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試されてHOKKAIDO

Chapter 1 僕にその肉を焼けというのか
 真夏の暑さに耐えかねて、我々一家は北海道へ渡った!
 娘に航空運賃が課せられる前に遠出をしておこうという判断のもと企画された旅行であった。グアム、台北なども候補にあがってはいたが、気候を考えるとどう考えても亜熱帯地方へは行きたくなかった。湿度……それは恐ろしい。高温多湿……それは恐ろしい、恐ろしい(語彙力の死)。
 
 娘氏は初の航空機搭乗となるわけだが、初めて見る航空機の巨体を前に「シンカンセン!」と大喜びしていた。違うぞ。
 離陸時に泣かないか不安だったが、むしろダイナミックな揺れにニッコニコで「ハハッ……ハハッ……」みたいな聞いたことのない笑いをこぼしていた。ある程度上昇するとさかんに「おうちがいっぱーい」とくり返すようになった。この子の語彙でこの高高度を伝えるにはこれしかなかったのだろう。
 揺れによってすぐにねんねするであろうという目論見はあっさりと破られたが、例のPSP Goに書き込んだアンパンマンの力と、機内サービスのりんごジュースの力で耐え抜いた。客室乗務員にいただいたオモチャ(小型の「せんせい」)も役に立った。娘氏は「おえかきだよなー」とわかったふうな供述をしていた。ねんねしたのは着陸20分前くらいだった。

 雨上がりで暮れなずむ新千歳空港に着いた我々を待ち構えていたのは、20℃を割る気温であった。とりあえずすぐ上着を着た。おいおい冷房の設定温度下げすぎじゃねーのー?という感じしかしなかったが空港外はもっと寒かった。レンタカー会社から送迎を受け、借りた車に乗り込んだ我々はやがてカーエアコンを暖房に設定した。本州人の完全なる敗北である。

PGO
 なおレンタカー会社の送迎中、ポケモントレーナーであるTebazakiは、北海道の大自然の無慈悲さに打ちのめされていた。


 さっそく千歳ICから道央自動車道に入ろうと思ったが、ナビが「直進です」と言っているので余裕ぶっこいてキープレフトしていたところ、「左2車線は左折レーン、右端の1車線のみが正解の直進レーン」という交差点の罠にハマってインターに入り損ねた。しかも元の交差点に戻るのに4km以上を要した。北海道怖い。
 紆余曲折あって札幌着。サッポロビール園でジンギスカンを食うつもりでナビにしたがって進んでいたが、ビール園手前で「左折です」と案内されるものの、タクシーがびっしりと繋がっていて左レーンに入ることすらできず、どこから入ったものか初見ではまったく解らなかった。北海道怖い。道路が広いからか、札幌ではけっこうダイナミックな路上駐車が多かった。路駐にやさしい街札幌。
めざせモスクワ
 そんな訳でようやく1日目の目的であるジンギスカンにありつけた。サッポロビール園は昔来たことがあるので肉を焼くのもお手の物だった。二人分でいいかと思ったが、珍しくもう一皿肉を追加する運びとなった。途中で主食の類をまったく摂っていないことに気づきじゃがバターも注文した。ジャガイモは甘かった。

 車で夜の札幌を走る。市街地でも道路は広く走りやすい。そのうち夜空にAPA社長の顔が描かれた看板が見えてきた。APAホテルリゾートは初めて宿泊するが、噂にたがわぬ社長推しであった。ロビーの彫像がポケストップになっているのでポケモントレーナーにやさしい宿である。なぜか札幌にはスリープが多く生息していることがわかった。娘氏は風呂で号泣した。なぜかおかあちゃやん無しで知らない風呂に入れられると泣くのだ。

Chapter 2 誰も峠を攻めることはできない
 朝食は大規模なカンファレンス会場にでもなるんじゃないかというような大広間でのバイキングだった。とりあえず席をとり、まず時間稼ぎのため娘の前にミニトマトを配備してから、順番に食料を調達した。こういうことができるのがバイキング形式のいいところである。娘氏は「マトのおみずがいい」とトマトジュースにハマり「おいしいじゃん」と評していた。

