新大阪駅周辺の喫茶店でモーニングを嗜んだあと、我々はメトロで大阪城公園へと向かった。このために娘氏にも交通系ICカードを持たせており、子ども料金の切符を買わなくて良いのはとても助かる。
森ノ宮駅から出るともう目の前に大阪城天守閣が……いや目の前かこれ? 思っていたよりだいぶ遠くね??
太閤はんの築いた大阪城は広大であり、当然その跡地である大阪城公園も広大である。大坂夏の陣に参加した足軽たちも、きっとこのへんから天守閣を見て「広すぎんだろ……」と絶望したに違いない。
大阪城公園を散策しながら、大阪城天守閣のチケットをWebで購入する。Googleマップのクチコミによると券売機はツアー客と外国人観光客で長蛇の列になっているらしい。当日でも問題なくWebチケットが買えるので案内してあげたら良いのに。
ようやく天守閣に着く。ここまでの道のりと比較すると天守はだいぶ小さく見えるが、8階建ての大天守である。
昭和のはじめに鉄骨鉄筋コンクリートで再建されたもので、中は博物館になっている。中央に階段とエレベーターがあり、ワンフロアずつ展示品を見ていくことができ……
……なんか造りがすげえ似てるな、
熱海城と……ていうか
ほぼ熱海城だなこれ……地下にゲーセンがあったら完全に熱海城だな……。
これは明らかに熱海城を建設した人が大阪城を参考にしたのであろう。先にあっちを見てしまっていたので、この歴史的名城から急に歴史の重みがすっとんでいってしまったような錯覚を覚える。こちらにはちゃんと歴史的裏付けがあるので……いやどこまで豊臣時代の姿を再建したものなのか知らないので断言はできないけれど……。
娘氏は『ねこねこ日本史』をベースに歴史知識を蓄えており、展示品の意味がだいたいわかっていてすごかった。一方俺は「これ『へうげもの』で見た話だな……」と思っていた。
秀吉が北野天満宮で開いた大茶会が何故か一日で終わってしまったことを語る娘氏と、秀吉の命令で明国の使者をもてなすことになった古田織部がいろいろやる回が白眉であることを語る俺。漫画ベースの知識で見てきたように歴史を語る両名に挟撃されたワイフの心中、察するに余りある。
天守閣を後にし、帰りは公園内を運行するエレクトリックバスに乗って森ノ宮駅付近までファストトラベルした。さすがに脚を温存しておきたい。
15時、ユニバーサルシティ駅に到着。今日は雨雲レーダーで常に「30分後、10mmの雨!!」と脅かされ続けているが、結局そこまで雨は降っていない。
ここで我々はカバンから事前に入手しておいたローブと青いネクタイを出し、娘氏に装備させた。一式を装備した娘氏はどこからどう見ても
レイブンクロー生であり、まさかマグルとはわかるまい。パパも
レイブンクロー生だったので鼻が高い。ここまでしたら
カイミラの杖も持ってくる流れだったが、娘氏的にはヘドウィグのぬいぐるみが優先だったようだ。
Q:ところで娘氏はなんでレイブンクロー生になったの?
A:スリザリン
(野心・狡猾)やハッフルパフ
(勤勉・公平)っぽくはないし、グリフィンドール
(勇気・大胆)かレイブンクロー
(英知・独創)で言えばレイブンクローだから。
入場してすぐ、手はずどおりワイフがニンテンドーワールドのエリア入場整理券を予約する。幸い18時40分の枠で入場できることになった。混雑しているとこの時間にはもう夜まで埋まってしまっていることも珍しくないらしい。怖すぎるな。
我々はまっすぐハリー・ポッターのエリアへ向かった。
ホグズミードの村にはおなじみのお店たちがある。
正直、映画を1周観たくらいではお店の名前までは憶えていなかったはずだが、ありがたいことに『ホグワーツ・レガシー』の時代にもこれらのお店が存在するため、ハニーデュークスからドッグウィード・アンド・デスキャップまで完全におなじみである。良かった。
娘氏はあらゆるお店のキャストさんから「レイブンクローの生徒さんですね、お帰りなさい」と声をかけられていた。当人は「まだ11歳でホグズミードに行く許可が出ていないはず……」と原作準拠の疑問を呈していた。
エリアの最奥部には
ホグワーツ城がそびえ立つ。ここのライドアトラクションが休日とは思えぬほどすいていたので、即決で並んだ。待機列はホグワーツ城の地下を模しており、並んでいる間も退屈させない力強さがあった。
並んでいる途中でダンブルドア校長からのお言葉があり、「中には闇の魔法使いとなってしまったものもおる」と注意されたので、ホグワーツ・レガシーで悪逆の限りを尽くした俺は立ちすくんだが、どうやらトム・リドルとかいう奴のことらしく安心した。
フォービドゥン・ジャーニーは映像を併用した空飛ぶイスで振り回されるライドである。俺はホグワーツ・レガシーでホグワーツ城周辺の地形と空域を把握していたため、自分が今どのへんを飛んでいるのかが完全に理解できた。やはりゲームの力はすごい。映画だけ観ていてはこうはならない。
そのままフライト・オブ・ザ・ヒッポグリフにも並ぶ。こちらは空飛ぶイスと比べて列の進みが遅かった。ヒッポグリフもホグワーツ・レガシーで乗りまくった俺は、ドヤ顔で娘氏に「まずはおじぎをするのだ」とレクチャーするのであった。
こちらは短距離を遠心力で振り回すジェットコースターであった。つまりこのライドこそがローリング……J(ジェット)・K(コースター)・ローリングと言えるだろう。

PIPI
ウワッお留守番してるピピチャンが脳内に直接ッ!!
