◆不定期日記ログ◆
- ■2019-10-01
- 消費者よ神話になれ
「さあ、鹿目まどか……その魂を代価にして、君は何を願う?」
「私……全てのポイントカードを、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、ためて使ってお得な全てのポイントを、この手で!」
「その祈りは……そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない! 資本主義経済そのものに対する反逆だ!」
「鹿目さん。それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの? 製造と営業と、全ての小売店で、あなたは永遠に品質と価格の競争を戦い続けることになるのよ」
「いいんです。そのつもりです。自社ポイントで還元するからお得だなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます。」- 『妄想少女まどか☆マギカ』第12話より
存在が一つ上の領域にシフトして概念に成り果てるくらいポイントカードが嫌いだ。
そのためレジであらゆるポイントカードのポイント付与を断っている。
ドコモをやめた理由の一つに「dポイントを管理するのが嫌だったから」というのがある。勝手に通信料に振り替える設定があればマシだったが、それならポイント還元でなく元々値下げしろと言いたい。だいたい名前が醜悪だ。忌むべきTポイントに似すぎている。毎回レジで「トーキョーのテーポイントですか、デンマークのデーポイントですか」と聞き返すことになるではないか。
モノを買うという行動には、たとえそれが少額であろうが、決断力を消費する。決断力は固定パラメータではなく消費するリソースであるということは何度でも強調しておきたい。(過去日記参照)
日常的な買い物であればルーチンに組み込んでしまえばいいが、そうでない大きめの買い物だとこの決断力消費がのしかかる。価格と価値を吟味するだけでも正解のない迷宮なのに、そこに「この店ではどのポイントがつくか」「今ポイントカードを持っているか」などの余計な変数が加わると、俺の自由な消費行動が著しく阻害される。そして無駄に決断力を消耗し、人生の重要な決断を何ひとつ下せぬままただ老いて死ぬ。そんなのはごめんだ。
政府はそんな俺を狙い撃ちするかのように本日から「軽減税率」と「キャッシュレス決済のポイント還元」という複雑極まりない政策を決行した。ただの増税ならともかく、誰の目から見てもオカシイと思う制度が誰にも止められないまま通ってしまうことは悲しいが、これが現在の民主主義の限界なので嘆いても仕方ない。選挙制度は早く解像度を上げろ。
軽減税率が適用されようが、ポイントが還元されようが、信じた価値が目の前の値札の数字を上回るなら買うし、そうでなければ買わない。そうやって決断力の消耗を防いでいくしかない。
モノを買う時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……
ポイントについては、政府はこのあとさらに「電子マネーによる給与支払いの解禁」という矢を放ってくる。俺はつねづねイオンのアルバイトが最低賃金+WAONポイントで給与を受け取る未来が来るんじゃないかと思っていたが、どうやら思ったよりはるかに早く現実になりそうだ。
――人類がWAONポイントだけで生活するようになって、すでに半世紀が過ぎていた。都市の周りの巨大なイオンモールは地方民の故郷となり、人々はそこで働き、消費し、そして死んでいった。宇宙世紀0079。首都から最も遠いイオンモール「サイド3」は「イオン公国」を名乗り、日本政府に独立戦争を挑んできた――
- 『妄想戦士ガンダム』ナレーションより
そして最終的にはニンジャスレイヤー第4部のようにパワード鎧の胸元に企業通貨で年収を表示させてマウントを取り合うのだ。ここまでいくと逆になんだかワクワクしてきた。