 車を南へ走らせ支笏湖に向かう。すぐに家並みはとぎれ、山林を切り開いてつくられた広く曲がりくねった道になった。気合いの入った自転車マンが散見された。どうやら自転車レースのコースになっているようだ。
 道中ラジオで『おかあさんといっしょ』の『おひさまーち』のオシャレなカバー曲が流れてきたので何事かと思ったら『SMILE mama HOLIDAY』というラジオプログラムだった。他にもキッズソングを多数カバーしており気になったが、残念ながらFM全国ネットの番組ではないらしい。一期一会。そうこうしているうちに車は峠を越え、眼下に湖が見えてきた。

あひるに向かう娘
 支笏湖はその透明度で有名な湖であり、深く透明な湖は驚きの青さを誇っている。ところで支笏湖とツコツコ(げっ歯類)って似てるよね。写真左手に見えるなんか巨大な自爆スイッチみたいなのは樽前山といい、突出しているのは溶岩ドームらしい。自爆どころの話じゃなかった。
 透明度が高いことを活かしてダイビングをしている人たちがいた。普段なら「ウッヒョー涼しそー!」ってなるところだが、晴天にも関わらず「えっ冷たそう……」という感想が先にたつ程度の気温であった。

 せっかく支笏湖に来たので水中観光船に乗る。この船は船体の下部に海底観察用の部屋があり、デッキの席に座って遊覧するだけでなく、下の船室で水中窓から湖の中を観察できることが特徴だ。水中窓は深いところにくると完全にブルースクリーン状態となるが、浅いところでは「柱状節理」とかいう古代遺跡というかコンクリ柱の不法投棄というか、とにかく人工物にしか見えない自然景観が見られる。娘氏は珍しい乗り物に大喜びであった。


 支笏湖を満喫したあとは、来た道をガンガン戻る。途中からナビの正気を疑うような山道に入りかかったが、無事西に進路を変更し、定山渓温泉へと向かった。
 
 温泉街ということで日帰り入浴としゃれ込みたいところだが、あいにく娘氏はまだまだオムツが取れていないので温泉は足湯で精一杯。お昼時なのでとりあえず目的のそば屋を目指した。なぜ旅先で食べるそばはこんなに旨いのか。
 ガイドブックによると共同駐車場とやらがあるようなんだが、どこにあるのか案内がない。なのでそば屋のおばちゃんに聞いて解決した。迷ったときにはメシ食ったところか観光案内所で聞く。カルイザワ適当旅行で培われたノウハウが生きたな。

 車を止めて温泉街を散策した。イオウ臭とかはしないのであまり温泉街っぽくはないが、温泉饅頭は最高に旨かった。日差しは強い。だが日陰は涼しい。やはり本州をジゴクたらしめているのは湿度とかいう奴だったのだ。湿度殺すべし……。この「日陰に入ればセーフ」みたいな感覚、イタリアで感じたのと同じだ。まあ緯度的にはだいたい同じだし。
 定山渓温泉にはあちこちに河童をモチーフにした像がある。なぜ北海道に河童……?まさか屯田兵とともに本州からやってきたのか?アイヌ妖怪は何をしているのだ?いまこそ妖怪大戦争なのではないか?

 ここからいったん札幌に戻るプランも検討していたが、時間が時間なので直接北上し本日の宿泊地・小樽を目指すことにした。定山渓レイクラインはなんかダムの上を通ったりダム湖の縁を通ったりまた別のダムがあったりループ橋があったりしてエキサイティングだった。どうやらここが道道1号線らしい。いいのこんな山ン中が1号線で?じゃあ「道道でドードーを捕まえる」っていうポケモントレーナーTebazakiの夢はどうなっちゃうの?

