居住地拡大作戦は、廃駅のグールを数体撃っただけで終了した。その後、先にキャッスルに戻らせておいたガービーさんを追いかけて報告すると、インスティチュートがキャッスルを狙っているという情報が入ったところだった。あいつらも直近の驚異であるB.O.S.でなくこっちを潰しにくるとは、兵法ってもんがわかってないな。ちなみに表情が見えないと気持ち悪いので、ガービーさんにはアーマーを替えてもらいました。
襲撃はすぐに始まった。第一波は正面から来た……っぽかったんだが、俺のミニッツメン・プライムがサーチアンドデストロイしたので敵の姿を見る前に終わった。そのあとも来ていたのかもしれないが、正面から来る奴は瞬時に灰になるので不明。さすがプライム! スゴイぞー! カッコいいぞー! でも瞬殺すぎてキャプが撮影できないぞー!
第二波以降は南の裏口側から。こちらは城壁の上からケイトさんがアッシュメイカーをアホほど撃ちまくっていてジゴクの黙示録と化していた。裏口前ではパワーアーマーを着たガービーさんがスーパースレッジを振り回し、並みいる雑兵を次々と破壊していく。ケイトさんのフレンドリーファイアを背に受けながら。
第何波か判別できなくなったころ、今度は城壁の上に人造人間が出現した。乱戦である。こうなるともうVATSに写った敵の足を黙々とガウスライフルで撃ち抜いていくほかない。狙撃兵のマクレディさんが何もないところに銃を向けていると思ったら、ステルス・ジツを使うコーサーが何人か来たようだ。ダンス氏も撃ちまくっているが、見えないので当たってるのかどうかわからない。
しかしいくらジツで誤魔化しても結局はカラテが物を言うのだ。ステルス・ジツの切れたコーサーは、前からケイトさんのアッシュメイカー、横からガービーさんのハンマー殴打、そして後ろから俺のスプレーアンドプレイを受けて、時代劇の大物悪役のように崩れ去った。痛ーッ! ケイトさん躊躇せずこっち向けて撃ってくるんだもんなー!
イクサは終わった。武器庫の強ババアことロニーさんは「今度は逆の足を蹴っ飛ばしてやりたいね」と強気の発言。ちょうどそのときガービーさんにスタージェスさんからの通信が入り、インスティチュートに侵入する方法がわかったという。逆襲だ。話が早い。よそ見ばっかりしてるBOSやインスとは訳が違う。襲撃を受けてそのまま敵拠点を殲滅しにいくイーグレットツアーマリーナ住民のように、我々もこのまま一気にインスを叩くべし。
スタージェスさんの作戦はこうだ。まず俺が川からインスの下水管出口に潜り込む。下水管のセキュリティをなんとかして、下水を遡上。その後なんとかしてインス内端末までたどり着けたら、スタージェスさんの不思議なプログラムによってミニッツメンを内部に転送する……か。なんか大事なところがフワッフワしてない? 何人くらい転送できるの? 正気? まあやるけどさ。
カワイイX-10を装着し、チャールズ川に飛び込む。濁った川の底で下水管を探すのにちょっと苦労したが、わざとらしく赤い水草が密集しているところをよく見たらあった。奥に進んで水から上がり、キーパッドを叩くと下水管の金網が外れた音がしたので、さらに奥へ。
クッソ痛いレーザータレットやフェラルグール、そして下水を管理する人造人間を処理しながらどんどん進む。……外部から遮断されていたのになぜフェラルグールが……? つまりインス内部でもグールは発生するのか……? そのうち下水ゾーンは工場めいたゾーンに変わり、そして最初にインスにテレポートしたときの部屋へと繋がった。
端末にホロテープを刺して、スタージェスさんの謎のプログラムを走らせる。通信が始まり、スタージェスさん、ガービーさん、そしてミニッツメン民兵2名が転送されてきた。あのとき俺はBOSの技術力でようやくここにたどり着いたというのに、わずか数日で転送テクノロジーをマスターするとかいったい何なんだこの技術力……。
スタージェスさんはこの仮の出入り口を守り、他4名で奥へ進撃することになった。まさかインスもこんなカジュアルな格好したやつらに攻めこまれるとは思っていなかっただろう。今すぐ民兵に武器を配りたいがそれはできないようだ。防衛のため追加で民兵が転送されてきた。このぶんだとスタージェスさんを武装させとくことはなかったかな。それより結局ガービーさんがパーティメンバー扱いでないなら、パイパーさんあたりを従軍記者として連れてくればよかったか。
エレベーターは当然止まっているが、近くの扉がロボット工場へ繋がっていたのでそちらに進軍。目指すは地下のリアクターである。相変わらずレーザータレットがめちゃくちゃ痛い。人造人間のレーザーとは比較にならない。タレットを最優先に叩かないと、俺はともかくとして民兵が持たない。まさかこいつら、死んだら次の民兵が屍を乗り越えてやってくる仕組みか……?
