Oneside Flat Web

生きもの地球奇行・フランス(後編)

~ 翼よ、あれがパリの飛騨 ~

【みっかめ】こんにちは諸行無常
 マリー・アントワネット…
 草むらに名も知れず咲いている花ならばよかったものの、バラのさだめに生まれてしまったがために多くの不幸を呼び込んだフランス王妃。
 フランス革命後、彼女が投獄されていた牢獄・コンシェルジュリーには、『ベルサイユのばら』でマリア・テレジアが「おろかしくけばけばしく飾り立てた」と嘆いた絶頂期の肖像画と、牢獄にたたずむ姿を再現した模型の絵はがきが、並んで売られている。
 フランス旅行三日目は、主に、マリー・アントワネットの光と影を探る旅だ。
Tour Eiffel
ホテルの窓からのエッフェル塔
 まずは栄華の極み、ヴェルサイユ宮殿へ向かう。
 メトロのドアをボッゴァと開けて、パリ郊外へ。

 メトロの車内広告はとても控えめだ。時期柄少ないのかもしれないが、中吊り広告が2枚あるかないかという程度だった。そのせいか、車両自体は日本よりやや細身のくせに、さほど狭さは感じない。
 その中で、写真週刊誌だろうか、「Public」という雑誌の広告が目についた。
 あんどう君が頑張って広告のコピーを翻訳する。

 「性的か否か、貴方はいかに」

 なにひとつ公共性を感じない。



 メトロの駅を出て、ヴェルサイユ行きのバスに乗り換える。
 メトロと同じ種類のチケットで乗れるので便利だ。
 バス乗り場が道路の反対側だったので、ささっと道路を横断したら、あんどう君に厳重注意された。パリジャンは赤信号でも平気で横断するくせに、横断歩道のないところは決して渡らないんだそうだ。(あんどう君のパリジェンヌ豆知識)

 バスでパリを脱出。
 アップダウンの大きな土地で、パリ中心部とはまた違ってちょっぴりオシャレな町並みを眺めること30分くらい。バスはヴェルサイユの真ん前に僕らを降ろす。
Chateau de Versailles
ヴェルサイユ宮殿正面
 おお…すごい混雑!
 さあ、マリー・あんどうワネット様!
 お声を聞かせてくださいませ!

 「きょうは…ベ…ル…サイユは、たいへんな人ですこと!」

 お…お…!
 フランス宮廷は堕落しました!王位継承者の后が娼婦に敗北したのです!
 (ベルサイユのばらを読んでないと何だかよくわからない会話)

 すごい混雑ですごい行列だったけれど、ミュージアムパス(美術館その他のモニュメントが入り放題)をあらかじめ買ってあるから入場券の列に並ぶことはないわ!

 宮殿内部は豪華絢爛花吹雪。壁から天井にいたるまで美術品でうめつくされ、大変息苦しい。
 廊下もなしにただひたすら豪華な部屋が連続する。
 廊下らしい廊下があったかと思えば彫刻が並んでいたり、中でも圧倒されるのがこれ。
奥半分は改装中
鏡の回廊
 うおっまぶしっ!
 当時、鏡は最高級品の一つだったとか。
 半分は修復中だったがそれを差し引いてもおなかいっぱいの迫力だ。

 ルイ16世の使っていた寝室、マリー・アントワネットの寝室、近衛兵控え室…
 食堂だけで数部屋。食べるたびに移動していたのか!?
 こいつぁ宮廷生活にくたびれて離宮に引きこもりたくなるわけだな。



 じゃあ離宮へ行くか。
 ヴェルサイユ宮殿の裏に広がる広大な庭園の向こうには、大トリアノンと小トリアノンの二種類の離宮があるという。
 特に小トリアノンはマリー・アントワネットとの関係も深く、きっとアイツのことだからそこでフェルゼンとあんなことやこんなことをしていたに違いない。
 宮殿から庭園に出て、いざトリアノンへ!
目的地は運河の向こう
広っ!!
 うおおーい!広いなコンチクショー!!
 広い広いとは聞いていたがこれほどとは思わなかったッ!
 ほぼ地平線じゃねーかこれ!

