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◆不定期日記ログ◆

■2006-12-13
ブラックリスト
 漢字テストの例文を作るのは意外と神経を使う作業である。
 出題すべき漢字が出ていればどんな例文でもいいわけだが、逆に言うと出題すべき漢字はなんとしても押さえなければならないのである。

 その上で邪魔になるのが同音異義語の存在だ。
 たとえば小学校三年生で「しん」「りょく」を出題したかったとして、問題文を「森のしんりょくが美しい」なんてやってしまうと、「深緑」「新緑」のどちらも正解になってしまい、しん」を書かせる目的は達成できない。

 短い問題文のなかでこの二つの違いを明らかにするのはとても大変なことなので、「しんりょく」とまとめることをあきらめてバラバラに出題するわけだが、そうなると今度は「りょく」を含む言葉がなかなか見つからなくて困ったりする。(小三レベルの言葉がない。「緑化」でギリギリ)
 似たような罠に「玉・球」「意思・意志」「辞典・字典」「競争・競走」などがあり、これらも短い問題文のなかで最大限に工夫しなければ出題がままならない熟語である。
 「たま」なんて「はやいたまをなげる」くらいしか適当な例文が見当たらないぞ。

 さらに出題者を悩ませるのが、「探検・探険」のような二通りの書き方のある熟語だ。
 これはひどい。あなたは説明できるか!?「探検」と「探険」の違いを!
 意味の違いはない。手持ちの辞書でも説明はできないのだ!
 というわけでこちらもしかたなくバラすことになるわけだが、「険」もまた平易な熟語がなくて困ったりするのだ。
 似たような罠に「容体・容態」「交代・交替」「根本・根元」「河原・川原」などがある。どれもうっかり問題文として出してしまいがちな熟語である。

 そして、裏の裏というべきか、ここまでの罠を注意深くつぶしてきた出題者を餌食にする罠も存在する。
 「収める」「修める」「納める」「治める」などは、当然使い分けに注意すべき漢字として学ばせていくわけだが、こういった言葉のなかにも定義があやふやなものがあり、それらには決して触れてはいけない。
 たとえば「測る」と「量る」
 測定器を使ってはかる場合は「測」、升やはかりを使ってはかる場合は「量」、なんて説明をしている辞書もある。
 距離や面積は「測」、容積や体積は「量」、なんて説明をしている辞書もある。

 じゃあテメー肺活量をはかる場合はどっちなんだ!
 ありゃccだから体積だが、測定器を使って測るじゃあねーかッ!!

 「相手の真意をはかる」なんかも、辞書によって「量」だったり「測」だったりするから困る。IMEは「どっちでもいいよ」って言ってる。

 こういった単語は全てブラックリストに入れて隔離し、新出漢字などでどうしても出題しなければならないときだけ保護観察つきで出所させるべきだろう。
 漢字テストを作る側こそがもっとも漢字に悩まされているのだ。