ロボット工場はバイオサイエンス部門に繋がっていた。以前バイオゴリラを始末しておいて良かった。向かってくる人造人間を処理し、逃げていく科学者は無視する。この場所を逃れたとしても、カラテのない彼らがマッポーの世で生きていくことは難しいだろう。死ぬ前に俺の村にたどり着けたら仕事と寝床をくれてやるがね!
ロビーはやっぱり激戦区となった。ここでようやくステルス・ジツを使うコーサーが襲ってきた。ステルスされるとVATSで撃てないため普段は逃げるしかないが、今回はその対策としてハンマーを振り回すアーマーガービーを用意している。ガービーさんが透明な何かを殴りまくっているうちに、俺は遠くの人造人間の手足を狙撃しまくるという作戦で乗りきった。そういえばコーサー以外で第三世代の人造人間を見ないな……反乱を企てていた連中はこの機に乗じたのだろうか。
ロビーを制したものの、どこもかしこも施錠されており進めない。そのうちスタージェスさんがリアクターへつながる扉を割り出した。開けるには管理者の端末が必要……つまりファーザーの。俺は最初にここに来たときのルートを思いだし、地下からファーザーの部屋に向かった。
[[ 警告:ここから先にはミニッツメンルートの結末が記されている。プレイする予定のある人は
このセクションを読みとばすことを推奨。 ]]
ファーザーの端末を触ろうとすると背後から声がした。いたのかお前……完全に見落としていた。病の進行か、もはやベッドに横になっていることしかできないようだ。
ファーザーは、この残虐行為にどんな大義名分をくっつけるつもりかと、失望しつくした口調でこちらを非難する。大義名分? 正当化? そんなものはブルシットだ。カラテはエゴよ。俺は自分の持つカラテを振るいたいように振るっただけのこと。
さらに、後悔しているのかそれともほくそえんでいるのか、本心はどちらなのかと聞くファーザー。まだわからないようだな……後悔でも、愉悦でもない……人格を持ちながら無責任に投棄されたニックさんや虐げられた人造人間たち、スーパーミュータントの被験者、そして何よりインスの実験に踏みにじられた連邦の人々の怖れと怒りが、今ここに俺を連れてきたのだ!
ショーンはたまたまインスの目的に合致し、命を救われた。そういう例もあるだろう。しかし他のほとんどのウェイストランド人は実験素材としてしか扱われてこなかった。ぶっちゃけ俺もレイダーやガンナーは素材としか思っていないが、その素材を連邦の発展の為に使ったものと、地下深くに貯め込んだものとの違いが、命運を分けたのだ。
だがまあ、病で死を迎えようとしている敗軍の将に辛辣な言葉を投げるのは無益だ。やめよう。今できることは、ファーザーを説得して大半の人造人間を停止させ、無駄な犠牲を減らすことだ。あと避難命令を出すことと、地下リアクターへの扉を開放することだ。ファーザーは観念したかのようにパスワードを呟いた。さらば息子よ、地獄で会おう。
リアクター前では最後の抵抗を試みる連中が立ちはだかる。とくに名前付きの人造人間はコーサーをはるかに越える強さを誇っていた。そして複数のレーザータレット。かなり押されたが、近接武器しか持ってないガービーさんが部屋の中央へと躍り出て集中射撃を受けてくれていたので、俺は淡々と敵の数を減らすことに徹した。
なんとか制圧し、リアクターに爆弾を設置。ガービーさんはもうアーマー全部取れてフレームだけになっていた。よく膝もつかずに殴り続けたな。今のあんたならコンコードのデスクローだって一人で殴り殺せるだろうよ。さあスタージェスさんのところに戻ろう。あとは避難希望者が全員脱出するのを待ってドカンよ。
見ないと思ったら、人造人間のショーンはスタージェスさんに保護されていた。こいつは俺をおびきだすためのルアーにすぎない……が、なぜかこちらをパパと呼んでくる。まさかファーザーが息を引き取り、所有者が俺に移ったのか……? いずれにせよ置いていくわけにはいかない。脱出させといてもらうことにした。