オタルのホテル
 一区間だけ札樽自動車道(有料)に乗せようとするナビをなだめつつ小樽へイン。ホテルに荷物を置いてベビーカーに娘を搭載し、夕暮れの小樽に乗り出した。
 何故か街には大量のコスプレイヤーが溢れていたが特に気にしないことにした。後で調べてみるとこの日にコスプレイベントがあったらしい。Twitterに「小樽にスプラトゥーンの痛車があった!」という情報が流れてきて、マジかよ小樽市民インクレディブルだなと思ったが、このイベント関係でやってきたってことだったのか。

 メルヘン交差点に向かって小樽の街を歩く。小樽にはガラス工芸のお店がたくさんあるが、ちょっと娘を連れて入店する気にはなれない。仕方ないのでワイフがガラス工芸を見ているあいだ娘と一緒にお留守番していた。おかあちゃやんが視界から消えると娘氏は不安げな表情を隠さない。そのうちメルヘン交差点の蒸気時計が6時のお知らせを噴き出した。娘氏は暖かみのあるボーッっという音を上げる謎の時計を食い入るように見つめていた。やや遅れてルタオ本店の時計台も音楽を奏で始めた。娘氏はわけがわからないという顔で「おおきなとけい……」とつぶやいていた。

 6時を回ったところで閉店するお店がちらほら見え始めた。マジか。開いてるおみやげ屋さんを見て回ってなんとかおみやげを滑り込みで買いそろえた。これらはまとめてホテルから宅配便で本州へたたき込む。続いて海鮮丼のお店も閉店しはじめた。マジか。メルヘン交差点まで向かう道中はあんなに活気があったのに、戻るときには一瞬でシャッター通りに変貌するとは……港町をナメていた……。なんとか営業しているお店を発見しウニ丼やらいくら丼やらを食べることができた。小さい子と一緒だと狭いお店や格調高いお店には入りづらいので「いいもの」を食べるためのハードルが高くて困る。

 こうして小樽の夜は更けていく。娘氏は風呂で号泣した。なぜかおかあちゃやんが目視できる位置にいても知らない風呂に入れられると泣くのだ。

Chapter 3 駆り立てるのは野心と欲望、横たわるのは娘とおともだち
 朝食のバイキングはまた豪華な食材が揃っていた。ただここでお腹いっぱいになってしまうと他の北海道ならではのものが入らないのでセーブしないといけない。娘にはトマトかおいもを取り分けておくのが鉄板だが、チェダーチーズをノーリアクションで食べたのには驚いた。いつも食べてるチージュちゃんと違わない?

 昨日、見たかったけど閉店時間になってしまったお店があったので、札幌に戻る前にそこだけ見ていくことにする。とはいえ開店まではまだ時間があるので、ホテルをチェックアウトし、メルヘン交差点に比較的近い位置の海沿いの公園を訪れて時間をつぶす。

 公園には自転車旅行をしているとおぼしきオッサンたち(オニーサン含む)、そしてワンワンがいた。ワンワンと娘が接触することでコミュニケーションが生まれる。俺の風貌から東南アジア系の人だと思われていたらしく、「いえ日本語で大丈夫ですよ」から始まるよくわからない会話をした。一人は俺と同じ清水の出身だと言っていた。やい~~~おまっちも清水かやァ~~~かっぽれ踊らざぁ~~~って言って本物かどうか鑑定しとけばよかった。


 目的のお店の開店時間がせまってきたので移動。メルヘン交差点の蒸気時計が10時のお知らせをするのを聞きながらやってきたのはキンダーリープというお店である。輸入もののオモチャとかアナログゲームとかを取り扱うお店で、古い倉庫を改装したその見た目以外はほぼ静岡の百町森と同じ雰囲気で、実家のような安心感がある。

 娘氏はプレイアブル展示されていた「LENAモザイクセット」にまんまとハマッた。キノコのような傘のついた小さなペグを、細かい穴のあいたボードに刺しまくるオモチャで、心を無にして延々とキノコを植え続けることができる。なんでもかんでも口に入れる月齢を過ぎれば問題なく遊べよう。これを次の目的地の「献上品」にすることに決めた。
 2階は子どもと保護者が入っておもちゃで遊べるプレイスペースとカフェになっている。プレゼント包装が終わるまでのあいだここに娘を放ってタノシイ時間を過ごした。


