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山陽道世界遺産制覇への道

2025広島&兵庫

出発
 厳島神社とか広島平和記念公園とか姫路城とかに行ってきた。

 発端としては、今まで沖縄と長崎に行ったことによって、娘氏の平和教育への興味の高まりがあったことがある。
 とはいえ平和記念公園だけ見て帰るのでは雰囲気が重くなる。周辺の世界遺産を巻き込んでなんとか2泊3日に収まらないか。
 ワイフはホテル予約のタイミングを計っていた。一年のうち最も平和意識が高まるのは夏であるが、日本の夏は災害であり、不要不急の外出は破滅を招く。かといって秋になれば俺の仕事が忙しくなる。ギリギリの選択として、9月にそれを持っていった。
 幸い天候が味方し、日照の少ない気温30℃程度の週末に旅行に出ることができた。30℃を「涼しい」と認識してしまうのは調教されきっているように感じる。


 新幹線で一直線、広島駅に降り立った我々はいきなり難しい決断を迫られた。なんとJR山陽本線が動いていない。
 初日の目的地である厳島神社へたどり着くためには、フェリー乗り場のある宮島口へ行かねばらない。
 このままここで40分ほど復旧を待つか、路面電車で宮島口へ向かうかの2択である。

 目的地は同じでも、JRなら30分で着くところを路面電車であれば1時間はかかる。どちらが早い……? 駅員さんに尋ねたら「路面電車っすね」と即答されたのでホームに向かったが、この判断は甘かった。
 路面電車はJRから溢れた観光客でいっぱいであり、乗車率600%くらいあるのではという状態であった。原爆ドーム前でだいたい降りると予想していたものの、実際は数人しか降りず、フェリー乗り場までスシ詰めで1時間運ばれた。

 JRのほうの復旧も予定より30分くらい遅れたので、この場合の正しい選択肢は「広島駅周辺で早めのランチをとりながら待つ」だったのかもしれねえ。わかるかよ。
 それはそれとして、21.3kmも移動したのに運賃が一律240円なのコスパが凄すぎる。コスパとは。
 
世界遺産・厳島神社
 フェリーで宮島に渡る。停泊中のフェリーがまったく揺れないことに驚く。駿河湾フェリーではこうはいかん。瀬戸内海は波が静かすぎる。
 観光客は、今はどこもそうだが外国人の割合が多い。ただ中国語はほとんど聞かれず、英語の割合が多かった。中国人、あんまりこっちまで来ないのか。
キヨモリ
 平清盛は武士として初めてナントカ大臣になった男である。その権力の根源は貿易であった。現在の神戸港を整備して大陸との貿易を行い、そして通り道にあるこの神社をバフもりもりにしたのである。
 最終的に平家の勢力はここよりもうちょっと西の海で終焉を迎えるが、それはまた別のお話……。

シカ
 フェリーを降りるとシカが我々を迎え撃つ。シカ(特にオス)は観光客に対してけっこうグイグイ来る感じだ。『はだしのゲン』でも進次がシカに弁当を盗まれるエピソードがある。
 シカは野生で暮らしとるけえ、決してエサをやらんといてくんさいよ……と決められとるけえが、世の中にゃヒグマにエサをやるようなばかたれもおるので、まあ無理なんじゃろうな。シゴウしやたげるぞ、という気持ちである。

 お土産屋さんの並ぶ横丁では揚げもみじ饅頭とか牡蠣フライとかが我々を迎え撃つ。
 揚げもみじ饅頭はカロリーのオバケって感じの味がした。ここには全てのもみじ饅頭がある。冷やしもみじ饅頭の自販機すらある。我々は完全に昼食のタイミングを逸した。


 お土産ゾーンを抜けるといよいよ例のアレが見えてくる。
大鳥居
 例のアレだ……!
 これで海底に埋まってないとかマでござるか? 厳島神社は台風被害で何度か壊れたりしてるけど、大鳥居が倒れたという話は聞いたことがない。上に対して下が重すぎるとかか……?
Pokemon GO
 ちなみにここは干潮時でしか落とせないポケモンジムでもある。くそっ届かねえ……!


