケランジェロのよりも断然コレだと思う。
絵画も彫刻もあったけれど、とくに黒・茶色・白の大理石を組み合わせて作られた胸像がたくさんあった。なるほど、単色の素材でもこうして組み合わせれば表現力が増すわけだ。
まるでガンプラだな。ガンプラすごいな。
地下鉄駅まで戻って、北へひと駅移動。別に歩いても良かったんだけど、どうせワンデイパスがあるので利用しつくす。地下鉄内でサックスを吹いておひねりを貰ってる人がいた。お金を集めて回っているのは、小学生くらいの息子だった。学校はどうしてるんだろう。この必死さ、日本のストリートミュージシャンとは比べものにならない。……だが演奏の曲目が
『ゴッドファーザー愛のテーマ』なのはやけにリアルで怖い。
そんなことを考えながら地上に出ると、そこはもうサンタ・マリア・デル・ポポロ教会の前だ。
ここは『天使と悪魔』では土のシンボルとされ、最初の犠牲者が出た舞台だった、が、全然覚えてない。帰国後ちゃんと映画を観直したら「修復中」という設定でまったく原形を留めておらず、
ただの工事現場だった。ひどい。つまり、映画に出てきたのはベルニーニの『ハバククと天使』の像だけ、というわけだが、現実では
こちらが修復中だった。ひどい。
この教会は、パッと見るとふつうの教会なんだけど、いたるところに骸骨のモチーフが施されている。いったいどういう意図があるんだろう。「デル・ポポロ」ってことは無理矢理翻訳すれば
「聖母市民教会」となるんだろうけど、そのパブリックな名前とは裏腹に、入るといきなり床にジョリー・ロジャーみたいなデザインが施されていたりして、ロックだなーと感じた。
また地下鉄で一駅戻って、スペイン広場。飲食禁止と聞いていたがけっこー飲み食いしている人がいる。ここではバラを売る人が多かった。なぜ観光客に生花を?と思ったが、なんてことはない、『ローマの休日』でアン王女がここでバラを貰ったから、だそうだ。なーんだ、だったらポンペイで「鍵」を売る人とか、コロッセオで「矢」を売る人とかがいてもいいのに。
ここで地図を広げ、次の目的地
トリトーネの噴水までの道のりを確認する。地下鉄で一駅だけど、ちょっと町歩きしていこうということで、観光客の流れにそって歩き出した。
が、実はこの流れはトレヴィの泉に向かう人々の流れであり、僕らは入る通りをひとつ間違えた、ということにしばらくして気がついた。通りが直角に交わる街に慣れていると、方向感覚を狂わされて見当違いの方向に進んでしまうものだ。気をつけなければ。
スペイン広場からトレヴィの泉に向かう路地には、8カ国語くらいでメニューを出しているレストランが多い。それだけ観光客がたくさん通る道なのだ。きっとショバ代も高いんだろう。どこもテーブルチャージみたいな料金が追加されていた。
迷いに迷ってたどり着いた、バルベリーニ広場のトリトーネの噴水。素直に地下鉄で来ていれば目の前だったんだな。ここは『ジョジョ』2部でジョセフとシーザーが波紋対決をした場所だけど、今やロータリー交差点の島になっていて
交通量がすごく多い。シニョリーナにキスの波紋をプレゼントしてる場合でもなければハトもいなかった。ちなみにこの像もベルニーニの作品らしい。ホントにローマの至る所にベルニーニの仕事が残っている。なるほど、ダン・ブラウンが注目するわけだ。
実はこの周辺でもうひとつ覗いてみたい場所があったんだけど、閉まっていて夕方にならないと開かないようなので、とりあえずトレヴィの泉へ歩みを進める。
トレヴィの泉。噴水の大きさよりも人の多さに驚いた。1枚コインを投げ込むと再びローマに来ることができる、というけれど、そんなことは神頼みじゃあなくて、長期休暇が取れるかどうか上司に頼むことだろう。……あ、そこに神の力が働くのか。よし投げたッ!
