◆不定期日記ログ◆
- ■2023-04-01
- 交ぜ書きの謎
子どものころ、「破綻」のことを長いこと「ハジョウ」だと思っていた。新聞とかには「破たん」としか書いてないし、「綻」という漢字のどこにタンの要素があるのか納得のいく説明が欲しかった。
とはいえ、「綻」をなぜジョウでなくタンと読むかは考えたってわかるものではない。兵站のタンも蛋白質のタンもなぜタンと読むのかわからないし、「虎視眈々」が「こしちんちん」になってしまうと問題がある。納得するしかない。
さて、この「破たん」のように熟語の一部を開くことを交ぜ書きという。
たとえば「まん延防止」なんかは去年よく見た交ぜ書きである。これは字面がボンヤリとしていて良くない。その点「医療ひっ迫」はなんかドン引きしてる顔が目に浮かぶので効果的で良いと思う。
これらは「蔓」や「逼」が常用漢字表に含まれていないので、こうなっている。
かつて、常用漢字表が当用漢字表であった時代は、この制限がもっと厳しかった。そのため多様な交ぜ書きが生まれた。
たとえば、かつて「拉致」を「ら致」と書く習わしがあったが、これはあまりに読みにくいので2010年に「拉」が常用漢字表に入った。
「拉致」以外で「拉」を常用するのは『闘将!! 拉麺男』の話をするときくらいだが、これが常用漢字に入ったことで「ら致」は「拉致」にすっかり置き換わった。
だが「破たん」は「綻」が常用漢字に入ってもまだ見かける。これはいったいどういうことか。
こういうときに疑うべき要素がある。
「障がい者」の交ぜ書きの例だ。
これはもともと「障碍者」で、1956年に漢字の種類を限定するために国語審議会が書き換えを行ったものである。「碍(さしつかえる)」を「害」に変えたものの、「害」という字のイメージが良くないので本来の「碍」に戻し、常用漢字でないのでひらがなで書いた……と理解している。
つまり……「破綻」も、元はまったく違う難しい漢字だったのではないだろうか?
その可能性を探るべく、取材班は国語審議会の「同音の漢字による書きかえ」を精読した!
そしてやはり本来の字は「破殫」……「殫」の意味は「ことごとく」「つきる」……つまり「やぶれてつきる」という熟語であったことを突き止めた!! 本来の意味を大切にする報道各社は、これを示すために「破たん」を交ぜ書きにし続けているのだ!!
……という話に持って行こうと思ったのだが、書きかえの一覧の中に「破綻」はなかった。だがエイプリルフールなのでせめて力強く嘘情報を断言させてもらった。
AIの躍進でこれからweb上にはもっともらしいデタラメがあふれることになる。上記の出典リンク先を確認した人はこの大嘘にいち早く気づいたであろうし、「当用漢字でない漢字を当用漢字でない漢字に書きかえるのは変なのでは?」という違和感を持った人はその感性を大切にして、デジタルシティズンシップに励んでいただきたい。
「破たん」については、もう残された可能性は「破たんのほうがカワイイだから」しかない。エイプリルフールなので力強く断言しよう。カワイイは全てに優先するぜッ!!
なお「処方せん」の「箋」も同様に常用漢字なのだが、これは「我、薬を処方せむ」……つまり薬局が「処方しよう!」という意味で掲げているのでひらがなのままでよい。よかったですね。
とはいえ、「綻」をなぜジョウでなくタンと読むかは考えたってわかるものではない。兵站のタンも蛋白質のタンもなぜタンと読むのかわからないし、「虎視眈々」が「こしちんちん」になってしまうと問題がある。納得するしかない。
さて、この「破たん」のように熟語の一部を開くことを交ぜ書きという。
たとえば「まん延防止」なんかは去年よく見た交ぜ書きである。これは字面がボンヤリとしていて良くない。その点「医療ひっ迫」はなんかドン引きしてる顔が目に浮かぶので効果的で良いと思う。
これらは「蔓」や「逼」が常用漢字表に含まれていないので、こうなっている。
かつて、常用漢字表が当用漢字表であった時代は、この制限がもっと厳しかった。そのため多様な交ぜ書きが生まれた。
交ぜ書きは、戦後、「当用漢字表」(昭和21年)が定められたことに伴い、表外字を含む漢語を書き表す一つの便法として行われてきたものである。
その後、「当用漢字表」に代わって「常用漢字表」(昭和56年)が定められたが、これは字種の幅を広げるとともに「当用漢字表」の制限的な性格を改めて漢字使用の「目安」としたものであり、また、各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではないことも明記されている。- 文化庁 第20期国語審議会
たとえば、かつて「拉致」を「ら致」と書く習わしがあったが、これはあまりに読みにくいので2010年に「拉」が常用漢字表に入った。
「拉致」以外で「拉」を常用するのは『闘将!! 拉麺男』の話をするときくらいだが、これが常用漢字に入ったことで「ら致」は「拉致」にすっかり置き換わった。
だが「破たん」は「綻」が常用漢字に入ってもまだ見かける。これはいったいどういうことか。
こういうときに疑うべき要素がある。
「障がい者」の交ぜ書きの例だ。
これはもともと「障碍者」で、1956年に漢字の種類を限定するために国語審議会が書き換えを行ったものである。「碍(さしつかえる)」を「害」に変えたものの、「害」という字のイメージが良くないので本来の「碍」に戻し、常用漢字でないのでひらがなで書いた……と理解している。
つまり……「破綻」も、元はまったく違う難しい漢字だったのではないだろうか?
その可能性を探るべく、取材班は国語審議会の「同音の漢字による書きかえ」を精読した!
そしてやはり本来の字は「破殫」……「殫」の意味は「ことごとく」「つきる」……つまり「やぶれてつきる」という熟語であったことを突き止めた!! 本来の意味を大切にする報道各社は、これを示すために「破たん」を交ぜ書きにし続けているのだ!!
……という話に持って行こうと思ったのだが、書きかえの一覧の中に「破綻」はなかった。だがエイプリルフールなのでせめて力強く嘘情報を断言させてもらった。
AIの躍進でこれからweb上にはもっともらしいデタラメがあふれることになる。上記の出典リンク先を確認した人はこの大嘘にいち早く気づいたであろうし、「当用漢字でない漢字を当用漢字でない漢字に書きかえるのは変なのでは?」という違和感を持った人はその感性を大切にして、デジタルシティズンシップに励んでいただきたい。
「破たん」については、もう残された可能性は「破たんのほうがカワイイだから」しかない。エイプリルフールなので力強く断言しよう。カワイイは全てに優先するぜッ!!
なお「処方せん」の「箋」も同様に常用漢字なのだが、これは「我、薬を処方せむ」……つまり薬局が「処方しよう!」という意味で掲げているのでひらがなのままでよい。よかったですね。