ひとしきりポッターしたあと、まだ時間がだいぶあるため、我々は他のエリアも見て回ることにした。
これは現在に至るまで数々のサメ映画を生む元凶となったサメの処刑場。お前がいなければシャークトパスもシャークネードも温泉シャークも生まれなかった。全部お前のせいだ。責任を取れ。こうしてこのサメはここに吊られている。
そのままJAWSに並んで、遊覧船に乗ることにした。船長さんがとてもノリノリのお兄さんで、航海中に何があったのかは決して口外しないことを約束したので特に何も書かない。ただ「アミティの市長はクソ」という点では全員の意見が一致するようだった。
ニンテンドーワールドの入場時間が近づいてきたので、ちょっと何か腹に入れておこう。
我々はホグズミードに戻り、パブ「ホッグズヘッド」でなんか食べようとしたが……村のどこを探してもホッグズヘッドがない。薄汚いので取り壊されてしまったのか? パブ「三本の箒」の入口で呼びこみをしているお兄さんにワイフが尋ねると、コロナ禍以降、ホッグズヘッドは三本の箒に併合されたとの答えが返ってきた。世知辛いな。
なので我々は三本の箒で
バタービールと軽食をキメた。バタービールはマズいと聞いていたので警戒していたが、実際のところはバターでもビールでもなく、プリン味の炭酸飲料といった風味でめちゃウマだった。アルコールが入ってるやつだとまた違うのかな。でもハリー君たちが飲んだのもアルコール入ってないハズだから、こっちが原作準拠なんだよな?
18時40分、雨は相変わらず降ったり止んだりを繰り返している。
気合いが入ったところで、我々はいよいよニンテンドーワールドに足を踏み入れた。

あ……!
なんか『将太の寿司』で将太くんが大事なことに気付いたときのような顔とテンションで「あ……!」と言うことしかできなかった。どうもこの光景を現実のものであると魂が認識していないらしい。
エントランスからずっと何らかのマリオシリーズのメインテーマが流れており、何のシリーズなのかわからないままに俺は涙を流していた。知らないマリオシリーズの曲を「マリオっぽい」というだけで泣くのは何らかのバグなので困る。
なお入口でパワーアップバンドを買うことでプレイできるアクティビティがいくつかあるが、今回は時間が限られていることと天候が悪いことから見送った。
ところで娘氏が着ているホグワーツのローブは、こちらではカメックのコスプレをしている形になってしまわないだろうか。心配だ。
さっそく
「マリオカート ~クッパの挑戦状~」に向かう。これはクッパ城エントランス。長い長い待機列の始まりであるが、時間と天候の関係で列はだいぶ短かった。そんなことよりスーパーマリオワールドの砦の音楽が流れている。俺は泣いた。
待機列が始まったものの、列の進みは早い。俺はこのタペストリーを見た瞬間にN64レインボーロードのイントロが脳内に流れ出して泣いた。もう流れていない音楽で泣いているので意味がわからない。
このあとも、操作説明のBGMがエレクトロドリームだったりして細かいところで涙腺を攻撃してくる。内装と音楽が『マリオカート8』準拠なんだけど、これ来月マリオカートワールドが出たらごっそり変わるのかな……変わらないか……?
ライド自体はレール上を進むだけだが、ARゴーグルに出るハンドル操作の指示と、NPCカートに甲羅をぶつけるアクションによって点数を競うゲームになっている。大丈夫かな……マリオを知らない保護者が「甲羅を? ぶつける? 何故??」って引いちゃったりしないかな……。マリオを知らない保護者、こんなところまで来ないか。
最後に得点が表示され、我々の車両ではワイフが圧倒的スコアを獲得しビクトリーした。
(スコア表と手元のスコアが一致しなかったため諸説あり)「本日のハイスコア」を見たらその1.5倍くらいあって笑った。年パス持ちのガチ勢がいるな。
外に出たらもう1時間が経過していた。空が闇に包まれるとマリオ3のワールド8みたいだな……。残念ながらヨッシーとかドンキーとかのアトラクションは入場を終えていたので、あとはお散歩して帰るだけである。
お土産屋さんでもマリオ3の曲が流れており、もうどこに行ってもなんか知ってる曲から逃れることはできない。トイレですらNewスーパーマリオの水中ステージの曲が流れていた。俺は泣いた。
ぽつぽつ帰る人が増える中、来場者にファンサするピーチ姫。雨でもこういうことをしてくれるのはプロ魂である。
最後に夜のホグズミードを見物して帰った。ここに立つたびに場内BGMがフェードアウトしてハリー・ポッターのテーマに変わるよな~~と思ってたけど、もしかしなくてもこれ、すっごい指向性スピーカーでエリアごと違う音楽を流していて、歩いてるといい感じに曲が遷移するよう調節されてるんだな。
考えてみれば当たり前なんだけど、それに気付かせないさりげなさに音響班のワザマエを感じた。
結局10mmの大雨を喰らうことなくユニバを終えることができた。
最後に新大阪で獲得したうまいものの画像を掲載し筆を置こう。
たこ焼きついでに明石焼きに初挑戦した。あまりにふわっふわで、だし汁をかけたらただのたまごスープになってしまった。俺……なんか間違ったか?? まあうまいからいいか……歯列矯正者にも優しいし……。
これはりくろーおじさんのチーズケーキ。チーズケーキが温かいというだけでもう唯一無二の体験であり、スフレかというくらい柔らかいのも凄かった。ただレーズンについてはマジでなんで入っているのか理解できなかった。チーズケーキとそこまでシナジーなくないか?
― 大阪記 fin ―