 小樽に別れをつげて、札樽自動車道にて札幌へ戻る。横目で白い恋人パークの位置を把握しつつ、少し離れた昼食スポットへ向かった。ここで満を持してのスシである。回転スシとは思えぬ本格的なネタが流れてくることで有名な「根室花まる」は、日曜ゆえに混雑が予想され、それゆえピークタイムを避けて早めに入店した。
 注文を受けるとそれが威勢良く読み上げられ、威勢良く返事が返ってくるのを見て娘氏ニッコニコ、というよくわからない状況。とりあえず食いたいネタはたっくさんあるんだが、なにしろ胃袋の容量は限られているので、ここでしか食えないようなネタのみを注文した。まさか回転スシで苦みのないウニを食べられるとは。最後に汁物を注文したらほぼ鍋かっていうサイズのお皿で出てきたので、満腹度の最大値が2%上がるかと思った。花まるちゃん最高だわ……いま沼津に出店すればきっと繁盛すると思うよ。


 満腹になったところで、先ほど場所をチェックした白い恋人パークへと移動。予定の時間よりやや早いが、時間をつぶすのに困ることはなかろう。

ヘルズエンジェルさん
 2F駐車場から館内へ入るとすぐにヘルズエンジェルさんがお出迎えしてくれる。マハラギダイン!マハラギダイン!ときおり目が光るので及び腰気味の娘氏であった。
 1Fのホールでアメちゃんを買うなどして人を待つ。本日は北海道の旅のゲストとして(いやゲストはどう考えても我々のほうだが)某サチコ様をお迎えしているのである。サチコ様とその息子氏――今は仮にヒロ君としておこう――の活動圏内ここが含まれていると知り、我々はここを集合場所に決めたのであった。

からくり時計塔
 合流した我々は目的もなくローズガーデンに繰り出した。ヒロ君がどんどんミニチュアハウスなどに突入していくさまを娘氏はじっと見ていた。普段のテンションであれば自分も飛び込むところであろうが、わりと人が多いからか気が引けているようだった。工場見学も検討はしたが、小さなお子様が退屈したり展示物にタックルしたりすると困るのでやめた。
 そのうちからくり時計塔が1時を指し、3階部分が開いてカーニバルが始まった。娘氏は食い入るようにそれを見上げていた。3階部分が開いたことで「とけい」と認識する部分が一気に拡張され、この旅いちばんの「おおきいとけい」と化したのである。カーニバルが終了しふたたび3階部分のスライドドアが閉まっていくと「とけいがしまっちゃった!とけいがしまっちゃった!」と熱烈にアンコールを送っていた。その部分は時計じゃないぞ。

 娘氏のテンションが戻ったので「白い恋人鉄道」に乗る。10分ほどのミニSLであるが、トンネルがあったり建物内に入ったりと飽きさせない仕掛けになっている。線路上に、トンネル内に入らないと撮影できない写真のポケストップがあった。札幌のIngressプレイヤー何やってんだ。鉄道は往復するので同じ場所を通るんだけど、ヒロ君は帰りも同じ場所で感動しているので素直だと思った。
 鉄道の発着場のとなりでアイスクリームを買う。白い恋人のホワイトチョコレートが配合されており独特の甘みがある。娘氏はなぜかコーンのほうにご執心だった。次からアイスクリームはカップで買うことにしよう。なおこのお店には「白い恋人チョコレートドリンクフロート」というのもありいわば白い恋人のショコリキサーである。白い恋人の本体はチョコレートクリームなの?
 帰り際に二組の母子の集合写真を撮った。4人全員の視線がカメラに向くという奇跡が起こったが、その完璧な1枚だけ笑っちゃうくらいピントが合ってなかった。泣けるぜ。


 サチコ様のナビゲーションによって、一行は北海道神宮へと車を走らせた。走り始めて数分で、サチコ様は俺の左右盲具合を体感することとなった。「めんどくさいほうが右折」と覚えているので、右折・左折で指示がくれば比較的対応できるが、それも急だと理解できないので指示は早めに頼む。