脱出先はマスフュージョンビルの屋上。なんかあからさまな爆破ボタンが用意してある。本当に避難民はみんな脱出したのかな? あとこれ核融合炉が爆発するわけだけど、放射線量大丈夫? いまさら細かいことが気になるが、ここまでやっちゃったんだから気にしたらキリがない。もはや時計の針は戻らないのだ。
こうしてインスティチュートは跡形もなく消え去った。人造人間製造プラントだけでなく、数々の夢のテクノロジーも一緒に塵になった。もし些細なボタンの掛け違いがなかったら、俺がインスを率いて連邦のために歩き出させるような未来もあったかもしれない。でもそれはそれで、別のもっと大きな争いを生むだろう。
てばさき村長たちの戦いは、おわった。
サンクチュアリ・ヒルズ。きれいな水生産プラントの守備隊長スタージェスさんは、あれだけの大仕事をしたにも関わらず、いつものように町を巡回していた。記念に改造したレーザーマスケットをくれた。ジュン・ロング氏はいつもどおり物騒な刃物を持ってぶらぶらしており、それをコズワースが追っている。ママ・マーフィーはクスリをやめた。この町も少しずつ変化している。
パイパーさんは、静かな別荘タフィントン・ボートハウスで今日も記事を書いている。俺がインスティチュートを消滅させたと聞いたらまた取材責めになるだろうか。なおこのあと、我々はダイヤモンドシティ市長のスクープを掴むことになるが、それはまた別のお話……。
ニックさんは相変わらず事件の処理をしている。曲がりなりにも故郷を俺が潰してしまったことになるが、本人はニコニコしていた。インスには答えてほしい質問がたくさんあった。でも、答えが得られなくてもここまでうまくやってこれたんだから同じだと。もう彼はアイデンティティをはっきり持っているのだろう。インス出身者を見つけたら知らせてやろう。
グッドネイバーのハンコック市長は、インス壊滅なんかどこ吹く風で、相変わらず市長室から抜け出してひと暴れしたがっていた。ストロングはハングマンズ・アリーの路地裏で今日も謎のスープを作っている。まあ彼らには関係のない話よな。
キュリーは……もうずっとValut81の医務室の前にいる。残念なことに、コミュMAXでボーナスを貰ってからというもの、彼女はこちらの問いかけに一切反応しなくなってしまった。やはり人造人間化は無茶だったのか。もう彼女のAIを作ったVault-Tec社も、ボディを作ったインスも、この連邦に存在しない。
マクレディさんはキャッスル防衛の任を解かれ、カウンティー・クロッシングの用心棒に戻った。ケイトさんもイーグレット・ツアー・マリーナに帰還した。あの偏屈ババアとケイトさんが仲良くやっててくれてると微笑ましい。
レールロードの皆さんは……俺のインス爆破に乗じて、出来る限りの人造人間を逃がしたんだそうだ。どうせディーコンさんがタレ込んだのだろう。抜け目ない奴。インスがなくなっても人々の人造人間への恐怖は根深いので、今までどおり連邦の外へ逃亡させていくのだという。まあいずれその仕事も終わるだろう。
B.O.S.の人たちは口々に「まさかミニッツメンがインスを潰すとは」「あいつら意外と使えるぞ」みたいなことを言っていた。お前らが寄り道してるからですよ。インスと戦争しに来たのに民兵にトドメさされたら悔しいよなあ。イングラムさんは プリデュエンを飛ばし続けるための冷却材を集めて欲しいと言ってきた。え! まだいるの君たち!?
キャッスルではガービーさんとダンス氏が巡回の任にあたっていた。ダンス氏はまだBOS気分が抜けないようだ。そして保護されたショーンドロイド(今考えた呼称)は、俺にファーザーからのメッセージを預かっていると告げた。この子を幸せにしてやってくれ、とのこと。ファーザーお前、人造人間に自我はないって断言してたじゃないか。あれは自らを騙す嘘だったのか……?
てばさき村長がそのあとどうなったかは、定かではない。人々の間では、機械をいじり回してオリジナルロボット軍団を村に配備してまわっていたとか、恐るべき核融合ジェネレーターを自力で作りあげたとか、はるか海の向こうに旅出ったとか、別の時間軸に向かったとか、支離滅裂な目撃談と噂話が流布している。だがここで筆を置こう。てばさき村長はまだ登り始めたばかりなのだ。この果てしなき世紀末坂を……。
ウェイストランド開拓記 おわり