 参拝は後回しにして、ホテルに荷物を置きに行く。当たり前だが、宮島は1500人程度の人口があり、普通の人々の暮らしがある。世界遺産があってシカがうろうろしている離島に暮らすというのはどういう感じなんだろう。
千畳閣
 遅い昼食として穴子てんぷらそばを食べて観光を再開。これは厳島神社を見下ろす位置にある豊国神社千畳閣。かなりのシンピテキとセイシンテキがある空間で、秋にはイチョウが色づいてゴーストオブツシマみたいになるであろう。ここにはひときわ目立つ五重塔があるが、塔は補修作業中で足場と布に覆われていた。


 厳島神社に戻るとかなり潮が引いていた。本日の満潮は13時頃とのことだったが、16時の段階で神社は完全に陸地にある。拝観料300円を支払ってさっそく入る。安すぎでは?

 ここで俺がすべきことはわかっている。『はだしのゲン』の聖地巡礼である。厳島神社は物語の最終盤、光子さんとのデートでやってくる。最高に浮かれたゲンを見ることができるエピソードである。
 というわけで、ここがそれじゃっ!
GEN
 ラわーんあんちゃん、大鳥居が遠すぎるよ~っ! 遠近法遠近法デッサンデッサン、だめじゃだめじゃどうしてわしは構図が上手うならんのじゃ。
 中沢先生はこれを通じて「人間の眼は勝手に見たいものをズームする」ということをわしらに伝えておるんじゃ。あるいは陸地のほうからめちゃめちゃ望遠のレンズで狙っておるんじゃ。そんなわけあるかっ!

 厳島神社は朱塗りが美しく、平安時代を強く感じる建物であった。
 宮島は島自体が信仰の対象であったため、土地を切り開かずに海上に建築したとのことだが、高潮&台風のたびに歴代の宮司さんたち気が気じゃなかっただろうな……
厳島神社
 ここのフォトスポットは、常に人が並んで写真を撮っているが……もしも無人のタイミングがあれば、このロケーションの背景を撮影しておくことで、いつでもG7首脳をコラージュして楽しむことができる。最強の首脳を集めてキミだけのサミットを開こう!


大鳥居
 夜、ライトアップされた大鳥居。このとき大きな船が通ったのか、にわかに波が打ち寄せる音がしてビビった。逆に言うとそれまで波打ちの音がぜんぜん聞こえていなかった。瀬戸内海、静かすぎる。
大鳥居
 早朝、完全に露出した大鳥居。さまざまな潮位の厳島神社が楽しめるのは宮島宿泊者の特権であるので行使する。ようやくたどり着いてポケモンジムに設置したウェーニバルは秒で落とされました。
 
世界遺産・原爆ドーム
 宮島に別れを告げ、広島市に戻る。
 JRか、路面電車か、あるいはその併用かで迷ったが、路面電車は始発であり座れるならそれで良いという結論に至った。JRで一気に広島駅に戻ってもどうせ原爆ドームへは路面電車を使うことになるのだ。

原爆ドーム
 原爆ドームを近くで見ると「どうやってこの廃墟の姿を80年も留めたんだ……?」という補修職人への畏敬の念が勝る。目の前にあるのは「今にも倒壊しそうな姿」を保護しろというスーパー矛盾プロジェクトの成果なのだ。
 『はだしのゲン』の中沢先生はここを「ジャングルジムのようにして遊んだ」と言っている。あまりにも心臓が強い。これによじ登れなかっただけでおどりゃクソ森根性なし呼ばわりは理不尽だ。登れる奴がやばすぎる。

原爆の子
 多少急ぎ目に平和公園を進む。休日の広島平和記念資料館は筆舌に尽くしがたい混雑になるとワイフが言っていた。
 我々はギリギリ午前中のうちに受付に滑り込んだ。入館料なんと200円。安すぎでは……?
 安すぎるのでワイフがオーディオガイドを人数分借りてきた。オーディオガイド、なんと怒涛の74分。