 北海道神宮は北海道開拓の歴史と分かちがたい神社である。開拓に尽力した人が祀られている開拓神社を擁するのが特徴で、我が静岡県の誇る依田勉三も一柱に数えられている。依田勉三は伊豆から帯広に渡って晩成社をつくり、初めてバターを商品化した人だ。晩成社のロゴである「○に成」のデザインは現在でもマルセイバターサンドに受けつがれている。まさかのマルセイバターサンドと静岡の繋がりよ。

 だがまあそんな強引に郷土を誇りにきたわけではない。ここの境内にある参拝者休憩所で食べられる、六花亭の「判官さま」っていう餅がなんまらうめぇと聞いたからだ。剛毅にも奢っていただき倍うめぇ。基本的にはあんこ餅なんだが、餅が軟らかでそれでいて香ばしく、一瞬で血中アンコ濃度が高まり実際ヤバイ。これは娘にはまだ与えられない……と思ったが、娘氏はヒロ君にその辺で拾った小石を「どうぞー」ってするのに夢中だった。ヒロ君はその辺を走り回るので、「オニーチャン!どこいくのー!まってー!」と言いながらひたすら追いかけていた。そして小石を押しつけていた。ヒロ君は小枝と小石を装備して完全装備となった。たぶん近接用ウェポンと遠距離用ウェポンだな。

 餅だけ食って帰るのも勿体ないので、ちゃんと参拝もしていった。ワイフの観察によると、どうやら我々は鳥居をくぐり損ねたらしい。鳥居なんてどこにあったっけ……まあヒロ君が元気よく走っていってしまうので仕方ないな。参拝後、サチコ様のご厚意により家族写真を撮影してもらったが、見事にヒロ君のケツが写りこんだ上、ヒロ君のほうにフォーカスが行っていてめちゃくちゃ笑った。(もちろんちゃんとしたのも撮れた。)
 北海道神宮にはポケモンジムがある。神社はわりとポケモンGOに塩対応と聞いたがここはそうでもないようで、頻繁にジムリーダーが変わっていた。サチコ様と同じ陣営なので協力戦で落とせばよかった。なおポケモントレーナーTebazakiは微課金トレーナーであるはずのサチコ様のアイテム所持数が600以上に拡張されていることを知り驚愕した。アイエエエ……ジム落として10円でしょ……でバッグ拡張が200円で……アイエエエ……。

 続いてサチコ様オススメのアイスクリーム屋・BARNES(バーンズ)へ移動。おいおーいアイスクリームはさっき食ったでしょうがーと言いたいところだが全然違った。生クリームみたいな味がした。牧場で食べられるようなやつともちょっと違う、まさにそれは「乳」であった。なるほどこれはなんまらうめぇやつだ。お店もオシャレだった。
 さて、16時も回って子どもたちもお昼寝ナッシングなのでそろそろ解散である。サチコ様に先述の「献上品」であるところのモザイクセットを手渡し、ご自宅までお送りした。なおヒロ君が相棒であるぞうさんを車内に忘れたためもう一度ここに寄ることになるが、それはまた別のお話……。


 サチコ様を送り届けたあと、夕飯にはちょっと早いし、まだ明るいので、我々は札幌市の近郊にあるモエレ沼公園を見に行った。
沼に向かう娘
 モエレ沼っていうともう印刷物をスキャンしたときに網点が干渉してできた縞模様がどんなに補正しても消えないよー!っていう地獄を想像するんだけどそれはモアレ沼だし印刷関連業の人しかわからないよネ。この巨大な公園はいたるところにアーティスティックな建造物があり、独特の雰囲気を醸し出している。この位置からでもすでにガラスのピラミッドがはるか彼方にあるのがわかる。想像していたより数倍の広さに「北海道……」ってなった。
 レンタサイクルも面白いと思ったけど残念ながら閉店時間だったので徒歩で突入した。すぐに緑に覆われた山への道が現れたが、時間と体力を考えて登山はやめた。後で調べたところによると、この山は不燃ゴミを積み上げた上に土をかぶせて作られた人工の山で、「札幌市東区唯一の山」とのこと。山とは何かを考えさせられる。なおこの山、反対側はまっすぐな階段になっていたっぽいんだけど、その麓が坂本真綾の「かぜよみ」のジャケ写に使われた場所なのだそうだ。行ってみればよかった。

