このあたりではつねに「トリニティ・タワー・ラジオ」という無線が入っていて、それを聴くとどうやら誰かがトリニティタワーというビルからSOSを出しているということがわかる。見るからにスーパーミュータントの巣窟である。雇用したバイオレンスガール・ケイトさんの具合を見るにはちょうどいいかもしれない。正面突破だ!
ケイトさんの特技は解錠である。俺には不可能なMASTERレベルの鍵も開けてしまう。ただ難しい鍵だと、自信マンマンのくせにヘアピンを何本も折りながら「くそっ」「イライラする」とか声が漏れているので見ていておもしろい。(あと金庫の中に手が食い込んでいる。)
上階にはフィストという名前つきのスパミュがおり、ガトリングガンを連射してきて非常にやっかいだった。ライト・オーソリティでゲージをためて、オーバーシアー・ガーディアンのクリティカルを頭にたたき込むことを繰り返して優先的に倒した。油断ならぬ強敵であった……。
残ったほかのスパミュたちを倒していると、上階から再びガトリングの砲火が飛び出すのが見えた。マジかよガトリング持ちの奴がまだいたのか。殺すべし! 俺は決断的に階段を駆け上った!
だがそこに立っていたのはケイトさんだった! お前かーい! 敵の武器を略取して大暴れとはバイオレンスガールすぎるだろうが! 重いアーマーを装備させてなかったせいでほぼコマンドーだよこの人! ちなみにこのあとなんか「なぜ見返りもなくあたしなんかに優しくする……?」みたいな話をしてきた。別に優しくはしてねえよ……100%敵だと思って急行しただけだっつーの。
最上階にはレックスさんという男が捕らえられていた。この男、シェイクスピアの朗読によってスーパーミュータントを文明化すべくこの地にやってきたらしい。狂人か。生きているのが不思議なくらいだ。……と思ったら、監禁部屋の奥にはもう一人……スーパーミュータントがいた。
ストロングと名乗るこのスーパーミュータント、どうやらシェイクスピアに感化されてレックスさんを庇いこの有様らしい。「人間の力の秘密を『マクベス』から学んだ」とか言ってる。狂人か。だが狂人の狂人は味方かもしれない。脱出の手助けをすることになったが乱戦になるとこいつ敵と区別つかないな。
これだけ狂人が揃うと負ける気がしない。トリニティタワー陥落!
ストロングは強い奴ならスパミュでも人間でもいいらしく同行を申し出てきた。レックスさんは勝手に自分の放送局に帰っていった。えっどうしよう……さすがにスーパーミュータントを連れ歩くのはまだ心の準備が……そういえばハングマンズ・アリーっていうスラム街を改装した居住地が空いてるからあそこに住むといいよ……。
ハングマンズ・アリーでは、布袋をかぶったグール入植者がひとりでこじんまりと農作業をしている。ストロングはさっそくそこでスープをかき混ぜなからなんか暴力的な独り言をつぶやいていた。グールはそのそばでヌードルを食っていた。意図せずオモシロ居住地を作ってしまったか……じゃ僕はこれで……。
このあたりのラジオには他に「シルバー・シュラウド・ラジオ」というのがある。どうやらヒーロー番組を垂れ流しているラジオ局のようで、選局するとやかましい。
以前B.O.S.のお手伝いで漫画出版社の廃墟にお邪魔したときに、そこにあったシルバーシュラウドの衣装を手に取ったところ、レアものだったらしく手放せなくなってしまった。これはしかるべきマニアに譲るべき品……そういえば「メモリー・デン」にこのラジオを流してる本人がいるらしい。マニアに違いない。そいつに衣装を譲りにいこう。
……とその前に、ストロングを居住地においてきて一人になったので、またケイトさんかキュリーを連れてこようと思ったが、ふと思い立ってマクレディさんに声をかけた。理由は単純で「こういうの好きそうだから」だ。やっぱりヒーローは男の子のものだぜ! こうして俺とマクレディさんはグッドネイバーに向かった。
放送していたのは、ケントという少年のようなしゃべり方をするグールだった。彼はシルバーシュラウドのマニアであり、この荒廃したグッドネイバーを世直しするヒーローの存在を待ちわびていたという。この衣装を着て、俺に世直しをしろというのだ。なぜ俺が? と聞いたら「僕をバカにしないで衣装を取ってきてくれたから」という。いや衣装を手に入れたのは偶然なんだ信じてくれ、拙者オタクではござらぬゆえ! ……そして数分後!
「ドーモ、シルバーシュラウドです」
なんてことだ……この高揚感! これがコスプレか! 俺はシルバーシュラウドというものを完全理解している。再現し切っている! 俺がシルバーシュラウドなのだ! アーマード服ほどじゃないけど、この服なにげに強いな。……ところでマクレディ君、キミはなぜふつうの格好をしているのかね? 同じ出版社で拾った別の漫画のヒーローの衣装があるので着替えたまえ。
よかったな!「グロッグナック・ザ・バーバリアン」だってよ! 似合ってるぜハハハ!(注:マクレディさんは選択肢に反応しているだけで別に服装に対して喜んでいるわけではありません)
こうして荒廃したスラム街に二人だけのコスプレパーティが誕生した。道行く人が「それって子供番組の衣装だろ……? クスクス」みたいに煽ってくるのがつらい。いや……違う! シルバーシュラウドは核戦争で失われた! 俺こそがシルバーシュラウドなのだ!