 さて、平和記念資料館は特徴的な形状をしており、渡り廊下のようにせり出した部分が「本館」となっている。
 出入り口のある「東館」は原爆が落とされる前の広島市の話題と、核兵器の仕組みや現在の核兵器を巡る話題が収められており……つまり原爆の真実を知りたい者だけが「本館」へ渡りそれを見て戻って来る、という形になっている。
 これは覚悟がいる。沖縄や長崎では順路の流れの中でそれを見た。ここでは能動的にそれを行うことを求められる。もちろん74分のオーディオガイドの大部分はこの「本館」であるので、もはや後戻りはできぬ。我々はすでに列のでき始めた渡り廊下に並んだ。

 覚悟を求めるだけあって本館の展示には鬼気迫るものがあった。こういう善良な市民がおり、それが熱線で死に、爆風で死に、放射線で死に、後遺症で死に、貧しさで死にましたというお話が全部やってくる。
 やってくれたのうトルーマン、やってくれたのうオッペンハイマー。こんなもん地球のどこに落としてもいけんのは計算すればわかるじゃろが! おどりゃ威力の計算を間違えたんかっ! ばかたれっばかたれっ!
 誰も彼もイカれてたんだろうな、こっちがセルフ全体主義軍事国家やってたのもイカれてるし、あっちが戦後ウラニウム・フィーバーやってたのも十分イカれてる。そしてそういうフィーバーは今も地球上で続いているのだ。人類は愚か。

 だが人類は強い。これだけの物証がここに遺されているのは、そこから生き延びて広島を復興させた人々の力である。
 我々がマイクロシーベルトがどうのと半狂乱になるより70年も前に、マイクロでない生のシーベルトを食らって70歳80歳まで生き抜いた人々がいたのだ。人間の生命力を強く感じた。

 本館から東館に戻り、本館に向かう行列が凄まじい長さになっているのを目撃した。これから列は伸びる一方であろう。午前中のうちに滑り込むワイフの采配が功を奏した形だ。
 とはいえ、仮に館内がガラガラだったとしても、オーディオガイドは74分あるため、どっちみち観覧には2時間は要したであろう。

慰霊碑
 平和記念公園の中央にある慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」と刻まれている。
 核戦争後のアメリカを舞台にした『Fallout4』に「War never changes.」というキャッチコピーが出てくるが、日本語版でこれを「人は過ちを繰り返す」と意訳したのはこれを踏まえての事であろう。
 翻訳がガバなことで知られるFalloutだが、この翻訳カラテには日本人の意地を感じる。

本川小学校
 なお、平和記念公園のとなりには中沢先生の卒業した本川小学校があり、当時の校舎が保存されている。(原爆で全部ふっとんだため、中沢先生は被爆時に通っていた小学校と卒業した小学校が異なる。)
 現役の小学校の敷地内にあるため、学校が開いていない時間帯は見学できない。門から写真だけ撮ってきた。
 
本通り
 広島は「札仙広福」と言われる通り、三大都市圏に次ぐ規模を持つ地方中枢都市圏である。
 なぜか広島駅は郊外にあり、原爆ドームの近くに繁華街や県庁が固まっている。その規模は悔しいが静岡のおまちとは比較にならない。
 我々はここで広島風お好み焼きを味わうことにした。

 おっと……これはいけない。ここでは「広島風」などとたわけたことを言ってはならぬ。シゴウされるぞ。
 ちょっと考えてみればわかる……静岡ではわざわざ「黒はんぺん」とは言わない。はんぺんは黒いのが当たり前だからだ。
 なので広島では焼きそばの麺が入っているアレが「お好み焼き」であり、入ってないものこそが「関西風」でなければいかん。
 アレッでも富士宮の人はみんな「富士宮やきそば」って……まあいいか!!

 そんな中ワイフが目星をつけたお店がもみじ亭であった。
 
もみじ亭
 ようすがおかしい。

もみじ亭
 ようすが……おかしい。
 俺は今試されている気がする。「ねぎ39焼き」……これはいったいなんと読むべきなんだ? 普通のお店であればサンキューで間違いないが、ではこの孤独なSilhouetteは……??
 店長とおぼしき人みずからオーダーを取りに来たため、俺は勝負に出た。

 「ねぎミク焼きをお願いします」
 「サンキュー焼き1つですね」

 くそっ! やられた!! 俺はアホ丸出しだッ!!