 一応トリアノン行きのバスはあるものの、すごい並んでるし、この数々の噴水を見れないし、行くしかないな!
 徒歩で。
 はじめてルイ14世に殺意を覚えた。



 たどり着いたのは大トリアノン。
 薄ピンク色の柱がちょっぴり落ち着いたたたずまいだ。
 宮殿のきらびやかな内装に疲れた目にはちょうどいい。
 だが中に入ってみると、サロン、サロン、サロンの連続。
 おまえら一体何回トランプやれば気が済むんだよ!
ベッドも完備
大トリアノンのサロン
 ベッドの前にサロンとかわけわかんない配置だよ!
 でもこんなテーブルで大貧民とかしてみてぇな。もちろん大貧民席はゴザな。
 で、誰かが革命を起こしたら次はナポレオンに移行しよう。



 続いて小トリアノンへ向かう。
 わりと近くにある、さらにこじんまりとした離宮だ。
 堅苦しい宮廷生活から逃れるという意味では、小トリアノンは少しはマシに機能しているように見える。ちょっと高級めのホテルって感じの豪華さで、まあ一般人でも生活はできよう。
 正直大トリアノンでは暮らせそうにない。

 また、ここはベルサイユ宮殿とはまた違う意味でスゴイ庭園があることで有名だ。
Temple de l'Amour
愛の神殿が見えてきた
 こ、ここでアントワネットとフェルゼンがヨロシクやってたのか…!
 やっと、やっとこの場所にたどり着くことができた!

 突然アレな話になるが、当時の貴族たちは、アレを催したら近くの草むらで用を足していたというのは有名な話だ。
 つまりこの近辺には、かなりの確率でアントワネットのアレが染み込んでいる部分があるハズ!
 僕は、日本からはるばるアントワネットのアレを探しにここまで来たのだ!
 しかもここは愛の神殿、場合によってはフェルゼンのアレだってソレかもしれない!

 「じゃあオスカル様のもあるかもしれないですね」

 バカッ!オスカル様はうんことかしねえよ!!(急進的ファンタジー派)



 カンと鼻を利かせながら奥のほうへ歩くこと数分。
 見えてきました、かわいらしい家々が。
Le Hameau
ル・アモー村
 アントワネットは、小トリアノンの庭に偽物の農村を作らせ、そこで農婦ごっこをしていたという。
 まさしく退廃の極み。
 池にはカモが泳ぎ、岸辺にはカモが歩き、木陰ではカモも休んで…カモ多いなー!!  繁殖しすぎてるよ!

 カボチャ畑を横切って、ブドウ畑のアーチをくぐる。
 あんどう君がやや遅れてついてきた。

 「これすごい酸っぱい」

 ブドウ食うなー!
アントワネットかフェルゼンのアレを含む石
こ、この石だ…!
 身を隠すにはすごいうってつけの木があり、その根元あたりで怪しい石を発見。
 間違いない、僕のカンがそう告げているぜ。
 この石こそアントワネットのアレを含んだ石だぜ!
 いや、これはフェルゼンかも…!
 ひょっとしたらアレ以上に口に出しては言えないソレも含んでいるかも!

 …。
 …僕は…
 何をやってるんだろう…

 冷静になってちょっとテンションが下がったところで、ベルサイユ宮殿方面へ戻った。
 バスが混んでたので徒歩で。

 若干混んでても乗ればよかった…!
 ルイ14世め…!!



 死ぬほど歩いたベルサイユを後にして、バスで再びパリ市内へ。
 続いてはアントワネットが投獄された牢獄、コンシェルジュリーを見に行く。
 目的地はパリ中心部、セーヌ川の真ん中に浮かぶシテ島だ。

 だがその前に、あんどう君いわく、日が高いうちに見たいものがあるという。
 サント・シャペルという教会で、コンシェルジュリーのすぐそばにある。
 ここはすごいステンドグラスで有名らしい。

 ステンドグラス?別に興味ねぇなぁ…
部分
クリックで縮小
 ってウボォー!なんだこれー!
 侮っていた…甘く見ていた…うかつだったァー!!
 どっち向いてもコレだよ参ったよー!