スレイする対象はケントがシルバー・シュラウド・ラジオで連絡してくる。最初のターゲットはチンケな殺し屋ウェイン。マップ上のポイントはずいぶん遠くに見えるためちょっと迷ったが、悪人はグッドネイバー内のホテル裏にいた。
「ドーモ、ウェイン=サン。シルバーシュラウドです」
「なんだそのおかしな服は?」
「レイダー……殺すべし!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」オジギ完了からわずか0.1秒! 必殺の非人道兵器、猛烈なパワーフィストを装着してのポン・パンチである! 体勢を崩すウェイン!「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!サヨナラ!!」
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裏通りに降り注ぐ重金属酸性雨がトレンチコートの表面をなでる。次のターゲットは、子供にまでヤクを売りさばくという麻薬バイヤー。吐き気をもよおす邪悪とは……なにも知らぬ無知なるものを利用する事だ……。「相手が一人だと思うな」と隣のバーバリアンが警告する。望むところだ。
「ドーモ、AJ=サン。シルバーシュラウドです」
「ちくしょう。ケントがやらせてるんだろ? 50キャップ払うから黙っててくれ」
「そのキャップはジゴクで使うがいい……麻薬バイヤー殺すべし!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」ボディガードたちがトリガーを引く前にパワーフィストのサイバネ機構が起動し、鋭利な爪が腹に突き刺さる! さらに!「イイイヤーッ!」BRATATATATA! シルバーシュラウドが懐に隠していたスプレー・アンドプレイが火を噴き、AJたちの両足を粉砕! なんたるゴア! おお……ブッダよ! これもマッポーの世の一側面だというのですか! 「グワーッ! サヨナラ!!」
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「シュラウドは絶対に悪者の居場所を突き止めるよ!」ケントのラジオが正義の執行者が現れたことを宣伝する。次なるターゲットはウェインとつるんでいた殺し屋ケンドラ。シルバーシュラウドとバーバリアンはグッドネイバーを離れ、近隣にある隠れ家を油断なくクリアリングした。
「ドーモ、ケンドラ=サン。シルバーシュラウドです」
「そんな服を着て頭は大丈夫?」
「自分の頭部の心配をするがいい。レイダー殺すべし!」
「ウェインのかたきだよ!」BLAM! ナムサン! ケンドラのショットガンが一瞬ハヤイ! 先ほどウカツにも地雷を解除しそこねたのが効いているのか! だがシルバーシュラウドの装束がかろうじてネギトロ死を防いだ!「スゥーッ……ハァーッ……」スティムパックでみるみるうちに傷が塞がっていく! 「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」……
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「今まで殺した下っ端たちはみな同じくそったれに属している。そしてそのくそったれが古くさい復讐を計画している」グッドネイバー市長ハンコックは低い声で言った。シンジンという強大なレイダーのボス……そしてその腹心である2人の手下。前門のタイガー、後門のバッファローか。ならば向こうの計画が整うまえに、どちらもカラテで打ち破るのみ。
「イヤーッ!」「グワーッ!」カラテストレート殺!
「イヤーッ!」「アバーッ!」密着レーザー殺!
自らのカラテの不足を数に頼る未熟者たちに明日はない。だがこうして2人を殺して回っているうちに、「メモリー・デン」が襲撃され、ケント自身がシンジンの手に落ちてしまった。なんたるウカツ! 走れ! シルバーシュラウド! 走れ!
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「ドーモ、シンジン=サン。シルバーシュラウドです」
「止まれ、くそったれ。それ以上近づくとケントの頭の中身を見ることになるぞ」
「無垢なる子どもの後ろに隠れる臆病者め。ハイクを詠め」
「そんな風に喋るんじゃねえ! シュラウドはただの人間だ!」
「私がシュラウドでないとなぜ言える? ここにいるのはシュラウドなのだ!」
捕らえられたケントの後頭部にシンジンの銃口が押しつけられる。悪党め、私のピストルカラテでサンズ・リバーを渡るがいい! これはッ! このマグナムはッ! おまえらとは無関係の殺し屋が我が妻を殺すのに使ったマグナムだァーッてあれ?あっケント撃たれて死ん……まってまって今の無し!!
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「ドーモ、シンジン=サン。シルバーシュラウドです」
「止まれ、くそったれ。それ以上近づくとケントの頭の中身を見ることになるぞ」
……猶予は一瞬。火力は不足。しかし私は正義の担い手、救出をあきらめるわけにはいかぬ。あれだ……あれしかない。シルバーシュラウドはカクゴを決め、温存していた危険薬物サイコジェットを吸引した。……遥かに良い! シルバーシュラウドは震え、口元に笑みをうかべた。ニューロンが目覚め、時間が鈍化する!
「イヤーッ!」BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!?」通常ではなし得ない速度のエイムでオーバーシアー・ガーディアンのヘッドショットが決まる! さらにヌカコーラ・クアンタムの瓶をあおり……おお、ゴウランガ! 一方的な連続VATS銃撃である!「イイイヤアアアーッ!!」BLAMBLAMBLAM!
「サヨナラ!」シンジンは爆発四散!「フゥーッ……」薬物の影響から脱したシルバーシュラウドは静かにザンシンした。
ケントは知ったであろう。このマッポーの世で、力なき正義はいたずらに争いをまねくだけであることを。グッドネイバー市長ハンコックは知ったであろう。カラテはエゴであるが、それを正義のために執行するものがいることを。サラバ! シルバーシュラウド! ……あっマクレディ君それもう着替えていいよ。はい解散!
次回へ続く!