トレヴィの泉からパンテオン、ナヴォーナ広場までの路地にもたくさんお土産屋さんがある。ヴェネツィアやフィレンツェで見かけたものもあった。
パンテオン近くの陶器のお店で、サボテン君みたいな顔をした置物を見つけて思わず購入した。なんて可愛い魚!値札には「Pesce」と書かれている。
ペッシ可愛いよペッシ!マンモーニなんだよペッシ!
後で調べたら、Pesci(ペッシ)はPesce(ペッシェ)の複数形らしい。複数形は「魚料理」の意味で使われることもあるようなので、僕らは魚の置物を見ながら
「サシミー!サシミー!」と連呼している妙なガイジンだったということだ。……成長しろ!成長しないと栄光をつかめねえ!
パンテオンは突然目の前に現れる。建物の形になっているぶんフォロ・ロマーノより嘘くさい。本当にこれが2000年近く前の建物なのか?どこからどこまでが2000年前の部分なのか?いきなり崩れてきたりしないのか?
中はやっぱり観光客でいっぱいだったが、これだけ分厚い石の建物だと、中は冷房が入ってるみたいに涼しい。さすがに天窓から光が差し込んでいるところにいる人は暑そうだったが。
ナヴォーナ広場は3つの噴水がある細長い広場。後で調べてわかったんだけど、古代ローマの競技場の跡地らしい。なるほど、トラックだったのか。そういえばチルコ・マッシモも細長かった。
ここにもベルニーニの作った噴水がある。中央のオベリスクのついた噴水は『天使と悪魔』にも出てきたが、柵で囲まれているうえ意外と狭かった。「ここで枢機卿を溺死させろ」なんていうミッションを引き受けた
アサシンの苦悩が目に浮かぶようだ。
日陰でジェラートを食べて休憩。本当にどこに行ってもジェラートは美味い。平和だ。偽ブランドのバッグを売っていたアフリカ系の人が警官の姿を見てスゴイ速さでトンズラするのを見た。おおむね平和だ。
3つの噴水のうち、南にあるのが「ムーア人の噴水」。
正直これは耐えられない。飲み物を口に含んでこの画像を開いたら、俺もこの噴水と同じ運命をたどるだろう。さらに追加の情報として「大去勢」のせいで股間にイチジクの葉を装着していることと、モチーフが「イルカと戦うムーア人」という意味不明なシーンであることを加えて筆を置く。
さて、ここまで来ると、ヴァチカンに行った日に歩いたルートと合流する。つまり、今度こそちゃんとバスに乗って駅に戻るのだ。今日ははワンデイパスがあるのでチケットの心配は要らない。
とはいえ、これで最後ではなく、トリトーネの噴水があるバルベリーニ広場にひとつ見所を残してきている。駅からまた地下鉄に……と思っていたが、バス停の停車駅表示に「トリトーネ」「バルベリーニ」の文字を発見して気が変わった。テルミニ駅行きではなく、直接バルベリーニ広場に向かうバスに乗ろう。
バスの中には改札機があるけれど、誰も使っていない。ワンデイパスを突っ込んでみたけれど、反応はない。いままで駅や博物館でたびたび自動改札が壊れているのを見てきたので、まあ壊れてるんだろう、ワンデイパスだし怒られはしないはず……と判断。
すると、近くに座っていたじいさんが
「貸してみ」とジェスチャーしてきた。渡すとすぐに、じいさんは笑顔でパスを裏返して返してよこした。改札機は普通に作動した。あ、グラッツェ……裏でしたかスミマセン、イタリアなめてました。
再びバルベリーニ広場。目的地はガイドブックでもひときわ異彩を放つ
「骸骨寺」、正式名称はサンタ・マリア・インマコラータ・コンチェツィオーネ教会。このとても長い名前がたった3文字の通称に総称されてしまう。この教会、上部は普通の教会なのだが、脇の扉から入ると大変なものを見ることになるのだ。
僧侶とおぼしきおばちゃんが、一人で出入口のカウンターの業務をしている。「英語はわかる?」と聞かれたっぽいので「ア・リトル」と答えた。おばちゃんの説明いわく、「この奥は神聖な場所なので騒いだり撮影したりはNG」「1人1ユーロの寄付をお願いしている」とのこと。たぶん。コインをカゴに入れると「日本人?」と聞かれ「アリガトウ」と言われた。なんか淡々としてつかみ所のないおばちゃんだった。