 まったくこりゃあ暗くなる前に行って正解だったぜ。



 余韻覚めやらぬまま、コンシェルジュリーへ向かう。
 入り口が地味すぎてちょっと迷った。さすが監獄。
Conciergerie
コンシェルジュリー内部
 重苦しい雰囲気…
 ルイ15世の妾であり、ベルサイユがたいへんな人だったので勝ち誇ったデュ・バリー夫人、たいへんな人だったので屈辱をうけたアントワネット、革命家サン・ジュスト、ロベスピエールなど『ベルサイユのばら』でおなじみの面々がその最期の時を過ごした監獄だ。
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。
 いままで見てきた華やかさとはまったく逆方向の、負の空気を感じる。

 アントワネットの独房を再現した部屋には、貧相な机と椅子、ついたてくらいしか置いていなかった。
 でもここの人々はアントワネットにやさしく接してくれたんだよね。
 やさしすぎて逆に投獄されるくらい。

 ここに投獄された人の肖像画が飾ってある部屋があったけど、ロべスピエールには専用のコーナーが用意されていた。さすがのネームバリューだと思った。



 アントワネットの光と影を見出す旅も終わり、あとはあんどう君に任せることにする。
 シテ島まで来たならやっぱりコレは見ておかないと、というか、勝手に見えるくらいでかいけど。
Notre-Dame de Paris
ノートルダム大聖堂
 写真におさまりきらないデカさ!
 クリックすると人間が登ってるのがかろうじてわかるよ!
 あそこまで登ればガルグイユの像が見られたわけだけど、ルイ14世にめちゃくちゃ歩かされた僕らは登るのを体力的にスカッと断念した。
 ここもむちゃくちゃ大きなステンドグラスがあったけど、こんな近くで張り合ってどうするつもりなんだろう。
 あと、とにかくびっしりと彫刻が彫ってあったのが圧倒的。中にはスペースの関係上エコノミークラスに押し込められた聖人もいた。かわいそうに。

 しかしとにかくでかい。
 地震がない地域だからって油断してるよこいつらー…地震のこと考えたら絶対建てられないよこんなのー…。



 日が徐々に傾いてきた。
 おなかもすいてきてディナーにしたいところだけど、どうにも日が高くて明るいので、全然ご飯っていう気になれないのがパリの罠だ。
 なのでまずはカフェに入ることにした。
The Editer 内部
その名もズバリ「編集者」
 変わったカフェー!
 内装は本棚だらけ!地震がないからって油断してるな!
 でも編集者たるもの、これはたまらない空間だ!そのへんのおっさんが読んでるのが校正とかだったら超カッコイイが今日は日曜であった。

 サンジェルマンデプレ教会のあたりを散策する。
 教会の正面には、有名なカフェ「ドゥ・マゴ」がある。
 ジョジョ4部に出てくるカフェとは関係ないが、やはり何か「グッ」と来るものがあるぜ。



 まだ外は明るいが、いいかげんお腹が空いたので、レストランでムール貝料理を頂く。
 食前酒にキールを注文した。

 パリジャン達は、店に入ったらまずこのキールを注文するのだとか。
 いわゆる「とりあえずキール」なのだろう。
 ここは是非そのルールに従ってみたい。

 でも、それがいけなかった。

 ビールよりやや強いキール。
 それは僕をノックアウトするに十分な威力だった。
 いかん。
 酔った。
 疲れた。
 眠い。

 …。
 どこへ連れて行くんだあんどう君…。

 メトロに乗って…降りて…
 なんか坂道を登ったり下りたり…
 ああ外はもう真っ暗だな…
 これはケーブルカー…?
 メトロの切符で乗れる…?

 あ、てっぺんまで来た。
 なんだこの建物は、サクレ・クール聖堂?
 え?後ろ?
例によって撮るのに苦労したぜ
パリの夜景ッ!
 うおあー!こんなスポットがあったのかー!
 なんか夜景すら落ち着いた感じで、日本の夜景とは印象が全然違う!
 モンマルトルの丘の上に建つサクレ・クール聖堂。
 その前の階段には、ギターをもった人を中心に、たくさんの人がビートルズを歌っていた。
 ああ、これは『Hey Jude』だ。

 らー らーらー らららっらー
 らららっらー へーいじゅー


 ここだけは参加できたよ!!
 なんか、すごく、平和って感じ。
 日曜の夜に夜景を見に来た人たちが一つになってるんだ。



 諸行無常を目の当たりにしてきた一日だったけど、
 この歌声だけは永遠に変わりなくここに響いていますように!
 
