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◆不定期日記ログ◆

■2023-11-14
洗ってない米のはなし
 もしかしてなんですが、もう若い衆は「米をとぐ」って言わない……?


 店頭で無洗米の「洗わずに炊ける」という表示を見た俺は、米とぎについての認識を新たにせざるをえなかった。なんと一部の家庭科の教科書も「米を洗う」という言い方をしている。
 どうやらもう米は「とぐ」ものから「洗う」ものに変わってきているようだ。「米をとぐ」って言う人はもう「チャンネルを回す」とか言うおじいちゃんとなってしまうのだろうか。

 原因として一番の心当たりはこの「無洗米」の登場である。
 いやまて、だいたい何だよ「無洗米」って……字面だけ見たら「洗ってない米」で意味がまったく逆じゃねえかよォ~~ッ!!

 「無人島」はわかる。無人島は人が無い島だ。だが「無洗米」っていうのは洗うという行為がなされていないのか、なさなくてよいのか、これがわからない。
 この謎のネーミングのせいで「米を洗う」が発生したのだとしたらちょっと黙ってはいられない。というわけで俺は直ちに無洗米を開発している東洋精米機製作所へと向かった! 電子的に。
 そこで俺は無洗米開発者である雜賀慶二氏の想いを知った。
 そもそもの発端が「とぐのが面倒だから」でなく「とぎ汁による水質汚染をなくしたい」というモチベーションだったのだ。
 それゆえ雜賀氏は最初に開発された「瞬間的に米を水洗いして乾かす」という方法を却下し、最終的に「洗わずにぬかでぬかを削る」という方法をで無洗米を商品化したのである。

 じゃあ最初の瞬間的に水洗いするやつは「既洗米」だったのか? ……それはこの資料からはわからない。洗わずにぬかを落としたものを「BG無洗米」と区別していることから、おそらくそれはないだろう。ただ、開発者が「洗ってないこと」に強い意義を見いだしたということは理解できた。それならばもう「無洗米」と呼ぶしかない。

 実際のところ、精米技術の発達で、今では無洗米でない米だって、そう念入りにとがずとも数回洗うだけでおいしく食べられるようになってきている。
 そのうち無洗米のような炊き方が標準となり、念入りにとぐべき特殊な米だけが「とぐ必要のある米」という意味のレトロニムになるであろう。なので「無洗米」という言葉をどうにかしようという行為も、「米はとぐか洗うか」という議論も無駄である。日進月歩のテクノロジーに振り落とされるな。