そういうわけで内部は撮影禁止なんだけど、禁止でなくても写真は撮れなかっただろう。防空壕みたいな狭い小部屋の壁と天井に、
ぎっしりと、人骨。人骨である。頭蓋骨、肋骨、仙骨。ただくっつけてあるのではない。同じ部位をまとめて装飾を描いている。十字架、アーチ、死神の鎌。イラスト化したらダークなゴシック趣味の人が喜ぶかもしれない。小部屋の地面は土が盛られている。まさか次の「素材」が眠っているのだろうか。これと同じモノが僕の中にも1セットあるのか。ここに展示中の骨は、あなたのほね、わたしのほね、ほね、ほね、ほね……。
……えっと、無事に出てこられてよかったです。
■ Memory-4 ホワット・ア・ワンダフル・ワールド
僕らはホテルに戻ってちょっとゆっくりしたあと、お土産と夕食を求めて再び駅周辺にくりだした。
本屋をじっくり確認したんだけど、日本の漫画のコーナーはあまり大きくなかった。『ブリーチ』や『ナルト』は置いてあったけど、『キャプテン翼』も『ジョジョ』もなかった。そのくせ
なぜか『アクメツ』が揃っていた。政治家の無能さ加減はこっちも似たようなもん、ってことか。
テルミニ駅のスーパーマーケットは、イタリアでは珍しく夜12時まで開いているので助かる。変な形のマカロニや、冷凍庫で凍らせるとソルベではなくジェラートになるという液体物を大量に買った。レジはパリ同様、カゴから出して右から左へ次々と品物をスキャンしていく方式で、袋に入れるのと代金を払うのを同時にこなさなければいけない。日本みたいにカゴからカゴに移して、袋に入れるのは別のコーナーを用意すればいいのに。……カゴ泥棒を警戒してるのか?
夕食は駅の反対側にある、ちょっと薄暗い通りのレストランにしてみた。完全に日も落ちていて近寄りにくかったけど、ガイドブックに載ってるってことは観光客もよく来てるってことだ。勇気を出して入店した。
注文したのはアマトリチャーナのパスタ。このへんじゃポピュラーなソースらしい。トマトソースに燻製ベーコンが入っていて、これがもしトマトケチャップと魚肉ソーセージだったら完全にナポリタンなんだけど、とにかくベリッシモうまかった。やっぱ探せばあるんじゃないかなあ、ナポリタン。
注文のとき「1人前を2人でシェアしたいので取り皿を下さい」と英語で伝えようとしたんだけど、
イケメン給仕が僕のセリフを半分も聞かないうちにOKサインを出し、ちゃんとその通りお皿が出てきたのには感動した。パリじゃあどうしてもこれが伝わらなかったんだよなあ。
今夜もいい夜なので、治安の悪さを警戒しながら夜のお散歩。とはいえもう遠出はせず、
共和国広場の夜景を見て帰る。翌朝はもう、レオナルドエクスプレスに乗ってヘルシンキ経由で帰るだけだ。
長かったイタリアの旅もこれで終了。個人旅行ゆえのハプニングもいくつかあったけど、時間を気にせずウロウロできたことはとても良かったと思う。昼下がりにお土産屋さんが店を閉めてたり、注文した料理が全然出てこなかったり、とにかくテキトーなこの国を堪能するためには時間を気にしていてはいけない。
そして、イタリアは歴史の深い国だ。できる限りの予習はしていったものの、見逃したポイントや、あとで調べて驚いた情報が多い。だが『ジョジョ』と『アサシンクリード』の大事なところはおさえられたので悔いはない。結局オマエ漫画とゲームの影響かよ、とツッコまれるところだが、ローマを訪れる人のほとんどが『ローマの休日』の聖地巡礼をしているのだからたいした違いはないのだ。
翌朝、ホテルの人に
「グラッツェ、アリーヴェデルチ!」と挨拶してローマを去った。このシチュエーションでこの挨拶は、現地の人もしてたからたぶん間違ってないと思う。グラッツェ、アリーヴェデルチ、イタリア!いつかまた訪れることがあっても変わらない姿でいて欲しい。
生きもの地球奇行・イタリア編 Fine.