 「ミク1つ入りま~す!」

 どっちなんだよ!! 店長の掌で遊ばれているッ!
 なんか焼いてる間も店長と店員でスパロボの話してるし、なんだよこれ、部室か?? なんか店内有線もここ数年のアニソン縛りっぽいし、部室だなこれ??

 ただ部室と異なる点として、外国人が多い。こじんまりとした店内のお客さんの過半数が外国人であり、壁に貼られた世界地図は出身国に刺されたピンがびっしり。世界のOTAKUがここを目指してやってくるのだ。どうしてこうなったの……?

もみじ亭
 ねぎ、おいしすぎるし、店は居心地が良すぎる。店の壁になぜか本物のヴィブラスラップが掛けてあり、かつて特定の注文が入ったときに打ち鳴らされていたらしい。意味がわからない。また広島に来るようなことがあったら絶対リピートしたいお店であった。
 
広島城
 朝、広島市街地の散策を再開する。広島のホテルの朝食バイキングには当然のような顔でもみじまんじゅうが含まれている。

広島城
 我々は広島県庁を横目に見ながら、広島城のある中央公園にたどり着いた。
 広島城は別名を「鯉城」と言い、広島カープの語源の1つである。なんで広島カープは広島カープスにならないんですか?(単複同形)

 公園は駿府城公園よりやや狭いくらいだが、ここには日清戦争時に大本営が設置され、軍都広島の礎となった。大本営は原爆で跡形も無く吹っ飛び、今は土台だけが軍の面影を残している。
 広島城天守は、どうやらそろそろ再建時の鉄筋コンクリートの耐震性がギリギリらしく、まもなく閉城になるらしい。展示品を収蔵するための博物館の建設が進んでいた。開館前なので天守には登らなかった。
 
ひろしま美術館
ひろしま美術館
 広島城の向かいにある美術館。
 ルノワールとかゴッホとかピカソとか、有名どころの画家の絵をコンパクトに観られるタイパのよい美術館である。静岡で頻繁に観ているロダンの彫刻もあった。
 しかし……スーラとかマティスとかセザンヌを観たあとロダンを観ると、完全にフォントワークスだな。もはやぜんぜん芸術家の名前に見えない。不思議なものだ。

 今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない。岡本太郎もそう言っていた。しかし情報化の進んでいない時代の画家たちは、まず絵を買ってくれる人を無事見つけられるかどうかに生活がかかっていたのだろうから、心地よく、綺麗で、上手くできている、製品としての絵を量産する必要があったのではないか。そんなことを考えた。
 ここのカフェは黒猫推しでカワイイなコーヒーセットがあるのだが、今日は先を急ぐ。ここまでにしよう。
 
姫路城
 広島を後にし、新幹線で姫路へ向かう。
 姫路駅のホームからはもう姫路城が見えており、徹底的に城を中心としたまちづくりをしていることが見て取れる。
姫路駅
 姫路城は法隆寺と並び、日本最初の世界遺産である。なぜ姫路城が真っ先に世界遺産になったのか、それは法隆寺と並ぶべきものだったのか、俺はずっと疑問であった。
 確かに安土桃山文化の代表として必ず教科書には出てくるが……別に歴史的戦いの舞台となったわけでもないのに、なぜ最初に?

