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■2014-11-14 : あいりさんとフェイント
 あいりさんが各種予防接種を受けている近所の小児科で予約ができたので、自分のインフルエンザの予防接種に行った。
 ワイフはすでに受けていたので一人でいくつもりだったが、タイミング悪くあいりさんのアゴの湿疹がひどくなっていたので、ついでに診て貰うようにあいりさんも連れて行った。

 小児科だけあって、待合室には保育園~小学校くらいの子連れの人がほとんどだった。
 あいりさんは最初おとなしくしていたが、いつもひどい目に遭っている診察室の前まで来て、他の子どもの悲鳴を聞くと、絶望のあまり泣き出した。

 今日は針をさされるのは君じゃない、俺だ。

 あいりさんはそれが理解できるわけもなく、ひたすら絶望の叫びをあげていた。
 俺はといえばあいりさんをだっこしたまま、とっとと注射を受けるだけだった。
 「左腕をまくってください」という医師の指示すら聞き取れない大音量で、あいりさんは泣いていた。
 医師と看護師は苦笑いしていた。
 フェイントだと知ったあとも、あいりさんの絶望の叫びは止まらなかった。

 診察室から出てくる俺はただの「娘の予防接種に来た父親」だった。
 本来ならあいりさんが無表情で、俺が号泣する照英みたいな顔をしていたはずだ。
 完全にお株を奪われた形である。

 あいりさんの湿疹の診察は、他の予約者のインフルエンザの予防接種が済んでから、ということになった。
 待合室にいられないくらいあいりさんが泣き叫んでいたので、やむを得ず外で待機させてもらった。
 あいりさんが静まるまで30分くらいそうしていた。
 問診票は戸外で書いた。

 そのうち診察の時間がやってきた。
 診察室の前まで来ると、再び身に迫る危機を察したあいりさんは泣き出した。
 なんたる学習に裏付けされた危機察知能力か。
 一応診察なので、かまわず服を脱がせて身長と体重を測る。
 やっぱり注射だ!!と確信したあいりさんの絶望の叫びは最高潮となった。

 違うっつーの、ちょっとアゴ見せるだけだっつーの。

 診察自体はちょっとアゴを見ただけで、塗り薬を貰って終了となった。
 二度のフェイントを経てあいりさんはすっかり人間不信となったに違いない。
 人生、こういうこともあるのだ。覚えておくがよい。

Quiz-Authentication 2.255

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