 ガラスのピラミッドは初見ではどこから入るのかさっぱりわからなかったけど、裏側に回ったら入り口があった。なるほど北側は土に埋まってるわけね。ピラミッド内部は温室状態で、これが丁度いい暖かさに感じるくらいの気温であった。本州の感覚だったら絶対に近寄りたくなかっただろう。外に出るとちょうど日も落ちていた。温室にいた反動で肌寒い。たぶんこの公園は雪の季節こそが本領なのだろうと思った。静岡には雪がないのでよくわからないが。


 札幌市中心部に戻り、味噌ラーメンを食うべく目的のラーメン屋をナビに入れる。が、暗い住宅街に案内されてしまい、どう見てもラーメン屋などない状況。住所が合っていることを確認してもう一周してみると、臨時休業のような張り紙のある建物を見つけた。マジか。やむを得ないので、この位置からホテルまでのルートからそう外れない位置にあるラーメン屋をガイドブックから抽出してそっちに行った。結果的にとんこつラーメンだったが、娘も食べられるカウンター席があり助かった形だ。小さい子を連れていると、このような小規模な店舗には入りにくいのでラーメンを食うハードルも高くなるので困る。

 宿泊は一日目と同じAPAホテルであり、我々は再びAPA社長推しの看板の元に戻ってきた。明日はもう帰るだけなので、これで北海道ですることは概ね終了ということになる。娘氏は風呂で号泣すると思ったので、もう最初からおかあちゃやんに入れてもらうことにした。

Chapter 4 手をとりあって
 いつもよりちょっと早起きして準備。なにしろ9時にはレンタカーを新千歳に返さなければならない。朝食は前日のうちにセイコーマートで買っておいたものを食べる。出たよセイコーマート。北海道でもっともメジャーなコンビニ。本州民としては見慣れない看板と配色で見落としがちなセイコーマート。なんかカップに入った冷やしうどんとか意外と食べやすくてよかったぞセイコーマート。
 所要時間は1時間ほどをみていたが、けっこう札幌の朝は渋滞があるのね。札幌ドームのあたりで車がずつもつずつもつして結構時間を食った。「ずつもつする」は俺が知る中でもけっこうマニアックな静岡弁なので意味は各自調べてください。結局道央自動車道に乗った段階で遅刻を確信していたので、ちょっと遅れる旨をワイフに連絡してもらい、結果なんとかレンタカー屋の送迎バスの時間には滑り込むことができた。

 帰りの飛行機はまず飛ぶかどうかが怪しかったので、とりあえず予定通り離陸することに安堵した。台風は容赦なく本州へと向かっているが、予報よりやや東側にずれていたようだ。当初の予報通りだったら静岡は暴風域だったかもしれない。
 娘氏は案の定テンションがあがってしまい、PSP Goに入れたアンパンマンでさえも放り投げる奔放っぷりだった。おい投げるんじゃねえ、この名ハードはもうサポートが終了してるんだぞ。幸い席が空いていて3席まるごと使えたのと、奇声を発したりするまえに機内サービスのリンゴジュースが来たことでねんねするまで持ちこたえることができた。着陸は強風のせいでかなりスリリングだったが、やはり娘氏はねんねしていた。


 静岡は猛暑というわけではなかったが、やはり冷帯である北海道とは湿度の面で大きく異なる。湿度……それは恐ろしい。高温多湿……それは恐ろしい、恐ろしい(語彙力の死)。やっぱり湿度は駄目だな。それもこれもすべてモンスーンとかいうやつのせいなんだ。

PGO
 以上で北海道の記録は終了。
 ありがとう北海道、活きのいい海鮮が捕れたぜ!
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