【よっかめ】さようならパリジェンヌ
 あっという間に最終日になってしまった。
 今日は主に、お土産その他の買い物に費やすのだ。

 ホテルをたどたどしくチェックアウトし、夕方まで荷物を預かってもらう。
 荷物を預かっていただけますか?くらいは英語で言える自分を発見した。

 本当はナポレオンの墓・アンヴァリッドにある、軍事博物館を覗いてみたかったけど…雨がひどかったので断念した。
 ホテルから出るときは降ってなかったのに、メトロに乗るころには急に土砂降りだ。しかも周辺(駅構内含む)で傘らしきものが全然売ってない!
 くそっ!昨夜モンマルトルの土産物屋で折りたたみ傘があったのに!
 泥酔しててスルーしちゃったよ!
 こりゃとにかくオペラ・ガルニエのほうに行って傘を買わないと。



 というわけで逃げるように有名デパート・ギャラリーラファイエットに入り込んだ僕たちは、まず紅茶やクッキーなどのお土産品を購入した後、近くのカバン屋さんで無駄にカッコイイ傘を手に入れましたとさ。

 さてお次は、ポンピドゥー芸術文化センター!
 ここはとにかく変なものがいっぱいあるところだ。
 建物も無駄にレトロフューチャーで、パリの街の雰囲気からするとスゴイ浮いてる。
 ここは美術館なんだけど、今日はあんまり時間の余裕もないので、そこのてっぺんのレストランで昼食だけとることにした。

 おー眺めがいいなあ…ってアレ?
しかも一面が銀色
バラ刺さってるー!
 しかも全テーブルに一輪ずつ!意味わかんねぇ!
 本当にヘンなところだな!

 しかしこのポンピドゥーっていうのは、大統領の名前らしい。
 シャルル・ド・ゴールもそうだけど、施設に次々と過去の政治家の名前がついていくんだそうな。

 「日本の総理大臣も、なんかの施設の名前になっていったらいいのにね」
 「橋本龍太郎空港とか、小渕図書館とか?」
 「小泉劇場とか」
 「うまい事言われた…」



 ヘンなところのヘンな空気を満喫したところで、土産物を見つつ、次の目的地へ。
 フランス有数の大型ブックチェーン、FNACに立ち寄るのだ。
 ふなっくっていう響きがナイス。

 もちろんお土産に買っていくのは、MANGAのコーナーにある本さ!
 すげえぜ日本の文化。
 スペースは小さいが、わりと最近の漫画も揃ってるぜ。
 中には「警視庁24時」とか「Go West!」とか、知られざる名作も混じっていた。いったいどういう経緯でフランスへやってきたのだ!

 買うならとりあえずJOJOとー…KENSHIN Le Vagabondかな!

 「LE DRAGON QUI S'ENROULE,KOGARASHI!!! TSUMUJI!!! ARASHI!!!!」
 「IL L'A EU! HOMURA-DAMA!!」

 ムッシューシシオー!
 ジャンプ史に残る名バトルですねこれは。

 フランスで立派にやっている日本文化を確かめて、レジへ。
 ボンジューとメルシーが言えればレジでは不自由しないということがわかったので、もう一人でもお買い物ができてしまう。素晴らしい。
 でも、いつだって馴染んできたところで、タイムリミットはやってくるのだ。



 ホテルで預かってもらった荷物を回収したら、もうあとはオペラ前から空港行きのバスに乗るだけ。
 短かったけれど、今までで一番充実した夏休みだった。
 さようならパリ、さようならフランス!
 そしてまたしばらくさようなら、あんどう君!
 4日間にわたってガイドしてくれてありがとう!
 もうあなたは立派なパリジェンヌよ!
出国ゲート
オルボァー!
 出国手続きをすませ、エコノミークラスの列に並ぶ。
 来るときはあんなに手間取ったように感じたのに、帰るとなるとあっという間だ。
 寂しくて、ちょっと感傷的になりながら、搭乗券を機械に突っ込む。

 ピーという電子音。
 歩み寄ってくるスタッフ。

 「申し訳ありません、エコノミークラスの人数がいっぱいになってしまいまして、お客様の搭乗券をビジネスクラスにアップグレードさせていただきます」



 な、なんだってぇー!!
生きもの地球奇行・フランス編 Fin.