 それは姫路城がREALだからである。言ってみれば我々が今まで登った天守閣は模造刀であり真剣ではない。江戸時代以前からその刃を研がれ続けているホンモノは全国に12箇所しかなく、そのうち最大のものが姫路城だ。姫路城をみれば城がわかる。
 なので我々は少し早く広島を出て、ここ姫路に寄り道をしたのだ。


 駅からまっすぐ北上すれば姫路城に着く。城が常に見えていることと、日差しがなく気温が30℃程度であったことから、我々は徒歩で城へ向かった。
 だがこれは間違っていた。俺は夏をナメていたと認めざるを得ない。30℃は本来十分危険な暑さであり、エアコンのないルートを長時間うろうろすべきではない。15分待ってもバスを使うべきであった。

姫路城
 だいぶ体力を削られつつ、城に到着。新幹線内でデジタルチケットを獲得しているため、チケット売り場に並ぶ必要はない。大阪城の経験が生きたな。
 ただこのデジタルチケット、どうやら試験中らしく、購入ページがすごく不自然で三度見くらいしてしまった。たのむから日本語フォントはちゃんとしたやつを指定して欲しい。漢字が中華フォントに化けていて怪しすぎる。言語切り替えができる関係でhtmlのlangを指定していないからか? かなり勇気が必要だったが無事決済メールが来たので良かった。
 入場料は1000円だが、まもなく2500円に値上げされるらしい。幅がすごいな!!

姫路城
 城内は複雑に入り組んでいる。敵にまっすぐ天守に来られたら困るので当然のことだが、姫路城は秀吉が大改修して以降、別に攻めてくる敵はいなかった(強いて言えばB29)。普段は非常に不便をしたのではないか。天守もこんなに高かったら、下から「殿~~サンマが焼けましたぞ~~」って聞こえてから降りるまでに冷めてしまうではないか。天守で暮らすわけでないからいいのか。
 そういえば初日の厳島神社は「海に浮かぶ世界遺産」というつながりでモンサンミッシェルと交流があるらしいんだけど、どちらかというとこの城の作りのほうにモンサンミッシェルを感じてしまった。経路が複雑で高低差が激しいマップについ共通点を見出してしまう。
 徒歩でくたびれていた娘氏もあんな狭間さまやこんな狭間を見てテンションがブチ上がっている。小学生女子が狭間でテンションを上げるんじゃないよ。いろんな形があって楽しいけどさ。

 天守は上に行くにつれてフロアが狭くなるためか、要所要所で行列ができたりする。当然だが城内にエアコンはない。漆喰の壁が日光の熱を遮断し、窓からは強風が吹き込むので多少はマシだが、38℃とかの日は係の人はどうしているんだろう。死ぬでは?

姫路城
 というわけでちょっとした登山くらい脚を使って登頂して、降りてきた。改めて、白鷺城という名に恥じない見事な白さである。南斗白鷺拳がなかったら「白鷺」を正しく読むことはできなかっただろうから、仁星のシュウには感謝しなくてはならない。

 ところで敷地内に「お菊さんの井戸」があったんだけど、皿屋敷って姫路城内のできごとだったの? えっと、もともと戦国時代の播磨国(つまり姫路だ)に『播州皿屋敷』という話があって、それが我々がよく知る江戸の怪談『番町皿屋敷』になったという説?
 思っていたより井戸がクソデカくて笑ってしまった。ここから出てくるクソデカお菊さんは身の丈八尺くらいありそう。井戸から出てくるのはお菊さんじゃなくて貞子だよ!


 さて帰ろうと立ち上がったところ、めまいとふらつきを感じた。くっ…ぐう……な……なんてことだ……このDIOが……熱中症になりかけているだと? このDIOがあの太陽に頭を破壊されて……立つことが……立つことができないだと!? いや立つことは普通にできる。歩くことも問題ない。だがこのままではまずい。
 考えてみればこの3日間、エアコンのない環境に2時間も身を置くことはなかった。油断なく水分補給をしていても、連日の歩きづめと睡眠不足が日差しのない日でも熱中症を呼び込むのだ。完全に夏をナメていたと言わざるを得ない。
 こうなってしまうと日陰で休んでいても体力は戻らない。エアコンの効いていて座れる場所でなければ。俺は急ぎ足で城を後にし、ワイフの発見した喫茶店でかき氷をキメて事なきを得た。かき氷は観光地価格だったが命には代えられぬ。


 こうして山陽地方の世界遺産を制覇するスリーデイズは幕を閉じた。
 また山陽地方に世界遺産が増えたら呼んでくれ。
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